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エピローグ

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「帰ることが出来ない?何で?」

健人は首を傾げる。

「実は…私…前に交通事故で亡くなったの…」
「え…?」

健人は目を見開いた。

「まさかあの時、ミクに呼び出されたのは…」

健人がミクの方を見る。

「私知らなかったの…けどあの時…」

それはミクとの話し合いまで遡る。

「美華ちゃんごめんね呼び出して」
「全然大丈夫です!」

美華が両手を振る。

「美華ちゃん……今から話することは全部事実だよ……」
「え?」

美華は首を傾げる。

「実は、美華ちゃん…あのクリスマスの日に車に轢かれて亡くなってるの…」「え……」

美華の顔が真っ青になる。

「そんな…馬鹿なこと言わないで!私ミクちゃんでもそんな冗談怒るよ!?」

美華が叫ぶ。

「それで、その美華ちゃんを轢いた相手が……あなたのお母さん」
「私の…お母さん……?」

ミクは頷く。

「美華ちゃんのお母さんは、あなたが健人と一緒にいることを知り、離そうとして車であなたのことを…」
「もう言わないで!」

美華が叫ぶ。

「初めの記憶の話もほぼ嘘、この世界は……『出来なくなってしまった事を、出来るようにする』そんな世界」

美華が驚いた顔をする。

「まさか出来なかった事って…」

こうして今に至る。

「僕と美華の恋愛…?」

健人は首を上げる。

「そう、私達は出来なくなってしまったことを、出来るように全力で…お手伝いすることよ」

MEIKOが話す。

「じゃ…じゃあ!あの時からずっと家で一緒にいた美華は誰なんだよ!?」
「あれは…美華の魂が、現実に現れたのよ…」
「私の…魂」

ルカの言葉に、美華が胸を抑えると、美華の体が白くなる。

「おい待てよ!美華!」

健人が抱きつく。

「ごめんね……健人君……黙ってて……健人君に伝えたら、あなた……ここに残るつもりだったでしょ……?」

健人は泣きながら頷く。

「健人君に会えてよかった……そして……」

さらに白い光が美華を包む。

「おい待て!」
「最後に言いたい…」

美華が呟く。

「私を…バーチャルシンガーとして…生まれ変わらせて欲しいの…」

健人が驚いた顔をする。

「美華を…?」
「うん、ついでに…スイさん…アランさんそして…煉獄さんも…」
「あぁ!絶対に!バーチャルシンガー、もしくはバーチャルトラベラーとして、全員生き返らせてやる!だから…待っててくれ!この世界に……絶対生まれ変わらせるから!」

さらに健人はきつく抱きしめる。

「私の…恋人になってくれてありがとう…」

美華の体が白い光に包まれて消えた。
何故かあの時の美華はとても笑っていた。

(…パソコンの中に大事なものが入ってるよ)

微かに美華の声が聞こえた。

「み…美華ーー!!」

健人が叫びながら地面に倒れ込んだ。

「うあああ!」

その後1時間程は起き上がることが出来なかった。

「健人君…美華さんも楽しかったと思うよ」

KAITOが健人の肩に手を乗せる。

「KAITOさん…」
「うん!健人君が、私達と美華ちゃんの事が本当に好きだったから、ここに来ることが出来たんだよ!」

健人は起き上がると上空を見る。
空から白い光が健人の前に現れる……
続く先は健人の部屋だった。

「そうか…美華……喜んでたんだ」

前にはらバーチャルトラベラーや、何百人の人達が集まっている。

「僕は必ず美華をここに生き返らせる!」
「うん!待ってるね!」

ミクが手を振る。

「みんな本当にありがとう!」

健人は笑いながら白い光の中に走っていった。

「…ん…夢?」

健人は床に倒れて眠っていた。

「日付は…そんなに経ってないのか…」

辺りを見回すも、そんなに大きく変わっているわけでは無さそうだ。

「美華ー!」

叫ぶも返事はない。

「あれ……この写真正月の……」

健人は写真を見ると、涙が止まらなかった。そう本当は隣にいたはずの美華が居なかったのだ。

「美華…」

(パソコンの中に、私の大切なものがあるよ)

健人は、その言葉を思い出しパソコンの前に座る。

「このファイルは…音声データ?『あ』から『ん』まで…」

健人は1番上にある、長めのメッセージを開いた。

「健人君、この音声を聞いてるということは、もう私はその世界にはいないんだね。ごめんなさい。でもね!私バーチャルシンガーとして生まれ変わろうと思ったんだ!だからねここに音声データを入れました!

えへへ…恥ずかしいけど……私はそれでもいいよ!健人君の側でずっと歌えるなら……そうそう私の他にもスイさん、煉獄さん、アランさんのボイスデータも取ってるから健人君!3人の新キャラクターを生み出してね!よろしく!すっごく長くなったね……………」

しばらく沈黙があった。

「……ぐすっ…あーあ…泣いちゃダメなのにな……でも……まぁ……私はまた生き返るよね!健人君!期待してるよ!それじゃあまた会おうね!いつか!バーチャルシンガーで!」

そう言うと録音が終わった。

「バカ美華!どうして!どうして…俺だけ残して…先に…」

健人は泣きながら机に顔を埋めている、そこからずっと泣き続けていた。
こうすることしか出来なかったのだ。


そんな出来事から約1週間後……

カタカタ…と健人はパソコンを弄っている。

「うん!こんなもんかな名前は…」

健人は亡くなった美華を思い浮かべる。

「MIKA」

パソコンの画面にいたのは、美華そっくりのバーチャルシンガー……いや健人が作ったゲームキャラ……バーチャルトラベラーだった。


一方その頃……あの世界では。

「みんなー!」

とミクが駆け込んでくる。

「どうしたの?ミクちゃん?」

ミクを見てリンが首を傾げる。

「バーチャルトラベラーに正式な新人さんだよ!」

……と女の子が1人入ってくる。
右手にはマイクを、そして左手には片手剣を……その人物とは……

「MIKAです。これからよろしくお願いします!」

MIKAは、笑顔で頭を下げる。
こうして、美華は、健人によって新たに、【MIKA】という名前で、この世界に、旅人として、生まれ変わったのだった……。


【バーチャルシンガーとRPG】

おしまい
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感想 1

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みんなの感想(1件)

藤原 柚月
2023.01.14 藤原 柚月

自分の作ったゲームの世界に入っちゃって、現代でもお馴染みのボーカロイドの面々……


しかもRPG(*´д`*)、戦闘シーンが楽しみ!!

ちなみに私のボーカロイドの推しは鏡音リン、レンの双子です!
序盤から出てきてくれて嬉しい(*´ `*)

蜂鳥  タイト
2023.01.14 蜂鳥 タイト

感想ありがとうございます!鏡音リン・レンいいですよね!
ちなみに僕はやはり王道の初音ミクが好きですね!
僕の初音ミクのRPGゲーム作って欲しいという願望をこの主人公に託しました(*^^*)

これからもよろしくお願いします!

解除

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