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第37話〈Gスポット〉

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「ノエル、それじゃ手筈通りトドメを頼む」

「わかった。気を付けね、ゼツ君!」

 ノエルは僕の胸に手を当て目を見詰める。吸い込まれそうな青い瞳とピンク色の睫毛、その表情はいつになく真剣だ。
 隣りではティッシュが泣きそうな顔をしている。

「ティッシュもラストアタックできそうなら、やってくれよ」

「できるわけないニャン……」

 僕は洞窟から出てロックワームへ向かって歩き出す。距離は約30メートル。


 ロックワームの群れは全部で10から15体だろうか。岩の後ろに隠れていて確認できない個体もいる。
 僕の接近に気付くとロックワームが一体、襲いかかってきた。

 圧倒的質量を持つ巨大な岩のミミズが僕の頭上から突進してくる。
 素早い動き、大迫力で押し寄せる数トンはあろう巨大な岩の塊、ロックワームを目の前にして呟いた。

「B級モンスター、か――」

 ガシッ!

 僕はロックワームの突進を左手一本で受け止めた。衝撃で足場にヒビが入ったが僕は微動だにしない。

 B級――、それはレベル70の者が2人から5人がかりで一体倒せると定められたモンスター。
 故に、そのパワーとスピードは僕の暴力的なステータスの前では全く脅威ではない。

 掴まれたロックワームは離れようと体を激しくよじるが、僕の握力から逃れることはできない。

 このまま右手で殴って破壊してもよいのだが……。

「アクティブスキル〈ガンシャ〉、種転送〈種強化Lv10〉」

 僕は左手で抑え付けているロックワームにガンシャの先端を押し当てた。そして――、

 ドピュンッッッ!!!――ゴゴゴッンッッッ!!!

 ゼロ距離で”種”を撃ち込む。
 ロックワームは爆発し木端微塵こっぱみじんになった。 それから黒い霧になって四散すると小石サイズの金塊が地面に落ちた。

「種の強化は、Lv5でよさそうだ」

 ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!!!
 ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!!!
 ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!!!

 〈ガンシャ〉を見ながら呟く僕に無数のロックワームが物凄い轟音を立てて襲い掛かって来る。

 仲間を殺されて怒ったのか?

 僕は巨大な岩の上に飛んで距離を取った。
 そして〈ガンシャ〉を構える!

「種転送〈種強化Lv5〉」

 ドピュッ!!

 強化された”種”がロックワームに着弾すると、その部分が粉々になって弾け飛んだ。

 威力はこれで良さそうだが……、体の一部を失ったロックワームは、切断された環形動物かんけいどうぶつ(ミミズやゴカイのような生物)の様に上下左右に胴体を激しく動かし暴れ回っている。そして暴れながらも周りの岩を取り込み体が徐々に再生している。

 スライムと同様で核を壊さないと再生するのか。それにこの暴れる巨体がノエルやティッシュにぶつかったら二人は致命傷を負う。

 なら、新しいスキルを使うか……。 僕は叫ぶ!

「アクティブスキル〈Gスポット〉ッ!」

 右目の瞳の中に”G”の文字が浮かび上がった。 その右目を通してロックワームを見るとヤツが透けて見える。

 あった!あれが核だ!

 モンスターの核は緑色なのだが、〈Gスポット〉を通して見るとピンク色に見える。これは相手の弱点を見るスキルで弱点はピンクに映る。

 ロックワームの群れを見るとヤツ等の核の位置は様々で、中心近くに核がある個体もいれば端の方にある個体いる。

 さっき攻撃をくらって暴れ回っている個体は中心付近に核がある。
 僕はそいつに向けてガンシャを構える。

 ドピュッ!! ドピュッ!! ドピュッ!!

 長さ10メートル、太さ1.5メートルあるミミズのような形のロックワームの両サイドの胴体を2発の種が切断し、核が入っている部分だけを分離させる。
 幅1.5メートルの岩の塊になったロックワームに最後の一発が命中し、一部分を弾き飛ばす。

