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学園・出逢いは唐突に
第5話 両雄、出会う
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2月も終わりを迎え、3月がやってくる。
この日、レオンハルトは学院にやってきていた。理由は無論学院の合格発表があるからだ。
「えーっと、1729はっと」
上から受験番号を辿っていくと、そこには1729番とレオンハルトの名前があった。
とりあえず、合格はできたということで、レオンハルトは一息つく。
ただし、気になることが一点だけあった。
ーーーーー
受験番号1729 レオンハルト・ライネル(20)
ーーーーー
そう書かれていた。
この括弧20というのは何を表しているのか、レオンハルトには見当がつかなかった。
他の人にはないその括弧。しかしよく見ると、ほんの僅かだが括弧がついている生徒も見られた。
疑問に思っていると、合格者発表のそばで、もう一つ表があった。それを見てレオンハルトは理解する。
……
……
20位 レオンハルト・ライネル 筆記79 実技100 総合179
……
なるほど、入学試験の順位か、とレオンハルトは納得する。
しかし、同時にしまったという思いの方がつよかった。目立たないために、わざわざ実技で自分に制約をかけていたのにまさかの100点。
これは、嫌な予感がするぞ、とレオンハルトは思っていた。
レオンハルトの勘はよく当たるのだ。
「ちょっと、あんた」
「何だ?」
言ったそばから絡まれてしまう。
レオンハルトが振り向くと、そこには真紅の髪をなびかせた美少女が、顔に怒気を浮かべながらレオンハルトを睨んでいた。
「何だじゃないわよ! あんた、レオンハルトでしょ! 何でここにいるのよ!?」
「ここに居るのだから学院に通うために決まってるだろ」
「そういうんじゃなくて! 私は、何で学院を追い出されたあんたがここに居るのかって聞いてんの!」
「俺は別に追い出されたわけではないが……そもそも見ず知らずの人間にそこまで言われることか?」
「見ず知らず!? あんたまさか私のことを忘れたの!? 私はカーティア! カーティア・ティルミスよ!」
レオンハルトは脳内検索をかける。
(カーティア・ティルミス。ティルミス侯爵家の令嬢か。昔茶会で会ったことがあるが、特に親交があったわけではない、か……待てよ? カーティア・ティルミス。どこかで見たような……)
レオンハルトは素早く記憶の捜索を行う。そして、ヒットしたのがーー
……
……
20位 レオンハルト・ライネル 筆記79 実技100 総合179
21位 カーティア・ティルミス 筆記87 実技90 総合177
……
(あー、なるほど。通りで)
「これはこれは、カーティア嬢であったか。昔よりもずっと美しくなってるから、一目でわからなかったよ」
「あんたに褒められても嬉しくないわよ! それより何でここに理由を答えなさい!」
ツンデレではなかった。
本気で嫌悪の表情を浮かべながら、さらにレオンハルトを睨む。ここまでくるとはレオンハルトも想定外である。
「理由と言われても、陛下の勅命としか……」
「そんなわけないでしょう! そもそも、何であんたみたいなのが私より上なわけ? 実技試験満点なんてオスカー以外に取れるわけないでしょ! あんた、また教官を脅して点数上げてもらったんじゃないの?」
