♡してLv.Up【MR無責任種付おじさん】の加護を授かった僕は実家を追放されて無双する!戻ってこいと言われてももう遅い!

黒須

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第39話〈ガンシャ―ライフル〉

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【勇者パーティー視点】

 地面は割れ、崩れ落ちるように数メートル地下へ陥没した。

 勇者パーティーがいる場所は地下が空洞になっていて、そこに潜んでいたロックワームの群れが仲間を殺され、怒り狂い地面を割って地上へ出てきたのだ。

 立っていることもままならない――――。

 メンバーは皆、驚愕し、戦慄し、絶望していた。

 そのようななか、ただ1人だけ、冷静に状況を把握、判断している者がいた。

 この勇者パーティーの隊長を務める女、アナル・ファックである。

 彼女は勇者パーティー結成時、高いレベルと豊富な戦闘経験から隊長に任命され戦闘の指揮を任されていた。


【アナル視点】

 これはもう全滅は避けられませんねぇ。あたくしは自力で生き残れるとして……。

 アナルは戦慄するパンティーの横顔を静かに見詰める。

 坊ちゃんは奴隷という過酷な状況を乗り越え、生き残った。
 顔付きも逞しくなっていましたねぇ。クスクス。
 今のリンダナ領には坊ちゃんが必要です。故にパンティー様は生かしておかなければなりませんねぇ。いずれ坊ちゃんの伴侶になれば、リンダナ領はより良くなるでしょう。

 アナルはファック家の養子になった身だが、実の親や兄弟、生家、生まれ育った農村を大切に思っている。
 彼女の行動原理は全てそこにある。


「前衛部隊、立て直しをッ! 動ける者は姫様を囲めッ!」

 アナルの檄で貴公子団が集まりスクラムを組んだ。

 さて、彼らのレベルは30から40。ロックワームを足止めすることはできませんが……。

 戦士たちの後ろでパンティーも大剣を抜き構える。

「わ、私も! 私も戦いますッ!」

 逃げるよう進言しても、パンティー様の性格を考えると聞き入れてもらえないでしょうねぇ。
 ならばあたくしは、この方が致死ダメージを負わないよう、注意深く行動する。

 アナルも剣を抜いた。

 それは青いやいば。薄い片刃の刀身には翼の模様が刻まれている。
 アダマンタイトで作られたリンダナ侯爵家最高の剣。
 ――――飛剣ひけんセンズリ!

