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第48話【閑話】僕達が3Pをした経緯
しおりを挟む勇者パーティーと合流して二日目の夜。
僕達は16層へ抜ける洞窟で野営することになった。各層にあるこの抜け道は巨大な蛇のモンスター、レッドサーペントの通り道になっていることが稀にある。そこで15層と16層の入り口付近で僕達と勇者パーティーは別れて野営をすることになった。洞窟の長さは150メートル程あるが、大声を出せば反対まで声が届く。戦闘で応援が必要な場合はお互い呼ぶ手筈になっている。
夕食を食べた僕達3人はアターシャから貰った酒を飲みながら他愛もない世間話に花を咲かせていた。
「じゃあティッシュは、冒険者と娼館を掛け持ってるんだぁ」
ティッシュがポーター仲間に体を売ってくれと頼まれていたのを気にしていたノエルがオブラートに尋ねたら彼女は娼館で働いていると答えた。
「そうニャンよ。冒険者ギルドの仕事は施設の清掃とか引っ越しの手伝いが多いニャンけど、それだけだと生活できないからね。アッチ、8人兄妹の長女でスクワードに出稼ぎにきたニャンけど、仕送りもしきゃで……凄く生活苦しかったニャン」
「じゃあ、いっぱい稼げて良かったな」
勇者パーティーと合流し効率よく狩りができるようになり、僕らの収入は3、4倍増えた。このまま20層を攻略すればティッシュは一生働いても稼げない額を手にすることになる。
「うん……二人のおかげニャン。……ありがとう、ゼツ、ノエル」
【ノエル視点】
私一人じゃロックワームを狩れない。それ以前にダンジョンに潜る準備すらできなかった。アターシャ様達と交渉だってできない。
「全部、ゼツ君のおかげだよ」
「ゼツはほんと頼りになるニャンね。ラストアタックだってノエルと、それにアッチにまで譲ってくれたし」
ゼツ君は自分がモンスターを倒してもレベルが上がらないからと、ラストアタックは全て譲ってくれる。
高レベルになればなる程、低級モンスターをいくら倒してもレベルは上がらなくなる。私もレベル75になってレベル40の頃と比べるとレベルアップしなくなったからよくわかる。レベル296のゼツ君ならたぶん全然レベルアップしないのだと思う……。
「勇者パーティーに【R空間探知士】がいるから、アッチはもう役に立てないニャンね……」
「冒険は戦いだけじゃないから、私はティッシュがいてくれて凄く楽しいよ。えへへへ」
「ノエル、優しすぎニャンね。にひっ」
ティッシュって整った綺麗な顔をしてるけど悪戯な笑顔が凄く可愛くて、スタイルも凄くいいんだよね……。
こんな可愛い子がゼツ君といつも仲良くしてる……。二人ってどんな出会いをしたんだろう。
【ティッシュ視点】
アッチ、ゼツのこと好きになっちゃった……。でもノエルのことも凄く好きニャン。ずっと友達でいたい……。
ゼツとエッチしたって言ったらどうなるかにゃ?一生秘密にするなんて心苦しくてアッチにはできないニャン。……だけど言ったらこの関係は壊れちゃうニャンね。秘密にするなら墓まで持っていかにゃきゃ……。
「ねぇ、前から気になってたんだけど……ゼツ君とティッシュってどんなふうに出会ったの?」
あわわわわ!これヤバい質問ニャン!ゼツは本当のこと言わないだろうからアッチも話し合わせにゃいと!
「ん?一回やっただけだよ」
何しれっとバラしてるニャン!頭イカれてるニャンか!?
「やったって何を?」
「ん?ナニをだけど……」
いやいやいやいや!バラすにしてもそんな言い方だめニャン!傷付くニャン!
ノエルはニコニコしながらアッチを見る。その笑顔に殺気しか感じにゃい!
