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帝位・勇気を紡ぐ者
第20話 兄弟
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「5年ぶりかティーナ。再会早々悪いが、状況を説明してくれ」
ティーナに迫る枝を、レオンハルトは易々と受け止める。
「レオンハルト、兄様?」
「お前に兄と呼ばれるのは初めてじゃないか?」
「……レ、レオンハルト兄様あああ!」
涙のタガが外れたのか、ティーナは泣きじゃくる。死の恐怖からか、生き残った安心感からか。
「レオンハルト兄様! テオハルト兄様が!」
「そうか……もういい、わかった」
ティーナの必死ぶりから、あらかた状況を察するレオンハルト。そして、左手をティーナの頭に乗せ、優しく声とかける。
「よく頑張ったな」
「うぅ……うううぅううう」
レオンハルトの意外な優しさに、さらに涙を流すティーナ。涙するティーナに背を向ける形で振り返り、改て兄弟だったものに向き直る。
「さて、やんちゃな弟を叱りに行こう」
◆
(受け止めた!? 片手で!? あれが、レオンハルト・ライネルなのか?)
ケイシリア軍総大将となった男は、驚きを露わにする。しかし、
(強者の気配がまるでしない? あれを受け止めたのだから、実力者なのは間違いないだろうが……これが最後の希望なのか?)
レオンハルトに対して不安を露わにする。それもそのはず。今のレオンハルトは人間にも耐えられる程度の闘気しか放っていない。実力的には、オリービアたちよりも弱いように思える。
しかし、そんな他人の目をレオンハルトは気にするはずもなく、一歩また一歩と大樹へと歩き出した。
『ギ、ギギギギギギイイイイイイイイ』
大樹はレオンハルトがわかったのか、その他への攻撃をやめる。
本能がレオンハルトの危険性を訴えているのか、それとも元となっているテオハルトの意志なのか、大樹は全ての枝を集中させ、レオンハルトに攻撃を放つ。
(それは流石にまずい!)
ケイシリア軍の大将はそう思ったがーー
ーー漆道聖武術ーー魔禦ノ道・鎧
迫り来る全ての枝は、レオンハルトに迫る途端、横に逸れた。逸れた枝は全て地面に突き刺さり、周りへのダメージもない。
(外した? 全部が?)
否、レオンハルトが逸らしたのだ。
ーーーー
漆道聖武術ーー魔禦ノ道・鎧
漆道の鎧は、かつての陸跡の鎧と同じように、魔力の鎧を纏っているのことに違いはない。違いはないが、その広さはかつての比じゃない。
レオンハルトの皮膚から1m。それが今の鎧の範囲である。
そして、かつての鎧と違う点がもう一つ。魔法を打ち消すのではなく、逸らすことができる。
鎧の範囲内は全て重力魔法の制御内。魔力を帯びたものであれば、全て鎧の淵へと寄せられる。結果、レオンハルトの身に届くことはない。
そう、漆道聖武術はかつての陸跡魔闘術に、重力魔法を上乗せした今のレオンハルトにしかできない技である。
ーーーーー
地面に突き刺さった枝を、レオンハルトは一振りで全て断ち切る。振るわれた黒月は、空中で黒い半月を描く。
そして、レオンハルトはさらに進む。ゆっくりとした足取りで、一歩一歩踏みしめるように。その歩きに合わせて世界が鼓動しているかのようである。
もちろん、レオンハルトだって無為に時間を費やしているわけではない。味方の撤退を待っているのだ。
「退却! 退却!」
「レオンハルト様の攻撃に巻き込まれるぞ! 急げ!」
ライネル領の兵士たちは、巨大樹の様子が変わった時点でレオンハルトの参戦を予測した。そして、今まさに迅速に撤退を進めている。レオンハルトの邪魔をしないために。
そして、レオンハルトが進む道の上にいる兵士たちも、ただならぬ雰囲気を感じ取って、皆退避する。結果、レオンハルトと巨大樹を結ぶ直線上に、一兵たりともいなくなった。
「そろそろか。じゃあ、挨拶代わりにーー」
レオンハルトは、両手で黒月を握りしめて、右後ろに大きく引く。左足を軸に、黒月を構えている右側の足を後ろにひく。
そしてーー
ーー漆道聖武術ーー征戦ノ道・焔
途端、空間が歪む。黒月の穂を中心に、世界は大きく歪められる。
そのままレオンハルトは黒月を振り下ろす。届くはずがない。大樹との距離があまりにも遠い。だが、レオンハルトは黒月を振るう。
ただの一撃でも、レオンハルトが振るえば神速の一振りとなる。しかし、その刃はひどくゆっくりに見えた。あまりの重力に、時間すら歪められている気がした。
大樹とは距離があるはずなのに、まるですぐそばにいるかのような攻撃。
そして、ゆっくりすぎる一撃が振り抜かれる。その瞬間ーー
ーードッカン!
