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第20話〈皮かぶり〉
しおりを挟む翌朝――。
モンスターを警戒する必要がなくなり僕も少し眠った。
目覚めた僕はベットの端に座りステータス光を顕現させる。
■■■■■■■■■■■■■■
【MR無責任種付おじさん】
Lv 201
⑤HP 16047
⑤MP 16047
⑤ストロングス 16047
⑤アジリティ 16047
⑤インテリジェンス 16047
〈アクティブスキル〉
感度操作5倍、ガンシャ、種付操作、フェロモンLv2、モーニングコーヒー、散種、わからせ、皮かぶり
〈パッシブスキル〉
ゼツリンLv20、種強化Lv20、無責任
■■■■■■■■■■■■■■
新しいスキルを覚えている。〈皮かぶり〉か……。
経験値は前回の約7倍稼げた。レアリティが一つ上がると入手できる経験値が増えるようだが規則性がわからない。
ベッドに座った僕は隣で気持ちよさそうに眠る全裸のノエルを見詰める。そして、なんとなく彼女の頭を優しく撫でた。
久しぶりに屋根のある所で、しかもベットで寝れたから寝付きが良さそうだ。
昨日は本番が終わるとステータスも確認せずに一緒に寝てしまった。
ノエルと一緒にいると心が落ち着く。不思議な気分だ。彼女は僕を大切にしようとしてくれている。それが心地良いのかもしれない。
◇
早朝、僕達は冒険者ギルドに訪れた。
朝早い時間ということもあってギルドの中は依頼を受けて任務に赴く冒険者達でごった返していた。皆忙しそうで壁にかかった依頼を取ると、急ぎカウンターで受付を済ませ慌ただしく出掛けて行く。
受付に声を掛けると、登録用紙と万年筆を渡され記入するように言われた。僕達は隅の席に座り記入を始める。
「名前や年齢、出身国だけでなく加護とレベルも書くのか。下の注意書きに登録時にステータス光を確認すると書いてあるな」
「あの……私は名前しか書けないから他はゼツ君が、書いてくれない?」
ノエルは恥ずかしそうに自分の用紙を僕に渡してきた。
「わかった。 あ、そうだ、今度読み書きを教えようか?」
「うん! 教えて欲しい!」
向かいの席に座ったノエルは身を乗り出して目を輝かせる。
ノエルは読み書きが全くできないという訳ではなく一般的な単語は読めたりもする。だから本でも買って一緒に読めばある程度文字を理解できるようになると思う。
金が貯まって時間がある時に子供向けの本を探してみるか。
僕は先にノエルの用紙を書き終える。彼女の情報は全て正確に書いた。
次に自分の用紙に手を付ける。
「ノエル、僕の名前と加護は偽ろうと思う」
「ステータス光を確認するのにそんなことできるの?」
「まぁ見てて。アクティブスキル〈皮かぶり〉」
「あれ?ゼツ君から感じていた頼もしさがなくなった」
僕はステータス光を顕現させる。
■■■■■■■■■■■■■■
【R奇術師】
Lv 35
③HP 639
①MP 222
③ストロングス 639
①アジリティ 431
①インテリジェンス 222
〈アクティブスキル〉
**********
〈パッシブスキル〉
**********
■■■■■■■■■■■■■■
「ほら、こんな感じになるんだ」
「凄い……、レベルが下がってる」
アクティブスキル、パッシブスキルは使えないが、ステータスは【R奇術師】Lv35になった。
アクティブスキル〈皮かぶり〉は僕より低いレベルであれば他の加護の皮をかぶれるスキルだった。
Lv35にしたのはRというレアリティで、しかも僕の年齢で、Lv40以上は先ずありえないからだ。例えば風俗店のおばちゃんの年齢で【R魔法剣士】Lv41なら年齢の歳月、定期的に狩りを続けていれば到達でる。
しかし17歳で到達したとなると、かなり過酷なレベリングをしたことになる。Lv35でも高いくらいだが、ステータス光を偽れないノエルがLv40なので低く過ぎても逆におかしい。
それだけノエルが異常なのだが……。ノエルのレベルに関しては受付嬢に聞かれた時の言い訳を用意していあるから、それで押し切るしかない。
それと、この〈皮かぶり〉、このスキルの良いところは他人に警戒されないところだ。
僕の元のステータスは異常に高い。
インテリジェンスが高い者は相手の実力を測ることができる。
ノエルのように馴染み深い相手なら僕を頼もしく思うのかもしれないが、他人なら恐怖心を抱くはずだ。このギルドに入った時だって何人かは僕をチラチラ見て嫌悪感を顕にしていた。
「これは何て加護なの?」
「奇術師って加護だよ。幻影魔法と剣で戦う加護なんだ」
「それじゃゼツ君の加護とは似ていないね?私ゼツ君の加護は知らないけど……」
そうか、ノエルは字が読めないから、以前僕のステータス光を見ているけど加護の名前は知らないんだ。
「僕の加護は少し珍しい名前なんだ。取り敢えずこれ書いちゃうね」
「う、……うん」
ノエルが僕の加護に興味がありそうな顔をしていたから慌てて話しを流した。
僕は自分の加護を人に言いたくない。
この加護のせいで実家を追放され、奴隷時代には奴隷仲間に散々バカにされた。
最初は加護の名前なんて気にしていなかったが、レベルが全く上がらなかったこともあり、たくさんの人に貶され、からかわれ、笑い者になった。それがあって自分の加護名『無責任種付おじさん』を他人に話せなくなった。
ノエルも今までの連中と同じで僕をバカにするだろうか?
「名前はどうしようかな……」
名前の欄以外の記入を終えた僕は呟いた。
「ゼツ君って家名はあるの?」
「僕は奴隷商人に売られた時に家名を取られて、ただのゼツになったんだけど、元はゼツ・リンダナという名前なんだ」
「リンダナってリンダナ侯爵のリンダナ?」
侯爵家の元子息だったことはノエルに話していない。聞かれなかったし自分から話すことでもないからだ。
「まぁリンダナって姓はこのビッグベニス王国では珍しくない。だからゼツ・リンダナでもいいんだけど、……うーん、偽名か……これにするか……」
偽名を書き、登録用紙を埋め終えたところで、誰かに後ろから声を掛けられた。
「ゼツ坊ちゃ~ん、クスクスw」
僕は咄嗟に振り向く。
栗色の髪をポニーテールにてクスクスと笑みを浮かべた目付きの悪い女を見て僕は戦慄した。
「お、お前はっ! アナル!」
何故、コイツがここにいる!?
僕を奴隷商人に売った張本人。
リンダナ侯爵家騎士団長――、
アナル・ファック!!
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