「えっと、あ、あれはお互い高揚してたと言うか!にゃはははは……。だってゼツ彼女いないって言ってたし、好きな子はいるって言ってたけど……」
「外でやったってこと?」
「ん?〈ラブヘブンズ〉っておみ、もごもごもごもご」
アッチは急いでゼツの口を塞いだ。ちょっと黙ってろニャン!彼氏が風俗行ったなんて知ったら泣くニャンよ!
「そ、そんにゃ感じニャンね!」
「そっか……」
ノエルは微笑んだ。
「アッチが誘惑したっていうか、アッチそこそこ可愛いしゼツも男だから……だからゼツは悪くないニャン!!……ううぅ、こんなに可愛い彼女がいるなんて知らなかったニャン……、ノエル、怒ってるニャンか?」
「うーん、怒ってないかも……覚悟してたし……ゼツ君って元貴族だし、かっこいいし、凄く強いから女の子選びたい放題でしょ。それにダインジョンに入る前は私達まだ付き合ってないから、浮気とは言えないかな?」
「そ、そうニャンか?付き合ったの最近ニャンね!アッチ、ノエルのことも好きだらずっと言えなくてごめんニャン」
ノエルは困りで「ふっ」っと笑った。
「でも、ゼツが好きな人がいるって言ったのは本当ニャンよ!ねっ?ゼツ?」
ゼツは何事もなかったかのように飄々としている。
「うん、僕はノエルと一緒に旅に出たあの日からずっと君のことが気になっていたと思う……他の女には全く興味ないけど、ノエルだけは好きだよ」
「ゼツ君……私、信じるよ。私もゼツ君のこと大好き……私にはゼツ君しかいないから……」
ノエル悲しそうな顔してるニャン……。
でもアッチの気持を言うならこのタイミングしかにゃい!
アッチは勇者パーティーから貰ったお酒を二人のコップに注いだ。
「だけど安心したニャン……アッチ、ゼツのことが好きになっちゃって、でもこんなにラブラブな彼女がいるなら諦められるニャンね、にゃはははは」
「僕はノエルがいないと眠れないし生きていけないからノエルは特別なんだよ……」
遠回しに振られたニャン……
「にひひひ、ゼツはノエルに甘え過ぎニャンね」
これでいいニャン。この気持をノエルに隠すのは、エッチを隠すのと同じくらい心苦しかったニャン。
これで、ちゃんとゼツのこと諦められる……。
【ノエル視点】
ティッシュが注いだお酒を一気に飲み干した。
ティッシュの気持ちは前から気付いていた。だってゼツ君にべったりだし。
ゼツ君を誰にも取られたくない。ゼツ君がいなくなったら生きていけないのは私だよ。
【ゼツ視点】
なんだか変な空気になってるな。
確かに僕は風俗店に行っているがそれは浮気ではない。
誰もが知る常識〈加護の欲求〉は食欲や睡眠欲と同様で加護を持つ人間の自然の摂理――、レベルを上げたい、スキルを使たい、己の加護を全うしたい……、加護を授かった者は常にそのような欲求に駆られている。それは僕も同じでレベルを上げる行為は食事や睡眠を取ることと同義なのだ。
ノエルもそれをわかっているから僕のレベル上げを応援してくれていた。
まぁでも、ノエルが他の男を好きになって、やってしまったら僕はきっと凄く嫉妬すると思う。
酒で頬を赤く染めたノエルがチラリと僕を見てからティッシュに問う。
「そ、それで……、ゼツ君とはどうだったの?」
「どうって?……ああ、えっと……」
ティッシュも僕をチラリと見る。
やった事実は取り消せない。僕はティッシュにコクリと頷いた。
「アッチ、経験人数は余裕で三桁越えてるけど、ゼツが一番気持ち良かったニャンね」
「ゼツ君、〈感度操作〉を使ったの?」
「いや、使ってないな」
「ふ~~ん」
ティッシュとは体の相性が良かった思う。
あの日は色んな女とやった。年齢も10代から50代までいたなぁ。その中でティッシュが一番その気になった。
「ノエルはゼツと、どこで出会ったの?」
「私はお店なんだぁ」
「お店ぇ?」
「私、ゼツ君と出会う前は性奴隷だったから……」
「えええええッ!意外ニャン!!ノエル可愛いし、てっきりどこかいいところのお嬢様だと思ってたニャン!」
お店時代はノエルも色んな客の相手をしたんだよな……。他の男と裸で抱き合ったり……。
今まであまり考えなかったが、そう思うと僕の中に熱い感情が込み上げてきた。
「……ノエル」
名前を呼ぶとノエルは僕を見詰めてくる。
「ん?」
しっとりしたピンク色の髪、ピンク色の長い睫毛、吸い込まれそうな青い瞳……、まるで妖精のように幻想的で美しいノエルの顔は、気のせいかいつもより熱を帯びている。
「…………ッ!」
僕は無言でノエルを抱きしめた。
こんなに可愛らしい僕の彼女が他の男と……ッ!
