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第12話〈種強化Lv1〉
しおりを挟むアエロリット……、何故だろう。懐かしい響きだ。
しかし何だったんだ? あの子は――。
アクティブスキル〈加護の儀〉ができるということは、神官クラスの上位加護なのだろうか?
【HN神官】の最も上位クラスだと【HR大聖女】だけど、〈神の隠蔽〉というアクティブスキルは聞いたことがない。
まぁただ〈加護の儀〉ができたのはよかった。
人の身体の成長や性格など後天的なこととは異なり、加護は先天的で生まれる前から定められている。といのがこの世界の常識だ。だから何処で〈加護の儀〉を受けても結果は変わらない。
僕に掛けられた〈神の隠蔽〉という魔法は体に悪影響はないようだし。教会に行く手間が省けたと思えば、まぁよいか……。
「ノエル、ステータスを見てみよう」
「うん!」
ノエルはステータス光を顕現させる。
■■■■■■■■■■■■■■
【HNレッサーデーモン】
Lv 0
HP 10
MP 10
ストロングス 10
アジリティ 10
インテリジェンス 10
■■■■■■■■■■■■■■
【HNレッサーデーモン】、やはり聞いたことがない加護だ。
ただ稀にユニークな加護の持ちが誕生することもある。僕の加護もそうだが、ノエルの加護もきっとそのような類なのだろう。
あの女は狙ってこの加護を出したような言い方をしていたが、そんなことできるはずがない。
「成長率やスキルはレベルが上がってみないとわからないな。街へ行く前にモンスターを狩ってみよう。最初はすぐにレベルが上がる」
「で、でも私、モンスターと戦えないよ?」
「それは問題ない。僕に任せて」
「……うん、わかった」
顔をこわばらせるノエルに微笑み掛けると、彼女も微笑んで頷いた。
「先を急ごうか」
「ゼツ君」
「ん?」
「手、繋いでもいい?」
「ああ、もちろん」
僕が手を差し出すと彼女はその手を取る。
華奢なノエルの手は枯れ枝のように細く、しかし暖かかった。僕達は並んで歩き出す。
人は加護を授かると存在自体がクラスアップすると考えられている。
もしかしたらノエルともう一度やれば僕のレベルが上がるかもしれない。
ノエルも本番好きそうだし、頼めばやらせてくれるかな……?
断られたら金を貯めて……。昨日はタダで一晩中やらせてくれたけど、やっぱり通常は50分銀貨4枚なのだろうか?
今夜ノエルに聞いてみるか。
僕はノエルの手を握りしめながらそんなことを考えていた。
暫く進むと――。
林の中からワイルドボアが3頭現れた。距離は約100メートル。
ワイルドボアは体高1メートル程のイノシシで全身に黒い瘴気を帯びている。
この瘴気を纏っているものをモンスターと言い、纏っていないものを動物と言う。
「ノエル、倒してみよう。レベルアップのついでに金も稼げる」
「わかった。やってみる!」
モンスターが現れた時の対処法は先程彼女に説明していた。
僕はカバンからナイフを取り出しノエルに手渡す。ノエルは緊張した面持ちでそれを受け取った。
「アクティブスキル〈ガンシャ〉」
僕の手に黒光りしたナスのようなモノが顕現する。それをワイルドボアに向けて構えた。
「種転送、〈種強化Lv10〉」
僕の体内から転送された強化された種が〈ガンシャ〉に装填される。
僕は狙いを定めて撃つ!
ドピュンッッッ!!!
パンッッッ!!!
「あれ?」
「え?」
闘気を纏った種がワイルドボアに当たった瞬間、ワイルドボアは風船が割れる様に爆発し消滅した。
手足だけを弾き飛ばす予定だったのに……。
「凄い……一発で倒しちゃった……」
「成る程」
〈種強化Lv10〉だと強すぎるんだ。ならもう一度。
ワイルドボアはこちらに気付き突進してくる。
ノエルは僕の服の裾を掴み後ろに隠れた。
「種転送、〈種強化Lv5〉」
ドピュッ!!
パンッ!
「ダメか!」
これでもワイルドボアは爆弾してしまう。 もう一度だ。
「種転送、〈種強化Lv1〉」
残り一頭になってもこちらに向かって突進してくるワイルドボアに僕は〈ガンシャ〉を向ける。
距離は約30メートル。
ステータス、アジリティが動体視力を強化し動きを見切る。インテリジェンスが精神を落ち着かせ、相手の動きを先読みする。ストレングスが〈ガンシャ〉を固定しブレを無くす。
僕は狙いを定めて〈ガンシャ〉を撃った。
ピュッ!
ブォオオオオオオオ!
種はワイルドボアの下半身に当たり、脚二本を弾き飛ばした。
ヤツは突進してきた勢いのまま砂煙を上げて転がり、地面でもがく。もう立ち上がることはできない。
ワイルドボアはまだ生きているな。
「成功だ!」
僕がいくらモンスターを倒しても全く経験値は入らずレベルは上がらないが、ノエルは違う。
後はノエルにトドメを刺させる。
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