♡してLv.Up【MR無責任種付おじさん】の加護を授かった僕は実家を追放されて無双する!戻ってこいと言われてももう遅い!

黒須

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第26話 バイブ武具店

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 僕達は細い裏路地で『バイブ武具店』という小さな看板を発見し、足を止めた。一見、民家と見分けがつかないこの店は常連客でもなければ通り過ぎてしまうこぢんまりした佇まいだ。

 ここは服屋の店主に教えてもっらった店。
 予算は白金貨1枚で、良い武具を扱っている店を教えて欲しいと聞いたところ、ここを紹介された。
 店主は職人気質で売り手を選ぶそうだが、果たして売ってくれるか……。

 基本的に武具というのは服よりも安い。職人一人が作業して、服を作る場合、糸紡ぎから初まり、糸を編み込んで生地して、最終的に服一着を完成させるまで3ヶ月から半年はかかる。
 対して、青銅や鉄製の剣であれば熱で溶かした金属を鋳型に流し込んで、冷えたら回転やすりで削るだけだから1日に2本は作ることができる。銅鉱石、鉄鉱石は安定的に採掘されていて入手も容易い。
 単純に人件費で差が出るわけだ。

 しかし、武具にも例外はある――。


 店の扉を開けると『チャリン チャリン』と扉に吊るされた鈴が鳴った。

 店内は狭く人はいない。奥の工房から『カンッ カンッ』と金槌で金属を叩く音が聞こえるから店の人は奥で作業をしているようだ。

 僕達は陳列されている武具を見て回る。
 そうしているとノエルが壁に掛かったナイフを見ながら言う。

「ゼツ君、このナイフ、金貨20枚もするね。今まで見てきたのは銀貨10枚くらいだったのに……刀身の模様が綺麗だわ」

「これはダマスカス製法で作った刃だよ。その方法で製作された金属をダマスカス鋼っていうんだ……」

「ダマスカス鋼?」

「うん。高温で熱した鉄を金槌で何度も叩いて不純物を取り除いたものが鋼なんだけど、普通の鋼とは違って、製作段階で錬金術師がアクティブスキルで魔法を付与しているんだ。そうやって何日も掛けて金属を練り上げる。だから通常の鋼よりも硬度が高いのに粘りがあって刃こぼれしない金属に仕上がるだ。……でもこの魔法陣のような模様、これは普通のダマスカス鋼とは違うな……」

 僕たちがお喋りしながら品を眺めていると。

「たいした知識もねーのに、ずいぶんと語るな」

 子供のような声がして僕とノエルの視線は店のカウンターへ向く。
 そこには口をへの字に曲げ、こちらを睨む少女がいた。タンクトップにだぼだぼのスボンを履いていて、顔や肌はすすで所々黒く汚れている。

「ここのお店の子供かな?」

「お嬢ちゃん、アタイは子供扱いされるのが嫌いなんだ。 ん?お前、琉琉魔るるまのローター族か。こんなところで見掛けるとは珍しい」

「琉琉魔王国を知ってるんですか?あ、あれ?え?この子レベルが……」

 ノエル、気付いたか。そうこの子、この人は――。
 僕は少女を見詰める。

「その臙脂えんじ色の髪に尖った耳、まさか人の街に住まわれているとは思っていませんでした。……あなたはエルダードワーフですね」

 少女は僕を睨む。

「ふん!よく知っているな。如何にも、アタイはエルダードワーフだ」

 やはりそうか。
 エルダードワーフはハイエルフと同様、長寿の種族であり、【遺伝加護】という珍しい加護を持っている。

 幼い見た目だが、歳はかなり上だろう。それを裏付けるように僕のインテリジェンスが教えてくれる。この人のレベルは100を超えていると。

「誰の紹介でこの店に来た?」

「ハンラ商会の店主です」

「ああ、あの親父か」

 少女は不機嫌そうに答える。

「このナイフ、特殊魔法効果が付与エンチャントされているのですか?」

 僕は先程見ていた壁に掛かったナイフを指した。

「ああ、そうだ。〈斬鉄Lv14〉を付与してある。鋼の武器と斬り合えば、相手の武器を一刀両断できる代物だ」

 凄まじい効果だ。
 やはり武具制作においては最強の加護――。
 【HR魔導錬金術師】それがエルダードワーフの遺伝加護だ。

「凄い!凄いね、ゼツ君」

「ああ、凄い。流石エルダードワーフだ」

「ふふん!まぁそれ程でもないがな!」

 楽しそうに燥ぎながら店主を褒めるノエルに僕も同調すると、少女は平な胸を張り、鼻の下を指で擦って口元を緩ませた。

「因みに、この店にアダマンタイトやミスリルの武器はありますか?」

「ない!つか、まだお前達に売るとは決めてないぞっ!」

「えっと……、あの……、売ってくれないんですか?」

 不安げな表情でノエルが尋ねると。

「お前は……、レベル40といったところか……。よしお前には売ってやる。そっちのボウズには売らん。お前はなんだ?気持ち悪ぞ!」

 え?僕の見た目、気持ち悪いのか?それは少しショックだな……。

「ゼツ君は凄くかっこいいですよッ!! 顔だってイケメンだしッ!!」

 ノエル、そんなに大声で叫ばれると恥ずかしい。

「いや、そうじゃなくて。アタイはインテリジェンスが高い。んで、お前からスキルを感じないんだ。スキルのない加護なんて存在しないからな。化物でも見ているようで気持ち悪くてしょうがない」

「あ、そういうことか……。すみません。元に戻ります」

 僕はアクティブスキル〈皮かぶり〉を解除した。

「んん? ひっひえぇえええええええ!!化け物っ!!」

 少女が腰を抜かし膝を着いた。

「な、なんだ、お前ッ!? レ、レベル200超えてるぞ!?まさか魔王かッ!?余計気持ち悪いわ!」

「いや、魔王ではないですよ」

「…………」

 転んだ少女はカウンターに手を掛けて立ち上がり、額の汗を手で拭う。

「いやぁ、ビビったわ。 一昨日【SR勇者】がこの店に来てビビったけど、そいつより凄いのがいるとは……。長く生きるもんだな」

「ゆ、勇者!?本当ですか?」

「ん?本当だぞ」

 世界中で100年に一人誕生すると言われている【SR勇者】がこの街にいる!
 す、凄いな。生きているうちに勇者を見れるなら是非見てみたい。






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