 アナルは叫ぶ。

「各員戦闘態勢へッ!」

「アクティブスキル〈インスパイアLv3〉ッ!」
「アクティブスキル〈聖護Lv4〉ッ!」
「アクティブスキル〈加速Lv3〉ッ!」

 各支援職がパーティー全体にバフを盛り、攻撃力、防御力、速度、命中、闘争心を上昇させる。
 戦士達は薄っすら白い光に包まれた。

「アクティブスキル〈砕甲Lv3〉ッ!」
「アクティブスキル〈鈍重Lv3〉ッ!」
「アクティブスキル〈混乱Lv3〉ッ!」

 次に轟音を立てて向かってくるロックワームにデバフを付与。防御力、速度、知性を低下させる。

「前衛ッ! 止めろッ!」

「「「アクティブスキル〈防壁Lv4〉ッ!」」」

 アナルの号令で盾職【R重騎士】3名は前に出て巨大な盾で、それぞれ3体のロックワームを足止めする。

「放てッッ!!」

「アクティブスキル〈サンダーボールLv3〉ッ!」
「アクティブスキル〈アイスエッジLv4〉ッ!」
「アクティブスキル〈ウォーターカッターLv4〉ッ!」

 魔法職【R賢者】が攻撃魔法を撃つ。

 ゴレーム系のモンスターは水、氷、雷系統の魔法に弱い。
 魔法攻撃でロックワームにダメージが入った。

 が、次の瞬間――、体を傷つけられたロックワームは環形動物ミミズやゴカイのように胴体を上下左右に大きく激しく振って、周りの岩を破壊、弾き飛ばしながら大暴れする。

「ぎゃぁああああああッ!」
「無理だぁあああああッ!」
「ぐはっ!」

 盾職は弾き飛ばされ、支援職は飛んできた岩の下敷きなった。

 態勢は一瞬にして崩壊した。

 アナルは静かにパンティーへ視線を向ける。

 こうなるとアナルはわかっていた。ロックワームには適わないのだから自分だけ逃げろとパンティーへ暗に伝えたかったのだ。

 しかしパンティーは――――。

「皆が死んじゃう……、逃げちゃダメ……、こんなの、やるしかないじゃない……ッ!
 アクティブスキル〈聖光せいこうLv7〉ッッ!!」

 パンティーの体が黄金の光を放つ。
 〈聖光〉は自身のステータスを上昇させる勇者の奥義。Lv1増えるごとにステータスは5パーセント上昇する。〈聖光Lv7〉でステータス35パーセント上昇したパンティーはレベル100と同等の力を得る。

「はぁあああああああッ!!」――ザンッ!

 パンティーの大剣で暴れるロックワームが半分に分断された。

 そんなパンティーを見てアナルは「クスクス」と笑う。

 やれやれ、アターシャ様は「わたくしだけは助からなきゃ」とかブツブツ独り言を言っているというのに。
 しょうがありませんねぇ。パンティー様のMPが切れるまであたくしも付き合いますか。





 メンバーは一所に集まり退路は無くただ怯え、震えている。

 四方八方から襲ってくるロックワームを〈聖光〉を纏い黄金に光輝くパンティーが切り伏せ弾き飛ばす。パンティーが撃ち洩らしたロックワームはアナルが切り伏せる。

 しかし、長さ10メートル、太さ直径1.5メートルのロックワームの中に不規則に埋もれた拳程の核を壊せるわけもなく、切っても切っても再生してしまう。

「もぉッ! キリがないッ!」

 パンティーは嘆く。

 アナルは初めからロックワームを倒すことを諦め、MPを温存しながら戦っているが、パンティーはそうではなかった。

「MPが……、切れた」

 パンティーが呟くと、彼女の体を包む黄金の光が消えていく。


 ――――そろそろですねぇ。

「パンティー様、後はあたくしが引き受けます! 貴女が死んでは何も意味がないッ!一人でお逃げくださいッ」

 戦いながら叫ぶアナルの声を聞いてパンティーの手が止まった。

「アナル様なら…………」

 そう――、それで良いのですよ、パンティー様。
 残りはあたくしが引き付け、頃合いを見て脱出します。
 残りのメンバーは助からないでしょうねぇ。ですがここで死ぬわけにはいきません。


「パンティー様、わたくしだけは、どうかわたくしだけは連れて行ってくださいなッ!」

 金髪で白いローブを着た女、アターシャが叫んだ。すると――。

「俺もッ!」
「僕もお願いしますッ!」
「パンティー様どうかお助けくださいッ!」

 他のメンバーもパンティーに向かって叫び出した。

「ちッ、なんと図々しい」

 アナルはそう呟くと――、ロックワームを蹴散らしながら叫ぶ。

「パンティー様、いいから早くッ!」

 あたくしも長くは持ちません。あと数秒、判断が遅れたら危険な状況になる。


 沈黙するパンティーに皆がすがるような目で注目する。

 うつむいていたパンティーは空を見上げると――――、

「うぁあああああああああああッ!」

 脳が焼き切れんばかりの大声で吠えた。

「ふっざけんなッ!逃げられるかッ!私は絶対に逃げないッ!
 ――――アクティブスキル〈限界突破〉ッッッ!!!
 ――――アクティブスキル〈聖光Lv7〉ッッッ!!!」

「いけない。そのスキルを使ってはダメですッ!」

 アナルの叫びは虚しく掻き消され、パンティーの体が再び黄金の光を放った。

 〈限界突破〉はMPの代わりにHPを消費するスキル。MPの3倍HPを消費する為、終わりの見えない戦闘では危険な状態に陥る。HPがギリギリなると僅かな攻撃で死んでしまうからだ。


【パンティー視点】

「うらぁあッ! やぁッ!」
 ――ザンッ!ギンッ!ダンッ!

