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第35話 けしからんダンジョン
しおりを挟む僕の横でノエルが呟く。
「あのモンスター何をしてるの?」
「モンスターの凌辱」
モンスターにも多少知恵のある種類がいる。その中でもゴブリンやコボルドは女を襲い穢す習性がり、被害は跡を絶たない。
「そんな……、助けなきゃ!」
「ああ――――、
アクティブスキル〈ガンシャ〉」
僕の手に黒光りしたナスのようなモノ――、〈ガンシャ〉が顕現する。それを女の股の前に立つコボルドに向けて構えた。
「種転送、〈種強化Lv1〉」
僕の体内から転送された強化された種が〈ガンシャ〉に装填される。
今の僕は、この距離なら針の穴すら狙える!僕は狙いを定め、撃つ!
ピュッ!
コボルドが腰を動かそうとする刹那、闘気を纏った種がヤツの下半身を撃ち抜き、下半身が爆発したかのように弾け飛んだ。
僕は続けて連射する!
ピュッ!ピュッ!ピュッ!ピュッ!ピュッ!ピュッ!
女を囲っていたコボルドの群れの下半身がほぼ同時に吹き飛ばされた。
一瞬の出来事で、男を押さえ付けていたコボルドは何が起きたのか理解が追い付かない様子だ。そこに――、
ピュッ!ピュッ!ピュッ!ピュッ!ピュッ!
闘気を纏った種が命中し下半身が弾け飛んだ。
致命傷を負ったコボルド達は虫の息だ。だが、まだ全て生きている。このまま放っといても死ぬのだが……
僕は男の冒険者に向かって叫んだ。
「とどめを刺せッ!」
「えっ?あっ! はいッ!!」
男は落ちていた剣を拾うと、コボルドの頭や胸に剣を突き刺していく。
そして、全てのコボルドが黒い霧になって消えた。
◇
負傷した冒険者の元へ歩み寄った。
「……助けてくれてありがとうございます。落ちている銀は君達が……」
男は女を介抱しながら、コボルドがドロップした地面に転がる銀に視線を向ける。落ち込んだ様子で元気がない。女の方は男の上着を羽織りブルブルと震えていた。
「それは貴方が倒してものだから受け取れません。それより第1層への階段まで一緒に行きましょう。歩けますか?」
僕がそう言っている間に、ノエルがスキル〈グラビティ〉で地面に転がる銀の粒を同時に宙に浮かせ、僕の手の上に全て集めた。
銀が独りでに空を浮遊し僕の手の上に集まる様を見て男は驚愕している。
「これはいったい……、凄い……」
僕が男に銀を手渡すと、隣で震える女を抱き寄せながら彼は言う。
「これで妻に新しい服を買ってやれる。ありがとうございます。ありがとうございます」
この二人、夫婦なのか……。年は二十歳前後だと思うが……。
現在地はダンジョンの2層。
3層へ下る階段へ向かう途中に1層へ登る道があるから、そこまで一緒に行くことにした。
別れ際、二人から何度もお礼を言われた。
彼らは普段、1層で狩りをしているそうだが、今日レベルが上がって2層に行ってみたらこの有様だったそうだ。
ノエルは二人が夫婦だと知ると、瞳を輝かせ色々な質問をしていた。彼女は夫婦で冒険者をやるこに憧れている。
僕の隣をニヤニヤ笑いながら弾むように歩くティッシュが――。
「5層までは戦わないんじゃなかったかニャン?」
「ああいう場合は例外だろ」
「にひひひっ、でも見直したニャン!ゼツって滅茶苦茶強んだね!コボルトはE級のモンスター、凄いニャン!お金はアッチが欲しかったけどw」
「お前は何もしてないだろ」
「それもそうニャンねw」
それからティッシュは僕の腰の刀を見つめる。
「アッチ、ゼツは剣で戦うと思ってたんだけど……、あの武器はなんニャンか?」
ティッシュの質問に僕を挟んで反対を歩くノエルが誇らしげな顔で答えた。
「ゼツ君は凄く強いんだから!さっきの武器は〈ガンシャ〉って言うのよ。種を飛ばす武器なの」
「たねぇ? ノエル、種って?」
「種はオタマジャクシみたいな形なのよ」
「へぇー!ねぇゼツ、さっきの武器、見てみたいニャン」
僕は〈ガンシャ〉を顕現させた。
ティッシュは興味深そうに〈ガンシャ〉を見詰める。
「黒光りしてて、いらしい形してるニャンね。触ってもいいかニャン?」
「ああ、いいよ」
歩きながらティッシュは〈ガンシャ〉の先端を指先で突っつき、それから撫でるように触る。
「硬いニャン……、この先っぽの穴からオタマジャクシみたいなのがピュッって出るのかニャン?」
ノエルは終始、気分が良さそうで彼女も歩きながら〈ガンシャ〉の根元を握る。そしてティッシュの問いに上機嫌で答える。
「うん。そうだよ!」
僕を挟んで両隣にノエルとティッシュ。
二人は僕が持つ〈ガンシャ〉を撫でたり、握ったりしているから二人の体が密着していて歩きづらい。
「これ、美味しい味がするんだよぉ~」
とノエル。
「え?ほんとかニャン!?舐めてみるニャン」
とティッシュ。
あれ?前にノエルが舐めた時、味がしないって言ってたような……。
ノエルが根元を握る〈ガンシャ〉にティッシュが顔を近付け――。
「レロ……レロレロレロ…ちゅっ、ちゅぱ、じゅぼ…じょぼ」
彼女はガンシャを舐めたりじゃぶったりしている。
「どうだ?」
僕は疑問に思い、ティッシュに尋ねた。
「うーん……、味、しないニャン?」
ティッシュが疑問の表情を浮かべるとノエルは申し訳なさそうに。
「ご、ごめんティッシュ、まさか信じるとは思わなくて」
「騙すなんて酷いニャン!」
「だから、ごめんって」
二人は僕の〈ガンシャ〉を握り、僕を挟んで押し合うから、僕と〈ガンシャ〉がゆらゆら揺れる。
その後、僕達は3層で触手スライムに襲われている5人の女冒険者パーティーと遭遇。スライムの酸で服を全て溶かされたところを〈ガンシャ〉でスライムの核を撃ち抜き助けてあげた。
それとは別に3層でクラフゴブリンに暴行されそうになっていた女冒険も助けた。やはり服を剥ぎ取られていた。
やれやれ、まったくけしからんダンジョンである。
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