大樹がよろける。それもそのはず。なんせ、その巨体の3分の1が粉々に吹き飛ばされたのだから。
『ゴオオオオアアア!』
「「「なぁ!?」」」
天にも届こうとする大樹の体の3分の1を吹き飛ばす一撃。それによって天候すら変化する。まるで天が裂けたかのように、大樹の上空を起点に雲が一直線に割れていった。
ガラン、ガラン!
吹き荒れる上昇気流に、戦場を転がる鎧などが吹き飛ばされ、物音を立てる。
ーーーー
漆道聖武術ーー征戦ノ道・焔
鎧と同様、ベースは昔の焔と同じ。ただし、その一撃には重力魔法の真髄が載せられていた。
言ってしまえば、万有引力。
レオンハルトがかつて無意識にやっていたことではあるが、理解しているかどうかで使い方は大きく変わる。
万物に引力有り。
それを理解したレオンハルトは、武器の中心を起点に引力の渦を作り出す。それによって、空間すら歪められる。そして、引力の向きを定めることで、周囲を巻き込むことなく、特定の空間にのみ攻撃を放つことができる。
さらに、空間を歪めた副作用のようなものだが、元に戻った時の反発で途轍もない破壊力を生み出す。
修行中とはいえ、これを支えた蒼龍の凄さがうかがえる。
ーーーーー
『ゴゴゴゴゴゴオオオオオオ!』
「ふぅ~」
流石にレオンハルトといえど、これほどの一撃を放てば声の一つも漏れる。しかし、その表情にはまだまだ余裕が読み取れる。
周りは、突如やってくる突風に耐えながら、その場に立ち尽くして微動だにしないレオンハルトに驚きの視線を向ける。
(なんという破壊力!? あれは、本当に人間なのか?)
たった一撃で、今までに軍が与えたダメージを遥かに上回る。人間では討伐不可能と思われるほどの怪物を、一撃で追い込んだのだ。
(これなら、いける!)
皆がそう思った時だった。
『ギギギギギギギイイイイイ』
大樹の怪物は周囲から魔力をかき集めて、恐ろしいスピードで再生を繰り返す。その過程で、樹木同士が擦り合って不気味な軋み聲をあげる。
(馬鹿な! なんという再生力! もうほとんど戻っているではないか)
周りがそう驚きを露わにし、そして絶望に暮れる。しかし、レオンハルトは至って泰然としていた。表情をひとつ変えずに、大樹を眺めていた。
「魔力で再生するか。なるほど、魔力体というわけか」
大樹は自分と同じ魔力体であることを悟ったレオンハルト。
そしてーー
「ならば、魔力を断てば再生はしないな」
ーー漆道聖武術ーー嚇威ノ道・覇
世界が止まる。否、レオンハルトを中心に引き寄せられる。
「綱引きといこうか」
ーーーーー
漆道聖武術ーー嚇威ノ道・覇
理屈は至極単純。漆道の中でも最も単純かもしれない。
自身の引力を強化し、空中を漂う魔力に指向性を与える。つまり、自身の方に引き寄せる。
普段はかつての覇と大して変わらないが、ここでは大樹の魔力吸収を抑える効果がある。
ーーーーー
レオンハルトを中心に世界が歪めれれている。そんな気がしてならない。
大樹の回復速度は目に見えて遅くなっている。しかし、周りの兵士たちはそんなことを気にしてはいられない。レオンハルトから目が離せないからである。
戦場にいる兵士たちの心に一つの言葉が浮かぶ。
ーー天上天下唯我独尊ーー
今、世界の中心はここにあるのだと、誰もが悟る。かのものを前にして表情一つすら変えることは許されない、そう錯覚するほどである。
当のレオンハルトはといえば、いつも通りの淡々とした表情に、正面から吹く風で靡く装束と黒い髪、遠くを見つめる冷淡の瞳。敵となるものをただ見つめるだけ。
次の瞬間、レオンハルトの姿がかき消える。
ーー漆道聖武術ーー瞬歩ノ道・凩
音すら置き去りに、レオンハルトは駆け出す。
ーーーーー
漆道聖武術ーー瞬歩ノ道・凩
速く、より速く、ただひたすら速さの極致を追い求めた結果。それが今の凩である。
魔力体になってから、様々能力が向上したレオンハルト。当然今の凩は昔の比じゃない。しかし、その速さの所以はそれだけではない。
進行方向の一寸先に、常に自分を引き寄せる力を生み出す。超常なテクニックだが、レオンハルトはそれをものにした。
今のレオンハルトはただ走っているのではない。引っ張られながら進んでいるのだ。
ーーーーー
(あれ? どこにいった?)
