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第31話 彼女ができました
しおりを挟む明け方、羅部捕亭に帰ると宿の前にノエルが立っていた。
「ゼツ君!おかえりなさい」
「うん、ただいま。外に出てどうしたの?」
「目が覚めちゃって……ゼツ君が心配で待ってた。えへへへへ」
「そうか、朝は少し寒いだろうに……ありがとう」
僕とノエルは手を繋ぎ部屋へ戻る。
服を脱いで濡れタオルで体を清めているとノエルが。
「レベル上げられた?」
「まあまあかな……」
僕はパンツ姿でベッドに座りステータス光を顕現させた。
「見ていい?」
「もちろん」
■■■■■■■■■■■■■■
【MR無責任種付おじさん】
Lv 296
⑤HP 45231
⑤MP 45231
⑤ストロングス 45231
⑤アジリティ 45231
⑤インテリジェンス 45231
〈アクティブスキル〉
感度操作6倍、ガンシャ、種付操作、フェロモンLv2、モーニングコーヒー、散種、わからせ、皮かぶり、Gスポット、ガンシャ―ライフル
〈パッシブスキル〉
ゼツリンLv29、種強化Lv29、無責任
■■■■■■■■■■■■■■
他人がアクティブスキル、パッシブスキルを見ることは出来ないが、レベルやステータスの上昇は確認できる。
「す、凄い……レベル201から296まで上がってる。たった3日間で凄過ぎるよ」
「僕なりに頑張ったけどこれが限界だった。あっ、そう言えば、ノエルて『彼氏、彼女』とか『付き合う』って意味わかる?」
「うん。わかるよ……私の両親も結婚する前に付き合ってたって言ってたしね。……どうしてそんなこと聞くの?」
たくさん店を回り色々な嬢と話して、庶民には『付き合う』という習慣があることを知った。これは貴族の親同士が決める許嫁とは異なり当人同士が決めて成立する関係。結婚の通過点になるそうだ。
僕はもう貴族ではないから、これからは自分で許嫁や妻を探さなければならない。
「もし良かったら僕と付き合ってくれないか?」
そう言うとノエルの瞳がキラリと輝く。
「……私、ゼツ君と一緒にいられれば奴隷でもいいと思っていたの。でも、ゼツ君が優しいから色んなことを期待しちゃって、欲が出て……、私も…………、私もゼツ君と付き合いたい!」
真っすぐ僕を見詰めるノエルの瞳には決意が宿っていた。
「じゃぁ今日から僕はノエルの彼氏で、ノエルは僕の彼女だね」
「うん!」
ノエルは微笑んだ。
「色んなことって、何を期待してたの?」
「そんな、大したことじゃないよぉ。漠然としてるし、まぁ色々かなぁ~」
と恥ずかしそうに彼女は言う。
「例えばぁ?」
「うーん、例えば……、冒険で白金貨5枚貯まったら家を買って。あっ、家は小さくていいの。ゼツ君と楽しく過ごせる場所が欲しいだけだから。二階建てで一階はリビングで二階は二部屋かなぁ。 それくらいの広さなら毎日のお掃除も楽だしね。 それで子供は絶対に二人以上欲しくて。私一人っ子だったから。二人以上ならゼツ君が欲しいだけ産むつもりだったの。それから料理も覚えたくて、だから台所が広い家は絶対だよねぇ。それと家を買ったら先ずは庭に果物の苗を植えるの。これも絶対だよね。あとね…………」
それからノエルは暫く自分の構想を語っていた。
「へぇー、結構具体的だねぇ」
「え?そんなことないよぉ~」
【アエロリット視点―同時刻】
ペルシヤ王国首都バビロニア、世界最古のダンジョン〈バビロンの塔〉の最上階にて。
無数の蛇が絡み付き、黒いゴスロリドレスを着た紫色の長い髪の少女、魔神アエロリットは透明な丸い水晶を覗きながらクツクツと笑う。その目は閉じられているが彼女には水晶に映るものが見えている。
そして、アエロリットの横にはサラサラ黒髪ロングで赤い瞳をした冷たい表情の美少女が立っていた。
「主が浮気の意味を覚えるのはまだ先か……。クツクツ、面白い。しかし、主は女の扱いが上手いのう」
アエロリットかけた〈神の隠蔽〉はこの水晶の中にゼツを隠し人神と龍神から彼を見えなくする魔法。逆にアエロリットはこの水晶から何時でもゼツを監視することができる。
アエロリットと共に水晶を見ていた黒髪赤目の美少女は呟く。
「狂ってる」
彼女は冷たい口調で言葉を続ける。
「この男、頭おかしいですよ。ぶっ壊れてます。私はこの男を信用できません。生理的に無理です。女性を馬鹿にしています」
「ふん。小娘が言うようになったのう。そもそもお前は男嫌いじゃろう」
「ええ、そうですね。この方に限らず殿方は生理的に無理です。ところで良かったのですか?彼、これからダンジョンに潜るようですが……レベル上げが遅れますよ」
「クツクツ、問題ない。主がレベル800になれば、アクティブスキルが解放され、奴が復活する。〈種分身―タカヒロ〉がな。そうなれば主が望まなくともレベルは勝手に上がる」
「レ、レベル800ですか?」
COOLでSMARTな黒髪美少女は口元を手で押さえ、後ろへたじろいだ。
「魔王のお前でも驚くレベルじゃろう?」
「レベルが上がる速さに既に驚いておりましたが……。 しかし現在のレベルは296です。800まで上げられるのですか?」
「クツクツ、問題ないわ。このノエルという娘がいるからのう。この三日で経験値を稼げなければ届かなんだが、296なら800は射程内よ。しかしダンジョンに潜るなら例の仕掛けは不要じゃったのう……」
「あれはもう解除できません。スクワードは火の海に飲まれるでしょう」
「それも一興じゃ。クツクツ クツクツ」
アエロリットの思考する。
(この二人が番いになる。それは妾とって望ましい。しかしこのゼツ。我が父ソロモンに似ている。不思議なものよのう。クツクツクツ)
アエロリットが考え事をしている隙に――、
水晶の中ではゼツとノエルがきつく抱き合うと、舌を絡める激しいキスをして服を脱ぎ始めた。そしてベッドに倒れて本番を始めようとする。
それに気付いたアエロリットは慌てて水晶を暗くし、見えなくした。
「ご覧になられないのですか?」
「……濡れるからのう」
「そ、そうですか……」
少し気まずい雰囲気になったが、魔神と魔王の会話は続く。
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