♡してLv.Up【MR無責任種付おじさん】の加護を授かった僕は実家を追放されて無双する!戻ってこいと言われてももう遅い!

黒須

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第49話 飛剣センズリの継承者①

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 勇者パーティーと合流して3日目の夜を迎えた。18層へ下る洞窟の途中に、全員雑魚寝できる広い空間を発見し、今日は皆で野営をすることになった。

 僕と女性5人は同じ焚火を囲み食事をとる。

 出会った頃のアターシャは恐怖と焦りが入り混じった今にも心が折れそうな顔をしていたが、今は常に頬を赤くし強気な笑みを漏らしている。


「おおっほっほっほっほっほっほっ!
 たまりませんわ~wさいっこぉーですわ~wおおっほっほっほっほっほっほっ!」

 この3日間の稼ぎ、金塊の山を前にアターシャは反り返って高らかに笑う。

 ノエルはそんなアターシャを微笑みながら眺めている。アナルも機嫌が良さそうで、穏やかな表情だ。ティッシュは眠そうだな。パンティーは熱を帯びた視線で僕をジッと見詰めている……。

 アターシャから聞いた話だが、このダンジョンの下層部は勇者ビッグベニスの冒険以降手付かずで、150年以上誰も狩りをしていなかったそうだ。
 安全を確保しながらB級以上のモンスターを狩れる狩場は他にたくさんある。
 すぐに引き返せない危険なダンジョンの下層にわざわざ足を踏み入れる者はいなかったのだろう。

 故にここはモンスターの密度が非常に濃い。

 そんなダンジョンの中で、モンスターの群れをピンポイントで見付け、効率よく移動しながら狩りを続けた結果が目の前の金塊の山だ。

わたくし、レベル42から72まで上がりましたわ。姫様のレベルも70から118まで上がりましたし……、こんなに大成果を上げたのは初めてですわね。大手を振って王都に帰れますわw」

「よかったですね」

 そう言うとアターシャは僕を見詰めてくる。

「ゼツ・リンダナ、お前のお陰ですわ。感謝いたします」

 顔を引っ叩かれた相手にそう言われると、なんだか複雑な気分だ。それについてはもう気にしていないから、こうして喜んでもらえて僕も嬉しい限りだが。

「ところで、お前の加護は何なのですか?〈ガンシャ〉、見たとも聞いたこともないスキルですわ」

「僕の加護は……」

 どうする?正直に話すべきか?
 僕の加護について父上は配下に箝口令をだしたらしい。余程僕の加護の名前が恥ずかしかったのだろう。
 実家に迷惑がかかるなら、ここは秘匿するべきだが。

 僕はアナルをチラリと見る。目が合うと彼女はクスクスと笑ってから――。

「坊っちゃんの加護は【R奇術師】ですよ」

 コイツ、息を吐くように嘘を付くな……。

「【奇術師】ですか?聞いたことのない加護ですわね?姫様はご存知ですか?」

「いえ、私も初めてです」

 知らないのも当然か。ティッシュの【HNギャンブラー】と肩を並べるくらい【R奇術師】は珍しい加護だ。

 パンティーの話しは続く。

「しかし、あのお強さでレアリティR……、そんなことあり得るのでしょうか?」

「レベルも確か……、35でしたねぇ。スクスク」

「信じられないことですが、わたくしのインテリジェンスもそれくらいだと教えてくれていますわね」

「レベル35であそこまでお強くなるのは不可能なのですが……、私もアターシャと同様に感じております」

 僕は勇者パンティーと合流してからアクティブスキル〈皮かぶり〉を常に発動しているからそう思うのは当然だ。

 しかし、アナル……お前は一体何を考えている。僕をおとしいれようとしているのか?

「世界では、100年に1人誕生すると言われていた【SR勇者】が同時に8人誕生し、古代の伝承にのみ存在した【魔王】がペルシヤ王国に誕生しました。この世はあり得ないことだらけですねぇ。クスクス。
 坊っちゃんの加護が異常に強いのも、世界を巻き込んだ何かと関係があるのかもしれませんよ」

 勇者が8人誕生し魔王が誕生したという話しは昨夜パンティー達から聞いていた。

 アナルの話しに説得力はなかったが、朗らかかに微笑むノエル以外、渋々納得しているようだった。


「ゼツ・リンダナ、今回の遠征が終わったらわたくし達は、王都に帰ります。お前も一緒に来なさいな。お父様に紹介しますわ」

「身分保証の件ですね?」

「ええ、そうです。早い方がよいでしょう?」

 僕はノエルを見る。

「ふふっ、私は全然いいよ」

「わかりました。それでは僕達も王都に行きます」

 ファニーさんに武器を作ってもらったらこの街を出よう。

 僕の答えを聞いてティッシュが困ったような悲しいような表情を浮かべたことに僕は気付かなかった。





 食事の後、これでは体がなまるとアナルが言い出し、2人で17層へ戻った。
 久しぶりに剣の稽古をつけてもらうことになったのだ。

 僕とアナルは剣を抜き対峙する。

 アナルは剣を持った右手を後方に引いて、左手は拳を作り僕に向かって突き出す。

 僕も刀を引いて同様に構えた。

 そして僕らは同時に――、相手に向かって突き出した左手の拳から中指を天に向かってピンと突き立てた。

「「ファックッ!」」

 これが、リンダナ侯爵家、剣術指南役であり、剣の名家ファック家に伝わる剣術――、ファック流の”構え”である。

 僕に向けられた、突き上げられたアナルの中指を見ていると、無性にイライラする。
 相手の心を乱し、精神的に優位に立つ。それこそがファック流の真骨頂!