「それこそまさかだ。それに筆記試験はともかく、実技試験で教官を脅すとか……5年前から高等部の教官は全て元騎士で統一されただろ? 陛下の勅命で。脅しでもしたら真っ先に陛下に話がいく」
「だったら何であんたが満点取れるのよ! オスカーにボッコボコにされたあんたが」
レオンハルトとカーティアの言い合いは次第に激しくなり、いや、レオンハルトはいつも通りだが、カーティアの方がどんどん激高になっていく。そこを聞きつけた他の生徒たちも集まってくる。
「何の騒ぎだ?」
「試験で不正があったらしいよ」
「はあ? 不正!? どこのどいつだよ」
「ほら、あそこにいる男」
「あいつ……レオンハルトじゃねーか!? 何でここに?」
「知ってるのか?」
「ああ、初等部では有名だぜ。公爵家の権限を揮まくってたクズ野郎だよ。ついた名が豚公子」
「うわぁ、かっこわる」
「じゃー不正の話も真実味を帯びてきたんじゃない?」
「あんなもん不正に決まってる! あいつが真っ当な手段で合格できるわけがねー」
「でも苗字が違うわよ。豚公子ってシュヴァルツァー家のでしょ? ライネルだって。どこ? そこ」
「そんなもん、どっかに無理やり婿入れしたに決まってんだろ! 噂によると公爵家を追い出されたらいいぜ」
「まじ? ダッサ」
段々騒ぎが大きくなってきた。レオンハルト好みではない展開だ。
何を言われようと特に気にしないが、このままでは人が集まりすぎて帰れなくなってしまう。そしたらまたシリアに怒られてしまう。
それでは困ると思ったレオンハルトは、
「いい加減にしろ。証拠もなしに人を疑うな。程度が知れるぞ」
「何ですって!?」
(あっ、これダメなやつだ。周りが見えなくなっている。正論を言われてキレるのはその典型だ)
何言っても無駄という雰囲気を感じ取ったレオンハルトは、仕方ないとばかりに最終手段に出る。
三十六計逃げるに如かず、だ。
(まさかここで使うとは……)
陸跡魔闘術ーー歩跡・凩
スムーズに全身を流れていた魔力を足に集める。脚力強化と共に、レオンハルトの足と地面の間に、薄い魔力の層ができあがる。
音立てずに、しかし目で追うもの困難はほど素早く、地面を滑るように滑らかに動き出す。
「あ! ちょっと! どこいったのよ!?」
カーティアがレオンハルトを認識する前に、レオンハルトはすでにその場にはいなかった。
ーーーーー
陸跡魔闘術ーー歩跡・凩
魔力を足に集めることで、脚力を強化。そして、足と地面の間に魔力の層を作ることで、動きが信じられないほど滑らかになる。
まるで氷の上を滑るかのように。しかし、その氷を自在に操ることができるため氷上を歩くときの特有の不安定さはない。
歩跡・凩はかつて、アレクサンダリア1世がとある刀の達人と対峙した時に生まれたもの。
その達人は、縮地という技法を使いアレクサンダリア1世を追い詰めていた。東洋の古武術に対応しきれないアレクサンダリア1世だが、命の危機が迫る中でもしっかり戦いを楽しんでいた。
敵の攻撃を間一髪でかわしながら、相手を観察する。なぜ、こうも速いのか、と。なぜ、そこでアレクサンダリア1世は気づく。達人の足は、まるで地面を滑るかのように進んでいるのだと。俗にいう摺り足である。
ならば、こちらもということでアレクサンダリア1世が行ったのが歩跡・凩。
通常ではありえない動きでも、魔力でカバーすれば可能となる。
その後も、その達人の動きが脳内にこべり付いたアレクサンダリア1世は縮地をも再現する。
縮地は、実際それほど速く動いているのではない。走るための予備動作を殆ど無にすることで、相手に速いと感じさせているだけ。