戦場にいる全ての兵士はレオンハルトに注目しているはずだが、レオンハルトが消えたことに気づいたものはいない。それほど、レオンハルトは速いのだ。
一直線に大樹へ向かって駆け出すレオンハルト。一瞬にして、距離を詰められる。
しかし、そのあまりの速さによって、小回りが聞かないのもまた事実。
「ん?」
違和感。足元から感じる違和感を、レオンハルトは見逃さなかった。とは言ったものの、時すでに遅しなのだが。
地下から巨大な根が姿を表す。その上には、ちょうどレオンハルトがいた。狙ってやっているのだろう。本能のままに暴れる怪物とはいえど、戦闘に関しての知恵は働くらしい。
根によって足場を奪われたレオンハルトは、そのむき出る根に足を下ろすしかない。しかし、待ってましたと言わんばかりに、大樹は根を高く持ち上げる。それこそ、自身のてっぺんに近いほどの高さである。
「むぅ!?」
常人ならすでに体が耐えきれず、はじて飛んでいるだろうが、レオンハルトにとってはなんともない。とはいえ、自身の命綱とも言える足場が相手の体というのは、どうも落ち着かない。
「仕方ない」
ーー漆道聖武術ーー鳴動ノ道・轟
足場となった根っこが、一瞬にして消し飛ぶ。
ーーーーー
漆道聖武術ーー鳴動ノ道・轟
超速移動する技、轟。かつてはそのあまりの力強さに、地面が穴だらかになることもあった。
しかし、逆にいえばその程度で済んでいたとも言える。
作用反作用の法則。
窪ませるほどの力を大地に与えれば、その分の力は自分も受けている事になる。かつてのレオンハルトの体は、その力に耐えていたが、それ以上の力は自傷に繋がりかねない。
ゆえに、超速移動といえど限界があった。
しかし、今のレオンハルトはそれ以上の力にも耐え得る。
自身の身に強力な重力をかけ、そして轟を使用する。それだけなら、力が強くなるだけで当然スピードは出ない。故に、溜まりに溜まった力が移動に使えるように、移動の瞬間に合わせて、魔法を解除する。
そうすると、大地を破壊するほどの力でレオンハルトは打ち出される。
ーーーーー
大樹の根は最も容易く破壊される。そして、レオンハルトは凩以上のスピードで大樹に突進することとなる。
空を飛ぶように、一直線に大樹の幹に直進する。足場もないため、軌道変更はほぼ不可能。予定された位置に着地するのが精一杯である。
そして、レオンハルトは大樹の幹に黒月を突き刺し、その上に登る。これで足場ができた。
「5年ぶりか、テオ」
そう話しかけるが、当然反応しない。それどころが、幹から新たに枝を生やしレオンハルトを攻撃する。足場が悪いが、レオンハルトは難なくかわす。上半身を狙った攻撃が多かったというのも原因の一つである。
しかし、それは囮で真の目的はレオンハルトの足元である。
「む?」
足に絡みつく枝に目をやると、そこには脈動する血管のような何かがあった。その脈動は次第に強くなり、そして次の瞬間ーー
ーーレオンハルトの足が弾け飛ぶ
「っ!!」
弾け飛んだ足から、鮮血が溢れる。
足を引っ張られる程度なら、レオンハルトはびくともしないが、さすがに足がなくなると立つことは不可能。そのまま体勢を崩し、落下を開始する。
その途中で黒月に捕まるが、誰がどう見ても絶体絶命のピンチである。
「レオ君!?」
「レオンハルト様!」
「レオ!」
「兄上!?」
遠くにいるはずのオリービアたちだが、レオンハルトのピンチを悟ったようだ。加勢しようと、再び大樹に向かって突進を開始する。
しかし、ピンチであるはずのレオンハルに動揺する様子は見られない。むしろ、冷静に分析をしていた。
「なるほど、嫉妬だけじゃなく、強欲の力もあるのか」
納得した様子で大樹を見上げる。
レオンハルトの足を奪った大樹はといえば、先ほど受けた傷の再生に勤しんだ。一部とはいえ、レオンハルトの体から魔力を奪ったのだ。再生する分の魔力は十分にある。
「再生か」
それを見たレオンハルトは小さくため息を溢す。
「それがお前の専売特許だと思うなよ」
ーー漆道聖武術ーー輪廻ノ道・甦
周囲から魔力が集い、足の再生が始まる。
ーーーーー
漆道聖武術ーー輪廻ノ道・甦
二度の死を経験したレオンハルトだからこそ気づけた、新たな道である。
この世は、廻っている。そのサイクルの中にいながら、そのサイクルから逸脱した存在。
今のレオンハルトを殺すには、一撃のもと全身を粉々にする以外に方法はない。
ーーーーー
「どうやら俺の方が回復速度が早いらしい」
そう言ったレオンハルトの足は、完全に回復していた。
「さて、終わりにしよう」
体を後ろにひき、黒月に捕まっている右手を起点に振り子のように体を揺らすレオンハルト。勢いをつけ、大樹の幹の奥深くに左手を突っ込む。
ーー漆道聖武術ーー抹消ノ道・虚
『ゴ、ごおおおおおおおおおおおおおおお』
大樹は、今まで一番大きな悲鳴をあげた。
ーーーーー
漆道聖武術ーー抹消ノ道・虚
引き寄せることばかりが、重力魔法ではない。重力を弱める。すなわち、引力を弱めることもまた得意分野である。
