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第13話 モンスター狩り
しおりを挟む下半身の大部分と両脚が吹き飛ばされ、動けなくなったワイルドボア。僕とノエルはソイツの近くへ歩み寄った。
ブフォ ブフォ ブフォ
まだ生きていて、口から湯気の様な息を吐き、こちらを睨み付けている。
ドンッ!
僕はそんなワイルドボアの顔を踏みつけストレングスで動きを封じた。
ノエルに噛み付く可能性があるからだ。
「ノエル、できるか?」
「うん……できる!」
彼女は真剣な顔で頷くと、ワイルドボアの前で両膝を地面に着け、両手で握ったナイフを高く振り被る。
「やッ!」――グサッ!
僕が抑え込んでいるワイルドボアの首にノエルがナイフを突き刺した。
だがワイルドボアはまだ生きていて、僕の足の裏でバタバタと暴れている。
「やッ!……んッ!……やッ!……えいッ!」
彼女は何度もワイルドボアの首にナイフを突き刺し、そして――。
ワイルドボアは黒い霧になって消えた。
「レベルが1上がったッ!!」
「ああ」
ノエルは驚きと喜びが入り混じった顔で僕を見詰め、それから飛び上がって大喜びした。
「やった!やったよ~!!嬉しいよぉ~!ゼツ君ッ~!!」
そして僕に抱き着いた。だから僕は彼女の髪を撫でる。
「よかったな」
「うん!ありがとう。ゼツ君、ありがとう」
ノエルは本当に嬉しそうだ。僕の顔もほころぶ。
誰でも最初はこうなる。
僕と同年代の奴隷が初めてレベルアップして飛び上がるほど大喜びする姿を何度も見てきた。
僕だけはいくらモンスターを殺してもレベルが上がらなくて、そんな大喜びする連中をいつも暗い感情で見ていた。
そうか……、僕はノエルに自分を重ねていたんだ。17歳までの5年間、ずっとレベル0だった僕と15歳になっても無加護でレベル0だったノエルを。だからノエルがレベルアップできて僕も嬉しいのか。
経験値は最後にモンスターの命を奪った者に入る。この場合だと経験値は全てノエルに入り僕には一切入らない。
僕はモンスターを倒しても経験値を稼げない。
今後の冒険では僕がモンスターを瀕死状態にしてノエルがとどめを刺すやり方になるだろう。
その方法ならノエルがA級やS級クラスの強力なモンスターを狩ることもできる。効率良く経験値を稼げる。
僕は浮かれるノエルに微笑みながら言う。
「忘れない内にアレを探そう」
「うん!そうだね!」
僕達はワイルドボアが黒い霧になって四散した場所を探す。
「あった!」
そこには豆粒程の大きさの銀色の金属が落ちていた。 ――――銀である。
鉱山で鉄や銅を採掘できるが、銀や金、さらにレアな白金やオリファルコンは採取できない。それらはモンスターを討伐した時に入手できる。
そして、銀や金を鋳潰して貨幣、装飾品が作られる。だからモンスターを倒せるだけで金を稼ぐことができるのだ。
高価な金や白金は高ランクのモンスターだけが落とす。並の戦士では倒せないが、今の僕なら単独でもある程度狩れる筈だ。
「銀は街に着いたら換金しよう。取り分はさっきも話したけど折半でいいよね?」
「本当にいいの?私何もしてないけど?」
「まぁレベルが上がればノエルも単独で狩れるようになるから、それまでは僕が傍にいて君のレベル上げを手伝うよ」
「ゼツ君………………、うっ……」
ノエルは宝石のような蒼い瞳に涙を浮かべた。
あれ?何か不味いこと言ったかな?
「わたし、がんばるから!」
「ああ、一緒に頑張ろう!今日はモンスターと遭遇したら全部倒そう!」
「うん!」
ノエルは笑顔で頷く。
僕も風俗店に行く為に金を稼ぐ必要がある。頑張るぞ!
それから夜まで狩りを続けた。
基本的に〈ガンシャ〉で敵の動きを止めてノエルがとどめを刺す、という作業の繰り返しだった。
今日狩ったモンスターは――。
ワイルドボア〈F級〉
ワイルドウルフ〈F級〉
レッドボア〈E級〉
ブラックベア〈C級〉
今日一日でノエルのレベルは14まで上がった。
普通レベル10前後で狩りをする場合、G級かF級のモンスターが妥当なのだが、E級のレッドボアの群れ20体と遭遇できたのと、C級のブラックベアを5体狩れたのが大きかった。
前半はナイフを突き刺す作業が力仕事でかなりきつそうにしていたノエルだが、レベルが上るに連れてストレングスが上昇し、後半はモンスターにさくさくナイフを刺していた。
それとブラックベア5体から合わせて金貨1枚相当の金が採取できたのが良かった。
これだけあれば街に着いてそれなりの宿に連泊できる。武器、防具や旅道具も揃えられる。
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