歩跡・凩に加えて、縮地もマスターしたアレクサンダリア1世の初動を見抜けるものは存在しない、そう言われている。
ーーーーー
人混みの中を駆けるレオンハルト。前に人がいれば一回転し、それを避ける。その動きを認識できるものは存在せず、目の前に通り過ぎる一陣の風のごとくである。
やっと人だかりを抜けきったところで、レオンハルトは一息つく。が、すぐに気を引き締める。構えこそ取らなかったものの、警戒心をあらわにしていた。
そして、レオンハルトの後ろからいかにも軽薄そうな声が響く。
「お見事。君ぃ、すごいねぇ。速い速い、アッハッハ。とても学生とは思えないよぉ。僕の気配にも気付いたみたいだし」
「どちら様?」
「僕? 誰だっていいじゃん? それより君、名前は?」
「……」
今し方自分の名乗りを拒んだのに、よくそんな質問ができるものだと感心するレオンハルト。
「うーん? 黙っちゃった。僕が誰かそんなに気になる? どうしようかなぁ? 教えちゃおっかなぁ」
「……別に気になりませんよ。用がないなら失礼します」
「まあまあまあ、ちょっと待ってって。僕も名乗るから君も名乗ってよ。そんなに急ぐこともないでしょ? それとも女の子とデート? デートかな? それじゃー引き留めても悪いし、僕はこのままついて行くよ」
調子が狂う、なんて思っていると、
「僕はシュナイダー。一応ここで名誉教員をやってるよ。よろしくぅ」
「……レオンハルトです」
(シュナイダーか。なるほど、護国の三騎士ならこの強さも納得か)
シュナイダーと名乗る色男の正体をレオンハルトはすぐに見破った。
護国の三騎士の1人ーー麗剣・シュナイダーである。
「なーんだ。あんまり驚いてくれないんだね」
「それだけ強者の気配を放っていたら大体のあたりはつきます」
「なるほど。あはは、これは失敗かなぁ……でも君、僕の強さがはかれたってことは、それだけ強いって事だよね」
「……腕にはそこそこ自信がありますから」
「そこそこ、ねー。あっ、あと敬語いらないからね。僕、こう見えて礼儀に拘らないナイスガイだから」
「元々礼儀を拘るタイプには見えませんよ。あとナイスガイは余計です……でもまあ、お言葉に甘えてタメ口でいかせてもらうよ」
「あはは、いいねいいね。そういうの嫌いじゃないよ。さてっと、挨拶も済ませたし、僕はこれで帰るよ。君の授業を受け持つからよろしくぅ」
「はぁ~」
嵐のようにやってきて、嵐のようにさって行く。
さすがのレオンハルトもこれにはついていけず、呆然としてしまう。
(ってかあいつ、俺の名前を聞いても驚かなかったな。最初から分かってて声を掛けたってことか……何が目的だ。品定めか?)
一方シュナイダーの方もーー
(強いねぇ。アークが褒めるだけのことはある。僕でも底が見えなかった……これは~楽しくなってきたぁ)
悪戯っぽい笑みを浮かべ、シュナイダーは天を仰ぐ。そのまま背伸び一つして、立ち去っていく。
こうして、レオンハルトとシュナイダーが邂逅を果たしたのだった。
一方その頃、カーティアはというと、
「もう! どこ行ったのよ!」
「どうしたティア? 何だこの騒ぎは?」
「オスカー……あのね、レオンハルトがいたのよ」
「レオンハルトって……あのレオンハルトか!?」
「そう。しかも入試上位」
「……あいつ、まさかまた!?」
「間違いないわ」
その後、レオンハルトの悪口大会が開催されたのは言うまでもない。
ーーーーーーー
章の途中失礼します。
恐らく疑問に思う方もいるので、説明しておきます。
なぜ、見た目が変わったレオンハルトをカーティアや他の生徒を初見で分かったのか?