普通の人間の体に使用したところで、大した作用はない。しかし、大樹の体が魔力でできていることは確認済み。
ならば、その引力を弱めることで、内側から崩すことも容易。あとは、かつての虚のように魔力をぶつけて消すだけで、相手は勝手に自滅する。
ただし、この技が通用するのは陰魔力を利用する大罪魔法のみ。
ーーーーー
『ご、ゴゴゴゴ、ごおおお』
次第に弱まっていく悲鳴。それと同時に崩れていく体。レオンハルトが足場としている部分も崩れていくが、この程度の高さなら着地は楽勝である。
天にも昇ろうという大樹が崩れていくのだ。その景色はまさに壮観そのものだろう。
幹や枝の残骸が次々に大地を撃つ。轟音が鳴り響き、大地は揺れる。
その様子はまさに天変地異。それによってやっと我に返る兵士たち。そして、
「「「「「おおおおおおお!」」」」」」」
轟音をかき消す勢いで歓声を上げる兵士たち。
「勝った、勝ったああああ!」
「死ぬかと思った」
「よかった、よがったあ」
勝利に酔いしれるもの、生存に安堵するもの、安心で涙を流すもの。感情はさまざまだが、それら全ては正の感情である。
そして、ケイシリア軍の総大将となった男はーー
(勝った、勝ちやがった。討伐不能と思われる怪物を、たった一人で……あれがレオンハルト・ライネル。我らの、皇帝になる男か)
男は、上空から落下しているにもかかわらず、何一つ焦りを感じないレオンハルトに視線を向けながら、神話の見届け人かのような感情を走らせるのだった。
◆
大樹の根があった場所に、レオンハルトは徐に足を運んだ。何かあると期待したわけではない。ただ、なんとなく。
「っち、最後に見るのがあんたの顔かよ。っち、最悪だ」
しかし、そこには懐かしい声が響いていた。心臓には短剣が突き刺さり、皮膚のほとんどが樹皮と化した弟の姿が、そこにはあった。
皮膚はボロボロになって崩れている。もう、長くはないのだろう。
雲によって日の光が遮られているが、二人がいる場所だけに、わずかな日光が差し込まれる。それがどことなく神聖さを醸し出していた。
おかげでテオハルトの表情もよく見える。
「5年ぶりだな。テオ」
再会の言葉を送るレオンハルト。それ以外に何をいえばいいか分からないからだ。
「っち、どこまでも兄貴ぶるよな。お前は」
「兄だからな」
「ムカつく。それでいて強いのがまたムカつく」
「見ていたのか?」
「ああ、こいつの中でばっちり。とはいえ、自分でどうこうすることもできない……もどかしいよ」
「仕方ないさ。大罪は、それだけの力だから」
「……妹を、ティーナを助けてくれて、ありがとうな」
「俺の妹でもあるからな」
「……守ってやってくれ」
「当然だ。兄だからな」
「っち、どこまでもムカつくやろうだよ。あんたは」
体のほとんどが風化し、今にも崩れ落ちそうなテオハルト。しかし、その表情は清々しいものだった。
そんな中、何かを決心したかのように、テオハルトはレオンハルトを見つめる。
「一度しか言わねーからよく聞けよ、ばーか」
「……」
「……止めてくれて、ありがとう。兄さん」
「……兄、だからな」
「父さんと母さんにも謝らないと、あっちで……ティーナに伝えてほしい……みまもっ……るから……な……」
その言葉を最後に、テオハルトの体は完全に崩れ落ちた。突如吹き荒れる一陣の風によって、その遺灰はどこかへ運ばれる。
風の吹く先は、シュヴァルツァー領。家族一緒の元へ帰ったのだろう。
残されたのはレオンハルトただ一人。差し込まれる一筋の光が反射する。目もとを見せないように俯くレオンハルト。
しばらくたつと、いつも通りの顔でシュヴァルツァー領を見つめ、そして振り向く。するとそこにはオリービア、シリア、リンシア、シオンの姿があった。
「帰ろう」
「ああ」
わずかな日の光を背に、レオンハルトたちは帰路に着く。
ーーーーー
後書き
クライマックス!! まさかの7千字越え! 作者もびっくり
ためにためた漆道聖武術を一斉に大放出! 書いてて気持ちいい回でした。
感想のほどお待ちしております。
あと2話で4章を締めくくりますので、よろしくお願いします。
ティーナに迫る枝を、レオンハルトは易々と受け止める。
「レオンハルト、兄様?」
「お前に兄と呼ばれるのは初めてじゃないか?」
「……レ、レオンハルト兄様あああ!」
涙のタガが外れたのか、ティーナは泣きじゃくる。死の恐怖からか、生き残った安心感からか。
「レオンハルト兄様! テオハルト兄様が!」
「そうか……もういい、わかった」
ティーナの必死ぶりから、あらかた状況を察するレオンハルト。そして、左手をティーナの頭に乗せ、優しく声とかける。
「よく頑張ったな」
「うぅ……うううぅううう」
レオンハルトの意外な優しさに、さらに涙を流すティーナ。涙するティーナに背を向ける形で振り返り、改て兄弟だったものに向き直る。
「さて、やんちゃな弟を叱りに行こう」
◆
(受け止めた!? 片手で!? あれが、レオンハルト・ライネルなのか?)
