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第58話〈魔物召喚―軍勢Lv25〉
しおりを挟む【クリリス(クリト)視点】
ゼツ・リンダナが黒い球体に入った後――。
「私達も〈転移魔方陣〉へ急ぎましょう」
アターシャさんが駈け出そうとするが、私は手でそれを制す。
「待って、今座標を調整している……」
ここに残ったのは私、パンティーさん、アターシャさん、アナルさん。4人なら私のスキルで地上へ飛べるはずだ。
この星の地形と、ティッシュさんの位置、己が現在地を私のパッシブスキル〈世界測位〉が教えてくれる。
よし見えたぞ!座標を固定。一緒に飛ぶ対象を選択――、この場にいる3人だ。
「飛ぶぞ!アクティブスキル〈空間転移〉ッ!」
――――視界が急に明るくなった。時刻は昼過ぎ。
「えぇえええッ!?一瞬で街に帰ってきましたわッ!」
「これはいったい?何が起こったのですか?」
「不思議ですねぇ」
3人は驚いた顔で周囲の街並みを見回している。
「わた……、ボクのスキルで移動した」
そう言いながら私は空を見上げる。
それに連れられて3人も空を見上げた。
遥か上空にヤツ等がいる。
「あれ、なんですの?私の〈リバイバル〉に現れる天使と似ていますが……」
「白い翼の生えた人間……、確かに、古代遺跡等に描かれている天使に似ています」パンティー
「たくさんいますねぇ。いこの街で何が起こるのでしょう……」アナル
遥か上空に【SSR天使】が数百体、等間隔で静止している。
彼を探しているのだ。【MR無責任種付おじさん】の加護を持ったゼツ・リンダナを。
「あれ?パンティー様達ニャン!」
上空に注目しているとティッシュさんに声を掛けられた。
うまく合流できたぞ。
「ティッシュさん、避難の進捗は?」
私はティッシュさんに尋ねる。
「貴公子団とギルドの仲間が動いてくれてるニャンけど、年寄や子供もいるからまだまだニャン」
「……、皆さん聞いて欲しい。あと少しでオリハルコンゴーレムがこの街に現れる。しかしあのクラスのモンスターはこちらから攻撃を仕掛けなければ襲ってこない。ヤツは街を破壊しながら直進すると推測できる故、民の避難を優先すれば街は壊れるが人が死ぬことはない。このままヤツを行かせてやってくれないだろうか?」
アターシャさんが私を睨んだ。
「ずいぶんモンスターにお詳しいですわね。はっきり言いますが、私、貴方を信用していませんわ。街が壊れると仰いましたが、そう仕組んだのは貴方のお仲間、アエロリットさんという方ですわよね?責任を取ってくださるの?」
「それは……」
オリハルコンゴーレムがあそこまで強大になったのは【LR龍神】龍ヶ崎流花のサラマンダーのせいだ。
当初の計画でもゼツ・リンダナとノエル様を誘き出す為、多少街は壊れると読んでいた。しかし、私のモンスターを支配するスキルである程度、制御する積もりだった。だが、あのクラスになるともう手出しできない。
アエロリット様ですら、こうなるとは予想できなかっただろう。
くっ……、アターシャさんが言う通り、責任の一端は私達にある。
「すまない……、今はそれしか言いようがない」
「ふん、なんですのそれ?謝って済むことではありませんわ」
冷たい視線で私を睨むアターシャさんにパンティーさんが、
「アターシャ、今は言い合いはやめましょう。今回の冒険で、私達は信じられない金額を稼いでいます。街の復興費はそこから一部寄付します。私達が今やるべきはこの方が仰る通り、お金では返ってこない人命を優先することです」
「……姫様」
アターシャさんは顎に手を当て少し考える。
「……そうですわね。私達が寄付すれば勇者パーティーの名声も上がり、逆に良い結果になりますわね……。こちらは赤字にならなければ良いわけですし……、ええ、そうしましょう」
そんな話しをしていると――ッ!
「きゃぁあああああああああッ!」
「なんだあの化け物はぁああああああッ!」
「き、金色の巨人だぁああああああッ!」
街の中心、目の前の広場にヤツが現れた!
◇
ゴゴゴゴゴゴゴッ
ゴゴゴゴゴゴゴッ
ゴゴゴゴゴゴゴッ
オリハルコンゴーレムは街を破壊しながら直進を始めた。
ただ、予想通り暴れることはなく、奴が通った後の建物がバラバラに倒壊するだけで被害は止まっている。
◇
我々は即座に行動を開始した。
オリハルコンゴーレム進行速度はゆっくりで、進路上にいる民を我々が避難させていく。
すると――、上空の天使が動いた。
ヒューッ!――ガンッ!
オリハルコンゴーレムに向けて光線を放ちそれがヤツの体に直撃した。
「な、何を考えているッ!くっそ!」
ドッゴッッゴッゴッゴッッゴッゴッッゴッッ!!!
ドッゴッッゴッゴッゴッッゴッゴッッゴッッ!!!
超巨大なオリハルコンゴーレムが50メートルは有ろう長くて太い腕を振り回し、コマのように回り始めた。
飛び散った瓦礫が空から降り注ぎ、逃げる町民を襲う。
「貴公子団、民間人を守れッ!」
「「「「「 はッ! 」」」」」
アナルさんが檄を飛ばす。パンティーさん、アナルさんも飛んでくる瓦礫を迎撃し、町民を守っている。
ヒューッ!――ガンッ! ヒューッ!――ガンッ! ヒューッ!――ガンッ!
ヒューッ!――ガンッ! ヒューッ!――ガンッ! ヒューッ!――ガンッ!
上空の天使達がオリハルコンゴーレムに絶えず光線を食らわせる。
しかし威力が弱い。【SSR天使】のレベル上限は640。これだけ数がいれば、このオリハルコンゴーレムなど瞬殺できるはずだが、そうしない。
ゼツ・リンダナを誘き出しているのか!?
「ぐっ、これでは大量の死人がでるぞ!もう出し惜しみしている場合じゃない!!
来いッ!モンスターズッ!
――アクティブスキル〈魔物召喚―軍勢Lv25〉ッ!」
私の周りにモンスターの軍勢が出現した。その数は1000を超えている。スケルトンやブラックベア等これら全て、私がテイムした魔物だ。
私は魔物達に向かって叫ぶ!
「町民を守れッ!一人も死なせるなッ!」
魔物は散り散りなって動き出す。
急にモンスターが現れ町はパニックなった。
しかし、そのモンスターが人に飛んでくる瓦礫の盾になる。動けない人を背負って遠くまで逃げる。
「貴方、一体何者ですの?」
「……」
アターシャさんが訝し気に私を睨んでいる。と、そこに――。
「いたニャン!アターシャ様、この子が瓦礫に埋まって、死にそうニャン!お願い〈リバイバル〉を」
ティッシュさんが血塗れになった少女を抱えて連れてきた。
アターシャさんは下唇を噛むと、
「平民じゃありませんの……」
「お願い……、助けて欲しいニャン」
「ええい!わかましたわ!
――アクティブスキル〈リバイバル〉ッ!」
〈リバイバル〉の効果が発動し少女は一命を取りとめた。
私は心の中で叫ぶ。
ゼツ・リンダナまだか!?そう長くは持たないぞ!!
【ゼツ視点】
僕とノエル、それから全裸のタカヒロが黒い球体から出ると、21層はもぬけの殻だった。
ノエルと盛り上がってしまい、時間を掛けすぎた。
皆、無事でいてくれよ。
僕達はオリハルコンゴーレムが通った跡を走り出す。
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