 私は無我夢中で迫りくるロックワームに剣を振り続けた。

 死にたくないッ!死にたくないッ!死にたくないッ!死にたくないッ!死にたくないッ!

「ぁぁああああ゛あ゛あ゛あ゛ッ!」

 だめ……。HPが……限界。

 私の体から〈聖光〉の光が消える。
 すると急に体が重くなった。剣を持ち上げられない。足が前に出ない。視界が霞む。

 目の前には迫りくる巨大なロックワームの大群。
 アナル様が私の名前を叫び剣を伸ばすも、到底間に合う距離じゃない。


「うっ、うぅっ、んっ……」

 気付けば、私の目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちていた。

 もうダメだ。 私は、――――死ぬ








【ゼツ視点】少し時間を遡って。

 僕達は歩きながら暢気に話す。

「さっきの地震、なんだったんだろうね?」とティッシュ。

「ティッシュが転んだからぁ?」とノエル。

「喧嘩売ってるニャンか? アッチはそんなに重くないニャン!」

「ふふふっ、ごめーん」

「もうッ! ――んん?遠くから悲鳴が聞こえるニャン」

 ティッシュは猫耳をピクピクと動かす。

「僕には全く聞こえなかったけど……」

「私も……」

 ティッシュは足を止め、口元に人差し指を立てて「シッ」と言いう。
 僕とノエルは口を閉じた。

 ティッシュの猫耳がピクピクと動いている。そして――。

「やっぱり聞こえるニャンね。距離はけっこうあるけど、……あっちニャン」

 そう言いながら指を差す。
 周りは家屋よりも大きな岩に囲まれ見通すことはできない。

 パンティー達かもしれないな。

「ティッシュ、僕の背中の荷物に乗って」

 ティッシュは頷くと荷物の上によじ登る。

「しっかり捕まってろよ」
「んっにゃーッ!」

 僕は一際大きな岩山をジャンプで駆け上がり、僕に掴まるティッシュはあまりの速さに悲鳴を上げる。
 ノエルは〈グラビティ〉で体重を軽くし僕の後を楽々付いてくる。





 岩山の上からティッシュが一点を見詰める。

「勇者様のパーティーがロックワームに襲われてるニャン。かなり危険な状況……どうしよう」

「ダメだ。僕には見えない」

「〈暗視〉を使っても遠すぎて見えないわ」

 ダンジョンの中は星光石で照らされているが薄暗い。どれだけ離れているかはわからないが、僕には全く見えない。しかし微かだが、岩と岩がぶつかる音は聞こえる。

 二人と荷物をここに置いて全力で駆ければ、一瞬で助けに行けるが、その間にC級モンスターのブラッディバットが二人を襲う可能性がある。


 あのスキルを使ってみるか…………。

「アクティブスキル〈ガンシャ―ライフル〉ッ!」

 僕の手に2メートルはあろう細長い〈ガンシャ〉が顕現した。

「「大きいガンシャ!(ニャン)」」

「新しいスキルだよ」

 〈ガンシャ―ライフル〉の上には望遠鏡のようなものが乗っていて、その中を覗くとパンティー達が戦っている姿が見えた。

 パンティーの体から金色の光が消え、彼女は地面に剣を立てて項垂れた。アナルが助けに向うが間に合う距離じゃない。

 これ、不味いぞ!

「僕の背後に立たないよう気を付けてッ!
 種転送、〈種強化Lv29〉ッッッ!!!」

 今僕が撃てる最強の”種”を〈ガンシャ―ライフル〉に転送した。
 僕は〈ガンシャ―ライフル〉を構え、パンティーに迫るロックワームの大群に向けて撃つッ!

 ドッピュンッッッッッッ!!!!!

 物凄い射出エネルギーだ!発射の反動で僕の背後に爆風が起こった。








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