ケイシリア軍総大将となった男は、驚きを露わにする。しかし、
(強者の気配がまるでしない? あれを受け止めたのだから、実力者なのは間違いないだろうが……これが最後の希望なのか?)
レオンハルトに対して不安を露わにする。それもそのはず。今のレオンハルトは人間にも耐えられる程度の闘気しか放っていない。実力的には、オリービアたちよりも弱いように思える。
しかし、そんな他人の目をレオンハルトは気にするはずもなく、一歩また一歩と大樹へと歩き出した。
『ギ、ギギギギギギイイイイイイイイ』
大樹はレオンハルトがわかったのか、その他への攻撃をやめる。
本能がレオンハルトの危険性を訴えているのか、それとも元となっているテオハルトの意志なのか、大樹は全ての枝を集中させ、レオンハルトに攻撃を放つ。
(それは流石にまずい!)
ケイシリア軍の大将はそう思ったがーー
ーー漆道聖武術ーー魔禦ノ道・鎧
迫り来る全ての枝は、レオンハルトに迫る途端、横に逸れた。逸れた枝は全て地面に突き刺さり、周りへのダメージもない。
(外した? 全部が?)
否、レオンハルトが逸らしたのだ。
ーーーー
漆道聖武術ーー魔禦ノ道・鎧
漆道の鎧は、かつての陸跡の鎧と同じように、魔力の鎧を纏っているのことに違いはない。違いはないが、その広さはかつての比じゃない。
レオンハルトの皮膚から1m。それが今の鎧の範囲である。
そして、かつての鎧と違う点がもう一つ。魔法を打ち消すのではなく、逸らすことができる。
鎧の範囲内は全て重力魔法の制御内。魔力を帯びたものであれば、全て鎧の淵へと寄せられる。結果、レオンハルトの身に届くことはない。
そう、漆道聖武術はかつての陸跡魔闘術に、重力魔法を上乗せした今のレオンハルトにしかできない技である。
ーーーーー
地面に突き刺さった枝を、レオンハルトは一振りで全て断ち切る。振るわれた黒月は、空中で黒い半月を描く。
そして、レオンハルトはさらに進む。ゆっくりとした足取りで、一歩一歩踏みしめるように。その歩きに合わせて世界が鼓動しているかのようである。
もちろん、レオンハルトだって無為に時間を費やしているわけではない。味方の撤退を待っているのだ。
「退却! 退却!」
「レオンハルト様の攻撃に巻き込まれるぞ! 急げ!」
ライネル領の兵士たちは、巨大樹の様子が変わった時点でレオンハルトの参戦を予測した。そして、今まさに迅速に撤退を進めている。レオンハルトの邪魔をしないために。
そして、レオンハルトが進む道の上にいる兵士たちも、ただならぬ雰囲気を感じ取って、皆退避する。結果、レオンハルトと巨大樹を結ぶ直線上に、一兵たりともいなくなった。
「そろそろか。じゃあ、挨拶代わりにーー」
レオンハルトは、両手で黒月を握りしめて、右後ろに大きく引く。左足を軸に、黒月を構えている右側の足を後ろにひく。
そしてーー
ーー漆道聖武術ーー征戦ノ道・焔
途端、空間が歪む。黒月の穂を中心に、世界は大きく歪められる。
そのままレオンハルトは黒月を振り下ろす。届くはずがない。大樹との距離があまりにも遠い。だが、レオンハルトは黒月を振るう。
ただの一撃でも、レオンハルトが振るえば神速の一振りとなる。しかし、その刃はひどくゆっくりに見えた。あまりの重力に、時間すら歪められている気がした。
大樹とは距離があるはずなのに、まるですぐそばにいるかのような攻撃。
そして、ゆっくりすぎる一撃が振り抜かれる。その瞬間ーー
ーードッカン!
