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第51話 二人の関係
しおりを挟む翌日、僕達は20層を目指しダンジョンを踏破していく。
19層にて、ロックゴーレムの大群31体を前に僕は〈ガンシャ〉を顕現させた。
ロックゴーレムはB級モンスター。体長7メートルの岩の巨人で、それが素早く走って人間を踏みつぶしたり、岩を投げて攻撃してくる。しかし視野は狭いようで接近しなければ攻撃してこない。遠方から〈ガンシャ〉でバラせば危険なく狩ることができる。
「パンティー様、また勝負しますか?」
「面白いですね。ふっ、上等ですよ!」
ノエルの提案にパンティーはニヤリと笑う。先程二人で競うようにロックワームを倒したのだが、その続きをやるらしい。
昨夜、ノエルとパンティーは喧嘩をした。しかし今朝になって急に仲良くなり一緒に行動している。
ノエルは申し訳なさそうな顔で僕に、
「ゼツ君、一体だけ私とパンティー様が狩りたいんだけど、残しくれないかな?」
「ああ、いいよ」
僕は秒でロックゴーレム30体をバラし、1体だけを残した。
貴公子団の連中が核を集めている横でノエルとパンティーはロックゴーレムと戦う。
「はぁああああッ!」――ザンッ!!
パンティーがロックゴーレムの片足を切断し、そのまま走って距離を取る。
ロックゴーレムは倒れた瞬間、すぐに三足歩行に切り替え、獣のように素早く手足を回転させて走る。数トンはあろう巨体が大地を蹴ると地面の岩盤は割れ、ガシャン!ガシャン!と物凄い衝突音が響く。
逃げるパンティーを追うロックゴーレムにノエルが――、
「やぁーッ!」――グサッ!
ロックゴーレムの目(顔に付いている二つの赤い玉)にクナイが同時に刺さった。
ゴッゴッゴゴゴゴゴゴゴン!
走るロックゴーレムは視界を失い、転倒してそのまま周囲の岩を吹き飛ばしながら大地を抉り、数十メートル滑走して止まった。周囲には土煙が舞っている。そこに――、
「うらぁああああッ!」――ダンッ!
パンティーが飛び上がって上段から切りつけ、ロックゴーレムの片腕を切り落とす。
これでロックゴーレムはもう走れない。
パンティーは振り返りノエルに言った
「まぁ、こんなものですね。あとは二人で核に当たるまで――」
「危ないッ!」
ノエルが叫んだ!
よそ見したパンティーの頭上で、ロックゴーレムが片腕を振り下ろしていたのだ。
あの巨大な腕なら簡単にパンティーをぺしゃんこにできる。
「え?」
パンティーは頭上から迫る攻撃に気付いていない。
僕は振り下ろされたロックゴーレムの腕に向かって〈ガッシャ〉を撃った!
ドピュッ!
ドッゴゴゴゴゴンッ!
しかし種は着弾することなく、空を切って何処かへ飛んで行った。ロックゴーレムの腕の軌道が反らされたのだ。
腕はパンティーを外し、彼女が立つすぐ隣の地面に突き刺さった。
僕はノエルを見る。
彼女はパンティーに向かって腕をかざしている。額には物凄い汗だ。
そうか――、ノエルが〈グラビティ〉で腕の軌道を反らしたんだな。
ドピュッ! ドピュッ!
――ドッゴゴンッ! ドッゴゴンッ!
僕はロックゴーレムの残った腕と、足を吹き飛ばしておいた。
「パンティー様!大丈夫ですかッ!?」
青い顔をしているパンティーへノエルが駆け寄った。
「こ、これ、貴女がやってくれたのですか?」
「軌道を反らすので精一杯でしたけど、でもパンティー様が無事で良かった」
微笑むノエルの目には薄っすら涙が浮かんでいた。パンティーが潰されると思ったのかもしれない。ノエルも怖かったのだろう。
「……パンティー」
「え?」
「ですから、仲間といるときはパンティーと呼んでください」
パンティーは頬を真っ赤に染めている。
「わかったわ。パンティー、……私のことはノエルって呼んでね」
「べ、別にいいですよ。……ノ、ノエル、……ありがとう」
パンティーが恥ずかしそうに言った最後の呟きは、僕には聞こえなかったが、ノエルが笑っているから二人の関係は良好なのだろう。
「友ニャンw」
僕の隣りでニヤニヤしたティッシュが言った。
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