「ゼツ、くん?」
「上書きしてやるッ!」
「だ、だめだよぉ~。ティッシュがいるのに」
口ではそう言いながらノエルも僕を抱きしめてくる。
体は全然嫌がってないじゃないかッ!?
「めちゃくちゃにしてやるッ!!」
「んんんっ……んっ……んんっ」
僕は強引にノエルの唇を奪い舌を絡めると、答えるようにノエルも僕を貪ってきた。
「ちょ、ちょっと、二人とも~~ッ!いい加減にするニャーン!アッチだってゼツのこと好きなのに!」
「ちゅっ、ちゅぱ……んっ、んんん……ッ!」
ティッシュを気に留めず酒に酔った僕達は始め出してしまった。
「ううう……!アッチも混ぜるニャ~~~ンッ!!」
そこからは何故かティッシュも参戦し、気付けば二人に(感度操作6倍)を掛けていていた。
「「んっほぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」」
結局、二人が気絶するまでやりまくった。
◇
翌朝
「昨日のことは忘れましょ……」
とノエル。
「そ、そうニャンね……」
と気まずそうにティッシュ。
僕も慎重に、慎重に言葉を選ぶ。
「なんか、お腹空かない?」
「空かないよッ!!」
「さっき食べたニャン!!」
こうして今日も僕達の冒険は続く。
《おまけ①》
【魔王視点】昨夜のこと
ペルシヤ王国、首都バビロニア。そこにある世界最古のダンジョン〈バビロンの塔〉の最上階にて。
アエロリット様の部屋から女の奇声が聞え慌てて扉を開けた。
「アエロリット様ッ、ど、どうかなさいましたかッ!?」
ガタッ ガコッ ガタンッ
アエロリット様は椅子に座り水晶を覗かれていたようだが、慌ててパンツを穿き、スカートを下げた。
奇声は水晶から聞こえたようだ。
「ゼちゅくぅ~ん、もうらめぇ~~」
「アッチ、こわれちゃうニャ~~ン」
更にアエロリット様は慌てて、水晶を暗くし見えないようにした。
「…………」
「…………クツクツ、どうしたのじゃ?」
少し間が空いて、いつもの邪悪なアエロリット様に戻られた。
「い、いえ、……な、なんでもありません。失礼しました」
私は静かに扉を閉める。
《おまけ②》
【パンティー視点】昨夜のこと
ゼツ様ともっとお話したくて、アターシャに了承をもらい、ゼツ様の野営地に向うと女の悲鳴が聞こえた。
モンスターか!?
剣を忘れたけど私の〈聖光〉なら素手でもある程度戦える!
私は急いだ。
近付くに連れて、女の声色がモンスターに襲われているものではないと思い始めた。
これってモンスターじゃなくて男に襲われた時にでる声よね……。
私は岩陰からそっとゼツ様の野営地を覗く……。暗いダンジョンの中でそこは焚き火に照らされていた。
「ゼちゅくぅ~ん、もうらめぇ~~」
「アッチ、こわれちゃうニャ~~ン」
す、凄い!ゼツ様逞し過ぎます!こ、これはある意味モンスターですね……ッ!
結局、声を掛けることができなかった私は、朝まで岩陰から3人を覗いていた。
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