大樹がよろける。それもそのはず。なんせ、その巨体の3分の1が粉々に吹き飛ばされたのだから。
『ゴオオオオアアア!』
「「「なぁ!?」」」
天にも届こうとする大樹の体の3分の1を吹き飛ばす一撃。それによって天候すら変化する。まるで天が裂けたかのように、大樹の上空を起点に雲が一直線に割れていった。
ガラン、ガラン!
吹き荒れる上昇気流に、戦場を転がる鎧などが吹き飛ばされ、物音を立てる。
ーーーー
漆道聖武術ーー征戦ノ道・焔
鎧と同様、ベースは昔の焔と同じ。ただし、その一撃には重力魔法の真髄が載せられていた。
言ってしまえば、万有引力。
レオンハルトがかつて無意識にやっていたことではあるが、理解しているかどうかで使い方は大きく変わる。
万物に引力有り。
それを理解したレオンハルトは、武器の中心を起点に引力の渦を作り出す。それによって、空間すら歪められる。そして、引力の向きを定めることで、周囲を巻き込むことなく、特定の空間にのみ攻撃を放つことができる。
さらに、空間を歪めた副作用のようなものだが、元に戻った時の反発で途轍もない破壊力を生み出す。
修行中とはいえ、これを支えた蒼龍の凄さがうかがえる。
ーーーーー
『ゴゴゴゴゴゴオオオオオオ!』
「ふぅ~」
流石にレオンハルトといえど、これほどの一撃を放てば声の一つも漏れる。しかし、その表情にはまだまだ余裕が読み取れる。
周りは、突如やってくる突風に耐えながら、その場に立ち尽くして微動だにしないレオンハルトに驚きの視線を向ける。
(なんという破壊力!? あれは、本当に人間なのか?)
たった一撃で、今までに軍が与えたダメージを遥かに上回る。人間では討伐不可能と思われるほどの怪物を、一撃で追い込んだのだ。
(これなら、いける!)
皆がそう思った時だった。
『ギギギギギギギイイイイイ』
大樹の怪物は周囲から魔力をかき集めて、恐ろしいスピードで再生を繰り返す。その過程で、樹木同士が擦り合って不気味な軋み聲をあげる。
(馬鹿な! なんという再生力! もうほとんど戻っているではないか)
周りがそう驚きを露わにし、そして絶望に暮れる。しかし、レオンハルトは至って泰然としていた。表情をひとつ変えずに、大樹を眺めていた。
「魔力で再生するか。なるほど、魔力体というわけか」
大樹は自分と同じ魔力体であることを悟ったレオンハルト。
そしてーー
「ならば、魔力を断てば再生はしないな」
ーー漆道聖武術ーー嚇威ノ道・覇
世界が止まる。否、レオンハルトを中心に引き寄せられる。
「綱引きといこうか」
ーーーーー
漆道聖武術ーー嚇威ノ道・覇
理屈は至極単純。漆道の中でも最も単純かもしれない。
自身の引力を強化し、空中を漂う魔力に指向性を与える。つまり、自身の方に引き寄せる。
普段はかつての覇と大して変わらないが、ここでは大樹の魔力吸収を抑える効果がある。
ーーーーー
レオンハルトを中心に世界が歪めれれている。そんな気がしてならない。
大樹の回復速度は目に見えて遅くなっている。しかし、周りの兵士たちはそんなことを気にしてはいられない。レオンハルトから目が離せないからである。
戦場にいる兵士たちの心に一つの言葉が浮かぶ。
ーー天上天下唯我独尊ーー
今、世界の中心はここにあるのだと、誰もが悟る。かのものを前にして表情一つすら変えることは許されない、そう錯覚するほどである。
当のレオンハルトはといえば、いつも通りの淡々とした表情に、正面から吹く風で靡く装束と黒い髪、遠くを見つめる冷淡の瞳。敵となるものをただ見つめるだけ。
次の瞬間、レオンハルトの姿がかき消える。
ーー漆道聖武術ーー瞬歩ノ道・凩
音すら置き去りに、レオンハルトは駆け出す。
ーーーーー
漆道聖武術ーー瞬歩ノ道・凩
速く、より速く、ただひたすら速さの極致を追い求めた結果。それが今の凩である。
魔力体になってから、様々能力が向上したレオンハルト。当然今の凩は昔の比じゃない。しかし、その速さの所以はそれだけではない。
進行方向の一寸先に、常に自分を引き寄せる力を生み出す。超常なテクニックだが、レオンハルトはそれをものにした。
今のレオンハルトはただ走っているのではない。引っ張られながら進んでいるのだ。
ーーーーー
(あれ? どこにいった?)
