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第30話 風俗店巡り③
しおりを挟むダンジョン探索は20日間を予定していて、冒険に必要な20日分の食料、回復薬等の消耗品、調理器具や備品を全て買いそろえた。水と薪はダンジョン内で入手可能だから持っていかない。
そして夕方、バイブ武具店を訪れる。
エルダードワーフのファニーさんから注文していた装備を受け取った。
数日で僕のレベルが上がったことに気付いたファニーさんは腰を抜かして驚いた。
この後、別の予約客が来ると言うことで僕達は手短に挨拶を済ませバイブ武具店を出る。
これでダンジョン探索に必要な物は全て揃った。いよいよ明日から僕達の冒険が始まる。
夕食を食べて少しお酒も飲み羅部捕亭に戻ると、何となくなし崩し的にやった。
冒険を前にノエルも高揚しているようだ。終わると安心したのか彼女は眠ってしまった。
ノエルとやると僕の心も満たされる。
全裸のノエルに毛布を掛けて彼女の頭を撫でてから服を着た。
今夜は最後の追い込み、僕は小走りで夜の色街へ向かう。
◇
今日も順調に店を回るが、なかなか本番にあり着けない。
僕のアクティブスキル〈フェロモン〉や〈わからせ〉を使えばお金を払わず簡単にやれそうだが、アレは人間の人格や人権を無視した非人道的なスキルだ。簡単な気持ちで使うことは出来ない。
とにかく努力しよう。頑張るんだ。たくさん回って数を打つ、足で稼ぐ、それしかない。
そろそろ朝か……色街が閉まるまであと1時間……。よし、ならあと3軒はいくぞ。
僕は小走りで隣の店へ向かう。
案内された個室に入ると、白いネグリジェを着た黒髪ロングで胸の大きいおっとり顔の嬢がベッドに座っていた。色白で綺麗な人だ。歳は25歳前後だろうか。
「いらっしゃいませ」
嬢は愛嬌良く笑顔で挨拶をする。
「あの、突然で申し訳ないのですが、本番をさせてくれませんか?」
嬢は「まぁ」と手で口元を隠し驚くが、すぐに笑顔を取り戻した。
「申し訳ありません。この店、本番は禁止なんです。けれど寛いでいただけるよう尽くしますので」
「銀貨5枚払います」
「えっ!ご、5枚ですか……、うーん、ダメです」
「なら銀貨10枚だとぉ?」
「えぇええ、でもぉ~、私フィア「銀貨15枚」ンセがいますから、って、えっ!?えっ!?15枚!?」
「あっ、すみません。婚約者がいるんですか?」
「ええ、はい。ねぇ、最高いくらまで出すつもりだったの?」
嬢はにっこりしながら首を傾げる。
「お姉さんの加護のレアリティ次第なんですけど……」
「レアリティ?変な性癖があるのね……私の加護は【R】よ」
【R】だと!ノエルと一緒だ。レベルが低いから気付かなかった。【R】は【NH】の7倍経験値を稼げるが、今まで会うことは出来なかった。【R】以上の人材は引手数多で普通の仕事でも稼げるからな。
……やりたいが、相手がいるなら話は別だ。
「えっと金貨1枚ですけど、でも婚約者がいるなら諦めます」
たまにいるんだよなぁ。……人妻とか。相手がいる人とは流石に本番はできない。
僕が断ると嬢は恥ずかしそうに上目遣いで僕を見て。
「でもぉ~金貨1枚くれるなら本番してもいいですぉ~」
「いや、いいですよ。変なことお願いしてすみません。僕、もう行きますので」
店に払った銀貨2枚は無駄になるがしょうがない。
「待ってッ!」
僕が立ち去ろうとすると大きな声で嬢に止められた。
「彼、欲しい物があってぇ~、金貨1枚あれば買えるのよぉ~。ねっ?……だから、ね?」
いや「ね?」って言われても……。
「ほんと無理なので忘れてください。それでは失礼します――」
「待ってッッ!!」
嬢は僕に抱き着き引きとめる。
ってこの人、力強いな!
「お願い。私、お金に困ってるの!たくさん気持ちよくするから!見捨てないでっ!それに彼だって絶対に喜ぶから!ねっ!お願いッ!!」
自分の婚約者が他人と本番して喜ぶってどんな男だよ……。
「人助けだと思って、お願いします!行かないで」
嬢は瞳を潤ませお願いしてくる。
金に困っているようだけど、本番しないのに金だけあげるわけにはいかない。婚約者も喜ぶならやってもいいのかな……。他人の性癖をとやかく言う積りはないし。
「わかりました。じゃお願いします」
時間もないしとっとと終わらせて次に行こう。
僕は嬢に金貨1枚を手渡した。
◇
「んっほぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
「黙れ!メス豚ッ!」 ――バチンッ!
僕は後から、女のだらしない肉尻を引っ叩いた。
こいつ、声がでかいから店の人にバレてしまう。生意気だったから少し本気を出したらこれだ。
この人は途中から僕のことを「ご主人様」と呼びだし、自分のことは「メス豚」と呼べとお願いしてきた。やれやれ、とんだ変態だ。
本番が終わり経験値が流れ込んできた。
【R】は【HN】の7倍、【N】と無加護の11倍経験値を稼げる。【N】11人分と考えるとかなり美味しい。
「んほっ……んほっ……お゛っ、お゛っ」
嬢はベッドの上に転がり、がに股でピクピクしているが、僕は無視して急ぎ服を着る。
少し時間を掛け過ぎた。早く次の店に行かなければ……。
「ありがとうございました。それでは失礼します」
「待って……」
嬢が慌てて起きる。
「ご主人様、お願いします。もう一回!もう一回お願いします!こんなに凄いの初めてなのぉおッ!!」
まだ懲りていないようだ。口答えできなくなるまでわからせてやってもいいが今は時間がない。それに2回やっても僕にメリットはない。
「急ぎますので」
「行かないでッ!……そうだ。お金、お金払いますッ!だからもう少しぃーッ!」
ちっ、しつこい女だ。
僕のレベリングには対人スキル、コミュニケーション能力が求められる。
元々、人と話すのが得意ではない僕にとってノエル以外の女性と本番をやるのは面倒なことでしかない。冒険でモンスターと戦っていた方が楽なくらいだ。
「もう一軒行きます故、失礼――」
僕は「えええええっ!もう一軒!?」と驚く嬢を後に、颯爽と身を翻し勢いよく立ち去った。
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