 アナルも僕の中指を寄り眼で睨み付けている。その目は血走り、額には青筋が浮かんでいる。

「さすが坊っちゃん、見事な”構え”ですねぇ。かなりムカつきます。その中指、へし折ってやりたくなりますねぇ」

「それはこっちのセリフだ。相変わらずイライラ――」

「シャッ!」
 ――ギャンッ!

 金属と金属がぶつかる激しい音。
 僕は斜め下から飛んできた不意打ちの斬撃を刀で受け止め――、

「ラッ!」

 アナルの剣を弾くと、上段から切りつけるが――、バックステップでかわされた。
 構え直したアナルは再び中指を立てる。

「今のではっきりわかりました。坊ちゃんのレベルは優に200を超えていますねぇ」

「まぁな」

 僕も中指を立てた。

「クスクス、坊っちゃん、奴隷生活はどうでしたか?」

 僕を陥れ、更に精神を揺さぶる積りだな。そうはいくか――。
 アナルの中指を睨みつけながら、僕は平常心を保つ。

「いつ死んでもおかしくない、毎日が辛いだけの日々だったよ」

「クスクス、そうですか。ならば良かった」

「ふっ、お前ならそう言うと思ったよ。何が良かっただ!お前のせいだろうッ!」

「そう言う意味ではありませんよ。相変わらず察しの悪い単細胞ですねぇ」

「どういう意味だ?」

「あたくしは――、坊っちゃんを奴隷商に売ったあの日から、一日たりとも坊っちゃんを心配しない日はありませんでした。毎日、吐気と頭痛がするほど、お前を心配してやったんですよ。
 それなのに楽しいスローライフを送ってました、なんて言われたら、あたくしの心配が無駄になるじゃないですかぁ?クスクス」

「相変わらず歪んでいるな」

「ええ、それが、あたくしですからねぇ」

「シャッ!」
 ――ギンッ! ギャンッ! ギンッ!ギンッ!

 静寂が支配するダンジョンの中で剣と刀がぶつかり合う音だけが鳴り響く。
 アジリティで強化された動体視力でアナルの剣を受けているが、フェイクを織り交ぜた剣戟や無意識下から飛んでくる斬撃は、身体能力に頼った動きだけでは受けるのがやっとだった。

 【HR剣聖】のスキルを使わなくてこれか――。さすがアナル、やはり強い!
 
 僕たちは再び距離を取って構える。

「そうだ坊ちゃん、久しぶりこうして二人きりにれたのです。あたくしの本音を聞かせて差し上げますよぉ。クスクス」

「お前が本音を言うとは思えないがな」

「そう言われると、嘘偽りなく言いたくなりますねぇ」

「なら、言ってみろ」

 アナルは笑うのを止めた。

「あたくしは――、

  坊ちゃんのことが好きです」



「ぷっ!笑わせるな。お前はそんな――」

「シャッ!」
 ――ギンッ!

 僕達は再び剣を重ねる。
 互いの剣をクロスさせて、僕とアナルは至近距離で見つめ合う。

「ふっ、クスクス、隙だらけでしたよぉ。坊ちゃん」

 薄い笑みを張り付けたアナルが剣越しに言った。

「なら、僕の本音も聞かせてやろう」

 僕も剣越しに言う。

「僕もお前が好きだ」











「え?」



 気付けばアナルの顔から笑みは消え、体からは力が抜けていた。
 アナルはクロスしていた剣をゆっくり下ろす。

「何度も、何度も教えたじゃないですか? 相手が動揺した時が、最大の勝機だと。 攻撃のチャンスでしたよ?」

「そうだったな。5年も空いてしまったからすっかり忘れていたよ」

「また、稽古を続けてください」

 奴隷になっている間、剣を振ることはなかった。ノエルと冒険を始めてからは〈ガンシャ〉ばかり使っていた。
 僕は勇者に憧れ、アナルにもっともっと剣を教わりたくて、目を輝かせていた頃を思い出した。

「ああ、そうするよ」

「クスクス、冗談はこの辺にして本題をお話しします」

「やはり、僕を連れ出したのは、剣の稽古をする為じゃなかったか」

 僕とアナルは真剣な顔で見詰め合う。




【ノエル視点】


 アナルさんがゼツ君と二人で稽古をしたいと言い出し、出掛けてから暫く経つ。 ティッシュは私の膝の上で寝てしまった。

 パンティー様とアターシャ様はずっと冒険の話しや貴族関係の話しをしている。
 私はアターシャ様に気に入られたようで、時折、愛想よく話しを振られるので返事をしていた。

 パンティー様が私に話しかけてくることはない。でも、よく私のこと睨んでいる。目が合うとそらしてしまうけど……。

「パンティー様、わたくし少し席を外しますわね」

「わかりました」

 パンッ!パンッ!

 アターシャ様は手を叩くと――。

「バター! ケン! いらっしゃいなッ!」

「「 はッ! 」」

 貴公子団の男二人が馳せ参じた。アターシャ様は二人を連れて何処かへ行ってしまった。

「貴女、ノエルというのよね?」

「え?」

 パンティー様に初めて声を掛けられた。
 彼女は強い視線で私を睨みつけている。

「単刀直入に言います。ゼツ様と別れてください」




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