戦場にいる全ての兵士はレオンハルトに注目しているはずだが、レオンハルトが消えたことに気づいたものはいない。それほど、レオンハルトは速いのだ。
一直線に大樹へ向かって駆け出すレオンハルト。一瞬にして、距離を詰められる。
しかし、そのあまりの速さによって、小回りが聞かないのもまた事実。
「ん?」
違和感。足元から感じる違和感を、レオンハルトは見逃さなかった。とは言ったものの、時すでに遅しなのだが。
地下から巨大な根が姿を表す。その上には、ちょうどレオンハルトがいた。狙ってやっているのだろう。本能のままに暴れる怪物とはいえど、戦闘に関しての知恵は働くらしい。
根によって足場を奪われたレオンハルトは、そのむき出る根に足を下ろすしかない。しかし、待ってましたと言わんばかりに、大樹は根を高く持ち上げる。それこそ、自身のてっぺんに近いほどの高さである。
「むぅ!?」
常人ならすでに体が耐えきれず、はじて飛んでいるだろうが、レオンハルトにとってはなんともない。とはいえ、自身の命綱とも言える足場が相手の体というのは、どうも落ち着かない。
「仕方ない」
ーー漆道聖武術ーー鳴動ノ道・轟
足場となった根っこが、一瞬にして消し飛ぶ。
ーーーーー
漆道聖武術ーー鳴動ノ道・轟
超速移動する技、轟。かつてはそのあまりの力強さに、地面が穴だらかになることもあった。
しかし、逆にいえばその程度で済んでいたとも言える。
作用反作用の法則。
窪ませるほどの力を大地に与えれば、その分の力は自分も受けている事になる。かつてのレオンハルトの体は、その力に耐えていたが、それ以上の力は自傷に繋がりかねない。
ゆえに、超速移動といえど限界があった。
しかし、今のレオンハルトはそれ以上の力にも耐え得る。
自身の身に強力な重力をかけ、そして轟を使用する。それだけなら、力が強くなるだけで当然スピードは出ない。故に、溜まりに溜まった力が移動に使えるように、移動の瞬間に合わせて、魔法を解除する。
そうすると、大地を破壊するほどの力でレオンハルトは打ち出される。
ーーーーー
大樹の根は最も容易く破壊される。そして、レオンハルトは凩以上のスピードで大樹に突進することとなる。
空を飛ぶように、一直線に大樹の幹に直進する。足場もないため、軌道変更はほぼ不可能。予定された位置に着地するのが精一杯である。
そして、レオンハルトは大樹の幹に黒月を突き刺し、その上に登る。これで足場ができた。
「5年ぶりか、テオ」
そう話しかけるが、当然反応しない。それどころが、幹から新たに枝を生やしレオンハルトを攻撃する。足場が悪いが、レオンハルトは難なくかわす。上半身を狙った攻撃が多かったというのも原因の一つである。
しかし、それは囮で真の目的はレオンハルトの足元である。
「む?」
足に絡みつく枝に目をやると、そこには脈動する血管のような何かがあった。その脈動は次第に強くなり、そして次の瞬間ーー
ーーレオンハルトの足が弾け飛ぶ
「っ!!」
弾け飛んだ足から、鮮血が溢れる。
足を引っ張られる程度なら、レオンハルトはびくともしないが、さすがに足がなくなると立つことは不可能。そのまま体勢を崩し、落下を開始する。
その途中で黒月に捕まるが、誰がどう見ても絶体絶命のピンチである。
「レオ君!?」
「レオンハルト様!」
「レオ!」
「兄上!?」
遠くにいるはずのオリービアたちだが、レオンハルトのピンチを悟ったようだ。加勢しようと、再び大樹に向かって突進を開始する。
しかし、ピンチであるはずのレオンハルに動揺する様子は見られない。むしろ、冷静に分析をしていた。
「なるほど、嫉妬だけじゃなく、強欲の力もあるのか」
納得した様子で大樹を見上げる。
レオンハルトの足を奪った大樹はといえば、先ほど受けた傷の再生に勤しんだ。一部とはいえ、レオンハルトの体から魔力を奪ったのだ。再生する分の魔力は十分にある。
「再生か」
それを見たレオンハルトは小さくため息を溢す。
「それがお前の専売特許だと思うなよ」
ーー漆道聖武術ーー輪廻ノ道・甦
周囲から魔力が集い、足の再生が始まる。
ーーーーー
漆道聖武術ーー輪廻ノ道・甦
二度の死を経験したレオンハルトだからこそ気づけた、新たな道である。
この世は、廻っている。そのサイクルの中にいながら、そのサイクルから逸脱した存在。
今のレオンハルトを殺すには、一撃のもと全身を粉々にする以外に方法はない。
ーーーーー
「どうやら俺の方が回復速度が早いらしい」
そう言ったレオンハルトの足は、完全に回復していた。
「さて、終わりにしよう」
体を後ろにひき、黒月に捕まっている右手を起点に振り子のように体を揺らすレオンハルト。勢いをつけ、大樹の幹の奥深くに左手を突っ込む。
