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五話目 就労支援施設A型に電話をしてみた

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 〇できることをやってみた

 二度目の精神科への受診から、病院に頼っているだけでは駄目だと気づいた私は、自分なりに動いてみることにした。

 近隣にある就労支援A型の事業所と仕事内容を調べ、ひとまず歩いて実際にその場所に行ってみる。

 車の免許を持っていないので徒歩だが、三十分圏内なら行けるだろうと感じた。

 そしてその翌日、実際にその事業所へ電話をかけてみることにした。

 質問内容は障がい者手帳が無くても利用者として働くことができるのかということだったが、結論は『No』だった。

 電話に出たのは穏やかな声の女性で、彼女は「どうしたらいいかなぁ」少し考えてから、「市役所へ行って相談員を付けてもらってください」とアドバイスをくれた。

 さらに翌日、私は市役所へ行くことにした。


 〇市役所の福祉課へ

 案内板を頼りに福祉課へ行き、職員の人に「就労支援について」と要件を伝えると、椅子に座るよう促された。

 少し待っていると初老の男性がアクリル板越しに座って、私の素性を調べるために書類などを書くように言われて色々質問される。

 精神科の遍歴や学歴、病院名と主治医の名前を聞かれ少し戸惑ったが、幸いにもお薬手帳を持っていたのでおおよそのことは答えられた。

 話を聞いていくと、どうやら就労支援を受けるためには条件が必要なようだった。

 私の場合、精神科で診断書をもらって、それを再度市役所へ提出することで、『自立支援医療受給者証(精神通院医療)』という証明を発行してもらわなければならないらしい。

 そしてどうやら私はこの証明を過去の通院時に母が申請していたらしく、今は期限が切れているが申請していた実績があるとのことだった。

 二回目の受診で少しだけ主治医に苦手意識を持っている私は、診断書を書いてもらえるのか心配になりながらも、ひとまず言うだけ言ってみようと思いながら市役所を後にした。

 対応してくれた職員の人はとても丁寧な説明をしてくださった。おかげで私は緊張でしどろもどろになりながらも、なんとか事情を話したり、質問することができた。

 次に市役所へ行くのは、主治医から診断書をもらった時になる。

 
 〇できる範囲で生きていきたい

 緊張すると心臓が早くなったり、知らずに呼吸が浅くなっていることがあるが、その症状に気付いたら私は胸に手を当てて、意識的に深呼吸をすることにしている。

 胸に手を当てることで体が強張っていることを自覚し、薄くなった酸素を深呼吸で全身に送り込むのだ。

 漢方で動悸を緩和しているとはいえ、どうしてもドキドキしてしまうことはある。

 しかし、それも特性だと思っているし、そんな自分を薬でどうにかしてしまおうとは思わない。

 もちろん、薬が必要な人だっているかもしれない。けれど私は緊張しがちだったり、頭が混乱してしまう私でも、やれることがあると信じている。

 歩けるし、喋れるし、辛いときは辛いと伝える言葉を持っているし、相手の話を聞くことができる。

 今のところはそんなくらいかもしれないけれど、少しずつできることを増やしていきたい。

 子供の頃の私は周囲に味方がいないと感じていて孤独だったけど、今は何でも話せる相手と、自分も自分を大切にしようと思えるようになった環境があるから、昔とは違う。

 時々過去を恨みたくなったり、自分を貶してしまうこともあるけれど、それでも今が一番楽しいと思える瞬間が増えてきた。

 苦しむこと前提で生きるんじゃなくて、ちょっとがんばったら十分だと思えるような環境を、自分のために探してあげられたらと思う。

 とはいえ、まだまだ知らないことだらけだし、これからどんな課題が見つかるか分からない。

 だけどドラクエの冒険みたいに、酒場で情報を得たり目的地を一つ一つ決めながら、一歩ずつ変わっていく現状を楽しんでいきたい。

 せっかく今生きているから、自分と自分が大切にしたい人たちと一緒に楽しい記憶を作っていきたい。
 
 私が働きたいと思う動機は、そこにあるんだろうなと感じている。
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