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第9話〈フェロモン〉〈感度操作〉

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 僕はノエルをおぶりながら夜の荒野を走る。もう3時間くらい走り続けている。

「ね、ねぇゼツ君、もの凄いスピードでずっと走り続けてるけど疲れないの?」

「大丈夫。ノエルは眠かったら寝ていいからな」

「なんか興奮しちゃって、全然眠くならないよ」

 パッシブスキル〈ゼツリンLv10〉はケガはもちろん疲労や眠気まで元の健康な状態に戻すスキル。
 そのお蔭で走りながら疲労は回復し眠る必要はなく僕は永遠に走り続けることができた。


 奴隷作業員の就寝時間になれば僕がいないことに気付くはずだ。だがしかし、捜索されるとしたら明日明け方だろう。
 昼間の街道は人通りがあるからこんな目立つ方法で移動はできない。だから今夜中に追ってこれないところまで移動する必要がある。

「そう言えば、私達はどこへ向かってるの?」

「オルフォンス公爵領のスクワードって街だよ。ここからは少し離れているけど大きな街だから冒険者ギルドはある筈だ」

「道わかるの?」

「まぁな」

「……ゼツ君、ほんと凄いね」

 殆どの奴隷は逃げ出しても街の場所がわからず荒野を彷徨い挙句、魔物に殺される。
 しかし侯爵家出身の僕の頭にはこのビッグベニス王国の地図が完璧に入っている。
 奴隷商人に売られ土木作業員として各地を転々とさせられるなかで、いつか逃げることを想定し常に現在地を把握していた。

「この調子なら明後日の朝には着くはずだ。街に着いたら先ず〈加護の儀〉を受けよう。せっかくモンスターを倒しても加護がないとレベルが上がらないからな」

「私……、お金持ってない」

「それなら心配ない。僕が払う」

 〈加護の儀〉は銅貨30枚が相場。今の手持ちでも払えるし、街へ行く途中モンスターを倒せば金を稼ぐことができる。

「…………ありがとう」

 おぶられ振り落とされないよう僕の首に腕を回しているノエル。その腕に力が入り僕をギュッと抱きしめる。

「どんな加護を貰えるかなぁ?」

「それは受けてみないとわからないよ」

「だね。ああ、凄く楽しみだよ。私も早くアクティブスキルやパッシブスキルを覚えたいわ」

「ははっ、気持ちはわかるよ」

 ノエルの気持ちは本当によく分かる。僕も加護を授かってから5年間レベル0のままだった。 だから早くスキルが使えるようになりたいとずっと考えていた。それがノエルのお蔭でようやくスキルを覚えることができた。
 あの時はどれだけ嬉しかったか――。

 走りながら自分のアクティブスキルを考察する。

〈ガンシャ〉はさっき試して効果はわかった。〈種付操作〉〈モーニングコーヒー〉も理解できる。

 あとは……、〈フェロモンLv1〉〈感度操作3倍〉か。 これは人に害を与えるスキルではなさそうだし、試しに使ってみるか。実際にどんな効果があるか確認すべきだ。

「ノエル、試したいスキルがあるんだけど使っていいか?」

「え?うん。 全然いいよ」

「じゃ先ずは――、アクティブスキル〈フェロモンLv1〉!」

 うーん、特に変わった様子はないな。


【ノエル視点】

 な、なにこれ?ゼツ君から凄くいい臭いがする。なんか……ゼツ君見てるだけでドキドキする。もっと触りたいし、触って欲しい。

「ちゅっ……ちゅっちゅっ」

 ゼツ君におぶられた私は彼の首筋にキスをしてしまった。

 もっとゼツ君にくっつきたい。
 気持ちが抑えられなくなってる。

「どうしたんだ、ノエル?」

「えっ!あ!ごめんなさい。……嫌だったよね」

「いや別に、全然問題ない」

 そ、そうなの?じゃぁもっとやってもいいのかな?

 私はゼツ君の首筋に唇と鼻を押し付けた。ゼツ君の香りが鼻を抜けて頭がくらくらする。
 おかしくなりそう……。

「レロ……ちゅっ、ちゅぱっちゅぱっ……レロレロ」

 気付けばゼツ君の首を舐めていた。

「お腹空いたのか?」

「ち、違うよ!」

 ああ、やだぁ!ゼツ君の首筋舐てしゃぶっちゃったよぉ!!恥ずかしい~。

「うーん、やっぱり効果がよくわからないなぁ ノエル、もう一つ試すね?」

「う、うん?」

「アクティブスキル〈感度操作3倍〉ッッ!!」

「あひゃんッ!!♡ んんん、んんん……」

 手で口を押えたけど声出ちゃう。
 走るゼツ君の背中にあそこがパコパコ当たって……ダメ、これダメなやつ、ヤバいよ!
 ゼツ君が走る振動で凄く擦れる、す、凄いよぉ~。

「ん……ゼ、んほっ♡……ゼツ君、止まって、 あひゃ……あひゃん、お、お願い……んっ、止まって!」


【ゼツ視点】

 僕は止まってノエルを岩に座らせた。
 ノエルの息が荒い顔も赤みを帯びている。
 さっきからずっと僕の首筋にスリスリしていたし……。 体調が悪いのだろうか?

「ノエル、大丈夫か?」

「ちゅっ」

 心配して顔を近付けたら、ノエルが僕の首に腕を回してきてキスされた。

「んっ、ちゅっ、んっはぁ、ちゅっ……んっ、んんんん」

 ノエルは僕の口に舌を突っ込んで、僕の舌に激しく絡ませる。夢中になって僕の口内と唾液を貪ってくる。

「ぷはっ、ノ、ノエル?」

 彼女の整った美しく綺麗な顔はとろっとろにとろけ、だらしなく崩れていた。蒼い瞳の真ん中がハートになっている。

「はぁ、はぁ、ぜちゅきゅん……おねがい…はぁ、はぁ、わたし、もう……ムリぃ~ ちゅっ……くちゅっ」

 僕はノエルに押し倒されてしまった。




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