ーー漆道聖武術ーー抹消ノ道・虚
『ゴ、ごおおおおおおおおおおおおおおお』
大樹は、今まで一番大きな悲鳴をあげた。
ーーーーー
漆道聖武術ーー抹消ノ道・虚
引き寄せることばかりが、重力魔法ではない。重力を弱める。すなわち、引力を弱めることもまた得意分野である。
普通の人間の体に使用したところで、大した作用はない。しかし、大樹の体が魔力でできていることは確認済み。
ならば、その引力を弱めることで、内側から崩すことも容易。あとは、かつての虚のように魔力をぶつけて消すだけで、相手は勝手に自滅する。
ただし、この技が通用するのは陰魔力を利用する大罪魔法のみ。
ーーーーー
『ご、ゴゴゴゴ、ごおおお』
次第に弱まっていく悲鳴。それと同時に崩れていく体。レオンハルトが足場としている部分も崩れていくが、この程度の高さなら着地は楽勝である。
天にも昇ろうという大樹が崩れていくのだ。その景色はまさに壮観そのものだろう。
幹や枝の残骸が次々に大地を撃つ。轟音が鳴り響き、大地は揺れる。
その様子はまさに天変地異。それによってやっと我に返る兵士たち。そして、
「「「「「おおおおおおお!」」」」」」」
轟音をかき消す勢いで歓声を上げる兵士たち。
「勝った、勝ったああああ!」
「死ぬかと思った」
「よかった、よがったあ」
勝利に酔いしれるもの、生存に安堵するもの、安心で涙を流すもの。感情はさまざまだが、それら全ては正の感情である。
そして、ケイシリア軍の総大将となった男はーー
(勝った、勝ちやがった。討伐不能と思われる怪物を、たった一人で……あれがレオンハルト・ライネル。我らの、皇帝になる男か)
男は、上空から落下しているにもかかわらず、何一つ焦りを感じないレオンハルトに視線を向けながら、神話の見届け人かのような感情を走らせるのだった。
◆
大樹の根があった場所に、レオンハルトは徐に足を運んだ。何かあると期待したわけではない。ただ、なんとなく。
「っち、最後に見るのがあんたの顔かよ。っち、最悪だ」
しかし、そこには懐かしい声が響いていた。心臓には短剣が突き刺さり、皮膚のほとんどが樹皮と化した弟の姿が、そこにはあった。
皮膚はボロボロになって崩れている。もう、長くはないのだろう。
雲によって日の光が遮られているが、二人がいる場所だけに、わずかな日光が差し込まれる。それがどことなく神聖さを醸し出していた。
おかげでテオハルトの表情もよく見える。
「5年ぶりだな。テオ」
再会の言葉を送るレオンハルト。それ以外に何をいえばいいか分からないからだ。
「っち、どこまでも兄貴ぶるよな。お前は」
「兄だからな」
「ムカつく。それでいて強いのがまたムカつく」
「見ていたのか?」
「ああ、こいつの中でばっちり。とはいえ、自分でどうこうすることもできない……もどかしいよ」
「仕方ないさ。大罪は、それだけの力だから」
「……妹を、ティーナを助けてくれて、ありがとうな」
「俺の妹でもあるからな」
「……守ってやってくれ」
「当然だ。兄だからな」
「っち、どこまでもムカつくやろうだよ。あんたは」
体のほとんどが風化し、今にも崩れ落ちそうなテオハルト。しかし、その表情は清々しいものだった。
そんな中、何かを決心したかのように、テオハルトはレオンハルトを見つめる。
「一度しか言わねーからよく聞けよ、ばーか」
「……」
「……止めてくれて、ありがとう。兄さん」
「……兄、だからな」
「父さんと母さんにも謝らないと、あっちで……ティーナに伝えてほしい……みまもっ……るから……な……」
その言葉を最後に、テオハルトの体は完全に崩れ落ちた。突如吹き荒れる一陣の風によって、その遺灰はどこかへ運ばれる。
風の吹く先は、シュヴァルツァー領。家族一緒の元へ帰ったのだろう。
残されたのはレオンハルトただ一人。差し込まれる一筋の光が反射する。目もとを見せないように俯くレオンハルト。
しばらくたつと、いつも通りの顔でシュヴァルツァー領を見つめ、そして振り向く。するとそこにはオリービア、シリア、リンシア、シオンの姿があった。
「帰ろう」
「ああ」
わずかな日の光を背に、レオンハルトたちは帰路に着く。
ーーーーー
後書き
クライマックス!! まさかの7千字越え! 作者もびっくり
ためにためた漆道聖武術を一斉に大放出! 書いてて気持ちいい回でした。
感想のほどお待ちしております。
あと2話で4章を締めくくりますので、よろしくお願いします。
応援ありがとうございます!
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