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第32話 ザコち♡ぽ

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 昼過ぎ、冒険者ギルドに入ろうとした僕は入口で女の子と鉢合わせになりぶつかった。相手の少女は僕の顔を見て驚き叫ぶ。

「ゼ、ゼちゅ様ぁああああッ!?」

 白銀の髪を腰まで伸ばした小柄な少女に僕は見覚えがある。

「君は……、パンティー」

 彼女はこの国の第4王女パンティー・ライン・ビッグベニス姫。そして……、僕の元婚約者でもある。

 何故こんなところにパンティー姫が……。ギルドの中、彼女の後にはたくさんの兵士と、それからアナルやアレプニヒトもいる。

 慌てて僕から距離を取ったパンティーはアナルに小声で問う。

「アナル様、ゼツ様は死んだと聞いていましたが?」

「どうやら生きていたようです。そういえば先日ギルドでお見掛けしましたねぇ。すっかり忘れていました。クスクス」

 放尿しておいて忘れるとは思えないが、そうか……僕は死んだことになっていたのか。

「で、隣の女性だれですぅ?」

 パンティーは目を細めノエルを睨む。

「僕の彼女だよ」

 そう言いながら、僕はパンティーの顔の前で小指を立てた。
 こうやって紹介するのが庶民では一般的だとノエルに教わったからだ。

 アナルは鋭い目付きで僕を睨むと一言。

「ムカつきますねぇ」

「ぐぬぬぬぬぬ!」

 何故か怒りの形相でパンティーは平らな胸を張り、僕の目の前まで来きて――。
 ガシッ!っと僕の股間を鷲掴みした。

「こ、こんなに大きくして、私にぶつかって興奮したんじゃないんですかぁ? カッチカチ、きっもッ。どうして大きくなったんですかぁ? ほら、言いなさいよッ」

「ちょっ!なにやってるんですか!」

 ノエルが慌てて止めに入るが、僕はそれを手で制す。
 彼女は王族だ。平民の僕らが逆らえば不敬罪で捕まる。

 パンティーは小柄で華奢、貧乳だが、露出の多いビキニアーマーを着ている。
 顔も途轍もなく綺麗で絶世の美少女ではあるが、僕がカッチカチなのはそのせいではない。
 実はレベルが上がってからは常にカッチカチなのだ。上手く隠しているが、こうやって握られるとバレてしまう。

「これは、その、生理現象っていうか……」

「ほら、みなさい。私の体で生理現象起きちゃったんじゃない! 欲望押さえられなくて、なさけないですね~、このザコち♡ぽ。 ふっ、そんな女より私の方が魅力的に決まっていますからねッ!」

 いや、これはパッシブスキル〈ゼツリン〉のせいなんだよなぁ。トイレの時だけ小さくなるのがせめてもの救いだ。

 パンティーは口角を吊り上げ勝ち誇った顔になっている。
 しかし何を競ってるんだ?
 そもそも僕は侯爵家を追放になったから平民だ。当然婚約は破棄されている筈だが……。

「パンティー姫、取り敢えず手を離してくれないか?」

「嫌です! 素直に私の方が可愛いとお認めになれば離します」

 彼女は僕の股間を握ったまま、そっぽを向いてしまった。
 困ったな王族の手を平民の僕が握ってどかす訳にいかないし。

「パンティー様、お戯れはその辺にしましょう。そろそろ行かないと時間がございませんわ」

 パンティーの後ろ、アナルの隣りにいた白いドレスのようなローブを着た金髪の女が冷静な声で言った。冷たい表情をした女だ。
 彼女も見覚えがある。確か……。

「アターシャ、……そうですね。 こんなカッチカチの変態さんに構っている暇はありませんでした。妊娠するところでした」

 パンティーは手を離すと僕の横を通り過ぎ、ギルドから出ていく。アナルやアターシャ、それに若いイケメンの兵士達がぞろぞろと後に付いて行く。

 アターシャは僕の横を通り過ぎる際に僕の耳元で囁いた。

「気持ち悪い方。今後、姫様には近付かないでくださいな」

 僕から近付いたわけではないのだが……。パンティーは背中に大きな剣を背負っていた。彼女も戦うのだろうか? いや、そんなはずはない、この国の姫だぞ。

 ぞろぞろとパンティー一行が出ていくと最後に灰色の髪を肩口まで伸ばした褐色肌の猫耳女が僕を見て足を止めた。

「ニャニャ!? あれ!お客ニャン!?」

「君は……誰だっけ?」

「ンニャ!! 忘れるなんて酷いニャン!? アッチは〈ラブヘブンズ〉の~……(お店ではリアナだったけど)アッチの名前はティッシュだニャン」

 満面の笑みを浮かべるティッシュ。
 この喋り方。思い出した。一昨日行った風俗店の嬢だ。
 あの店〈ラブヘブンズ〉と言うのか……、神の名前を使うなんて、罰当たりな店だな。

「思い出しかニャン? お客も冒険者だったニャンね!」

 ティッシュは嬉しそうだ。

「にひひひっ、やっぱりアッチ、お客に付いて行くニャン!」

 どういうことだ?

「アナル様ぁー!」

 ティッシュは先にギルドを出たアナルに向かって叫んだ。
 そしてアナルがこちらに来る。

「どうされましたか?」

「アッチ、勇者様のパーティーを抜けるニャン。それでこっちの人に付いて行くニャンね」

「ちょっと待ってくれ! 僕は仲間にするなんて言ってないぞ」

 ん?待てよ。 今、勇者様のパーティーって言ったよな……。

 アナルは横目で僕を睨む。

「それは構いませんが、途中でパーティーを抜ける場合、金貨5枚を払ってもらうと契約書に書いてありましたが、大丈夫ですか?」

「ニャンと!? アッチ、字読めないから知らなかったニャン……」

「危機に遭遇した際、裏切って勝手に離脱されるのを防ぐ措置ですので、知らなかったとは言え、ティッシュさんだけ大目に見ることはできませんねぇ」

「残念だったな。それじゃ僕達は行くよ」

「待つニャンッ!!
 アクティブスキル〈勝負の選択〉ッ!」

 ティッシュがコインを上に投げるとコインは金色に光り輝く。

 彼女は手の甲でコインをキャッチ。そして被せた手をどかす。

「表……ニャン。やっぱりアッチ、この人に付いて行く」

 そうか、彼女の加護は【HNギャンブラー】!とても珍しい加護でレアリティ【HR】よりも希少だといわれている。





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