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第52話 加護の進化2
しおりを挟む20層にて。
ここは他の層と比べ気温が高い。皆大量に汗を掻き、水を補給しながら進んでいく。
勇者ビッグベニスが名付けたダンジョン名〈渇きの砦〉の所以である。
「かなり暑いな」
「汗で下着までびしょびしょニャン……」
横を歩くティッシュを見ると胸元は汗で濡れ、歩く度に胸の谷間に雫が零れ落ちている。
一番涼しそうな恰好をしたビキニアーマーのパンティーも額を汗で滲ませ、むちっとした太腿は汗で濡れモワっと蒸気が出ているような雰囲気。
そうして進んでいると僕達は初めてミスリルゴーレムを発見した。
岩の丘の上から下を覗くとミスリルゴーレム5体がゆっくりと闊歩している。
大きさはロックゴーレムと同じくらいで、約7メートルの巨人。キラキラ輝く白い金属でできた体は重厚感があり、A級モンスターの風格が漂っている。
「強そうですね……」
「ゼツ君なら大丈夫」
パンティーが呟き、ノエルが答えた。
アターシャが僕に問う。
「ゼツ・リンダナ卿、いけますか?」
「僕のインテリジェンスが問題ないと言っています」
僕一人、丘の上に立つと――、
ノエル達や貴公子団、ポーター連中が一斉に僕に注目する。皆それぞれ不安や期待を抱いた表情だ。
「アクティブスキル〈ガンシャ〉ッ!
――種転送〈種強化Lv15〉ッ!
アクティブスキル〈Gスポット〉ッ!」
問題ない。核は見える。
僕は核を傷付けないよう狙いを定めて、撃つ!
ドピュンッッッ!!!――ゴッゴンッッッ!!!
ドピュンッッッ!!!――ゴッゴンッッッ!!!
ドピュンッッッ!!!――ゴッゴンッッッ!!!
ミスリルゴーレムはバラバラに砕け核が地面に落ちた。
「よしッ!」
「「「「おおおおおおおおお!!」」」」
貴公子団やポーター連中から歓声が起こった。
「A級モンスターを一瞬で……す、凄い」
「信じられん!やはりゼツ様は最強だ!」
「ボクもいつかゼツ様のように……」
「俺、この冒険が終わったらゼツ様に告白するんだ……」
ノエルとティッシュは僕に笑顔でグッドサインを送っている。
「安定の強さだニャン!」
「流石ゼツ君!」
パンティーは熱い視線で僕の目を見詰めている。
「では、取り決め通り核を壊していきますわよ」
アターシャの号令で皆が動き出した。
◇
先ずはパンティーが核を壊す。
「えっ?何ですかこれ?一気にレベルが……す、凄いです」
僕のインテリジェンスが教えてくれる。どうやらパンティーは1体倒しただけで20近くレベルアップしたようだ。
次にノエルが核を壊す。
「やぁーッ!」――ザンッ!
核は真っ二つに割れ、黒い霧になって四散した。すると――、
「なっ!?これって、また……ッ!!」
ノエルが驚いた直後、彼女が光に包まれた。
僕はその光を見て呟く。
「〈加護の儀〉の光だ……」
光が収まると、驚いた顔でノエルが言う。
「私の加護……、進化した。 新しい加護は【HRアークデーモン】ッ!」
近くにいたアターシャが訝しげにノエルに問う。
「どういうことですの?」
ノエルはまだ驚いているようで、代わりに僕が答えた。
「アターシャ様、ノエルの加護は進化するんです。以前、同じようなことがありました」
「そんな……、聞いたことがありませんわ」
信じられないといった様子のアターシャにパンティーが意見する。
「ですが、先程の光は〈加護の儀〉のものです。ゼツ様がそう仰られるのなら本当なのでしょう」
「とりあえず、ゴーレムの再生が始まる前に他の核も壊して行きましょう」
僕がそう言うと皆作業に取り掛かる。
ミスリルゴーレム1体を倒すと2キロ近いミスリルをドロップする。これだけで白金貨1枚くらいの価値がある。
それにこの量があれば……、剣1振作れそうだ。ナイフや短剣なら3振はいけるはず。
◇
その後も僕達はミスリルゴーレムをどんどん狩っていった。
皆、凄まじい勢いでレベルが上がって行く。
途中、ポーター連中がティッシュに泣きつき、ティッシュにお願いされた僕がアターシャに頼むと、彼らも1体ずつ倒す許可が出た。
皆、一生分レベルが上がったと喜んでいた。ティッシュといざこざをおこした若いポーターも泣きながら彼女にお礼を言っていたな。
ティッシュはカラッとした態度で「良かったニャンね。ゼツに感謝するニャン」って言ってた。
勇者ビッグベニスのパーティーは30人くらいいたという。この世界ではどんなに強くても様々な加護持ちが己の特性を活かし協力し合わなければ生きていけない。
だから僕は遺恨残さないティッシュの判断を評価した。
◇
皆がA級モンスター討伐に歓喜し湧き立つ中、僕は一人だけ気が気じゃなかった。
ノエルの加護が進化した……。つまりノエルと本番をすれば僕のレベルが上がる。……今すぐやりたい!!
昨日、一昨日は勇者パーティーと野営したからノエルとやっていない。そんな経緯もあって僕の感情は熱くなっていた。
ノエルを見ると、汗で濡れたシャツが背中のS字カーブに張り付き体のラインが露出していた。
ミニスカートとニーハイソックスの隙間では、白くて艷やかな太腿の上を汗の雫がゆっくり這うように流れ落ちている。
ダンジョンの湿気を帯びた熱のせいで額も汗で濡れ、頬は紅潮している。
ノエルがいつもり魅力的に見えてしまう。今直ぐ服を脱がして……ゴクリ。
落ち着け僕、街に戻るまで我慢するんだ!
◇
「十分です!街に戻りますわよ!」
「「「「「 はッ! 」」」」」
アターシャの声に皆ホクホク顔で返事をした。
とその時――、
「アターシャ様、向こうの岩に文字が書いてあります」
僕達はその岩を囲んで見詰める。
僕は岩に刻まれた文字を読み上げた。
「この先の下層へ下る洞窟の中に温泉がある。21層へ行くつもりなら入っていくといいぞ。――バイブ・ビッグベニス」
「ビ、ビッグベニス様が書いたんですね!」
と驚いた顔でパンティー。
「皆、疲労していますし、寄って行くのも良いかもしれませんねぇ」
とクールにアナル。
「確かに……、温泉、入りたいですわね」
とアターシャ。
ノエル、ティッシュも温泉に行きたがり、僕達は温泉に寄ってから帰ることになった。
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