 中の核が露出した。

 この状態でもロックワームはゴロゴロ転がる。ノエル達が下敷きになればただでは済まない。

 しかし彼女なら――、

「ノエル、核を破壊してくれッ!!」

 僕は洞窟の出口に隠れるノエルに向かって叫んだ。



【ノエル視点】


「やってみるッ!」

 ゼツ君に破壊されたロックワームは不規則に地面を転がる。あの質量に踏まれれば軽傷とはいかない。でも――、

 洞窟から出ると太腿に差した4本のクナイに両手を掛ける。それを引き抜きながらロックワームの核に向かって投げた。

「アクティブスキル〈グラビティLv4〉ッ!」

 〈グラビティ〉で誘導された4本のクナイが、転がる大きな岩に嵌め込まれた核を追跡する。
 そして2本、核に刺すことができた。

 ロックワームは黒い霧になって四散する。
 経験値が流れ込んできた。何て凄い量なの。

「ノエル、でかした!どんどん行くぞッ!」

「はいッ!」



【ティッシュ視点】

 ドピュッ!! ドピュッ!! ドピュッ!! ドピュッ!! ドピュッ!! ドピュッ!!

「やぁーッ! えいッ!」

 アッチの目には信じられない光景が映っている。

 金プレートの冒険者でも1日1体に倒せればよいと言われているB級モンスター。そのロックワームをゼツが次々に破壊し、露出した核をノエルが操る、宙を飛ぶ4本のナイフが突き刺し、ロックワームを倒していく。
 地面には次々に金塊が転がっていく。

「あ、あり得ないニャン……」

 そうして見ているとゼツが弾き飛ばしたロックワームから緑色の水晶のような玉が落ちて、アッチの方まで転がってきた。

「ティッシュ、トドメをさしてッ!」

 ノエルに言われアッチは腰の短剣を抜き、洞窟から飛び出した。

「ニャーーッ!」

 ギンッ!

 短剣で核を叩いたけど、傷すらつかない。

「だ、だめニャーン!」

「ティッシュ、これを!」

 そう言いながら、ロックワームと戦うノエルは腰のナイフを抜きアッチに向かって投げた。

「ひぃッ!」

 顔に突き刺さると思ったらアッチの目の前でピタッと止まり、ナイフはカランッと地面に落ちた。
 刀身に魔法陣のような模様が入った重厚なナイフ。

「ニャャッ!!」

 それを思い切り核に振り下ろすと、核は真っ二つに割れ、下の岩まで切れた。
 核が黒い霧になって四散する。

「この武器、おかしいニャーーン!!」

 叫ぶアッチに大量の経験値が流れ込んできた。レベルがどんどんあがる……。


【ゼツ視点】

 ラスト1体!
 僕は〈ガンシャ〉で胴体を削り核だけを露出させる。

「ティッシュ!」

「ンニャャャッ!」

 ティッシュはロックワームの核に駆け寄り、ナイフで真っ二つに割る。


 僕は岩から降りて二人の元へ歩み寄る。
 その間、ノエルは〈グラビティ〉でドロップした金塊を集めている。宙に浮いた金塊は彼女の腰に下げた革袋に落ちていく。

「ノエル、MPはどうだ?」

「うーん、10分の1くらい減ったかな」

「まだまだいけるな」

「2体しか倒してないのにアッチのレベル、13になったニャン……ッ!」

 ティッシュは驚き喜ぶ、目には涙を浮かべている。

「私にはクナイがあるから、そのナイフはティッシュが使って」

「ありがとう、……ノエル、……ゼツ」


 僕は右目の〈Gスポット〉をまだ解除していない。その瞳でノエルを見ると彼女の服は透け、裸が見える。体は引き締まって足や腕、ウエストは細いのに胸や尻は大きい。

 そしてよく見ると胸の先端や股間、それから尻の悪魔尻尾がピンク色に見える。
 ここがノエルの弱点ってことなのか?

 次にティッシュを見てみた。彼女もノエルと同様なのだが、頭の上の猫耳の付け根もピンク色になっている。

「ティッシュ、ちょっといいか?」

 そう言って、涙ながらにレベルアップを喜ぶティッシュの耳の付け根を指先で搔くように触ってみた。

「んにゃ、にゃにゃにするニャン!」

「もう少し触るから我慢してくれ」

「ンニャ、んっ、んふっ、んんんんん、そ、そこらめニャン!!」

「すまん、……どうだった?」

 ティッシュは顔を真っ赤にし、悔しそうな目で僕を睨んでいる。

「んもぉー、そこは獣人の性感帯ニャンッ!! ゼツのせいで濡れた!」

 なるほどそうかことか……。 このスキル〈Gスポット〉は色んな意味で相手の弱点がわかるスキルなんだ。

「ゼ~ツ、く~~~ん」

 振り向くとノエルが笑いながら僕を睨んでいた。








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