その原因は、レオンハルトの髪色にあります。
この世界では、黒髪黒目の人間は極端に少ない。貴族階級ともなると、レオンハルトだけではないだろうか。
そのため、カーティアは一瞬でレオンハルトのことを認識できたわけです。
わかりにくい書き方をしてしまい、申し訳ありません。
引き続き作品をお楽しみください。
この日、レオンハルトは学院にやってきていた。理由は無論学院の合格発表があるからだ。
「えーっと、1729はっと」
上から受験番号を辿っていくと、そこには1729番とレオンハルトの名前があった。
とりあえず、合格はできたということで、レオンハルトは一息つく。
ただし、気になることが一点だけあった。
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受験番号1729 レオンハルト・ライネル(20)
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そう書かれていた。
この括弧20というのは何を表しているのか、レオンハルトには見当がつかなかった。
他の人にはないその括弧。しかしよく見ると、ほんの僅かだが括弧がついている生徒も見られた。
疑問に思っていると、合格者発表のそばで、もう一つ表があった。それを見てレオンハルトは理解する。
……
……
20位 レオンハルト・ライネル 筆記79 実技100 総合179
……
なるほど、入学試験の順位か、とレオンハルトは納得する。
しかし、同時にしまったという思いの方がつよかった。目立たないために、わざわざ実技で自分に制約をかけていたのにまさかの100点。
これは、嫌な予感がするぞ、とレオンハルトは思っていた。
レオンハルトの勘はよく当たるのだ。
「ちょっと、あんた」
「何だ?」
言ったそばから絡まれてしまう。
レオンハルトが振り向くと、そこには真紅の髪をなびかせた美少女が、顔に怒気を浮かべながらレオンハルトを睨んでいた。
「何だじゃないわよ! あんた、レオンハルトでしょ! 何でここにいるのよ!?」
「ここに居るのだから学院に通うために決まってるだろ」
「そういうんじゃなくて! 私は、何で学院を追い出されたあんたがここに居るのかって聞いてんの!」
「俺は別に追い出されたわけではないが……そもそも見ず知らずの人間にそこまで言われることか?」
「見ず知らず!? あんたまさか私のことを忘れたの!? 私はカーティア! カーティア・ティルミスよ!」
レオンハルトは脳内検索をかける。
(カーティア・ティルミス。ティルミス侯爵家の令嬢か。昔茶会で会ったことがあるが、特に親交があったわけではない、か……待てよ? カーティア・ティルミス。どこかで見たような……)
レオンハルトは素早く記憶の捜索を行う。そして、ヒットしたのがーー
……
……
20位 レオンハルト・ライネル 筆記79 実技100 総合179
21位 カーティア・ティルミス 筆記87 実技90 総合177
……
(あー、なるほど。通りで)
「これはこれは、カーティア嬢であったか。昔よりもずっと美しくなってるから、一目でわからなかったよ」
「あんたに褒められても嬉しくないわよ! それより何でここに理由を答えなさい!」
ツンデレではなかった。
本気で嫌悪の表情を浮かべながら、さらにレオンハルトを睨む。ここまでくるとはレオンハルトも想定外である。
「理由と言われても、陛下の勅命としか……」
「そんなわけないでしょう! そもそも、何であんたみたいなのが私より上なわけ? 実技試験満点なんてオスカー以外に取れるわけないでしょ! あんた、また教官を脅して点数上げてもらったんじゃないの?」
「それこそまさかだ。それに筆記試験はともかく、実技試験で教官を脅すとか……5年前から高等部の教官は全て元騎士で統一されただろ? 陛下の勅命で。脅しでもしたら真っ先に陛下に話がいく」
「だったら何であんたが満点取れるのよ! オスカーにボッコボコにされたあんたが」
レオンハルトとカーティアの言い合いは次第に激しくなり、いや、レオンハルトはいつも通りだが、カーティアの方がどんどん激高になっていく。そこを聞きつけた他の生徒たちも集まってくる。
「何の騒ぎだ?」
「試験で不正があったらしいよ」
「はあ? 不正!? どこのどいつだよ」
「ほら、あそこにいる男」
「あいつ……レオンハルトじゃねーか!? 何でここに?」
「知ってるのか?」
「ああ、初等部では有名だぜ。公爵家の権限を揮まくってたクズ野郎だよ。ついた名が豚公子」
「うわぁ、かっこわる」
「じゃー不正の話も真実味を帯びてきたんじゃない?」
「あんなもん不正に決まってる! あいつが真っ当な手段で合格できるわけがねー」
「でも苗字が違うわよ。豚公子ってシュヴァルツァー家のでしょ? ライネルだって。どこ? そこ」
「そんなもん、どっかに無理やり婿入れしたに決まってんだろ! 噂によると公爵家を追い出されたらいいぜ」
「まじ? ダッサ」
段々騒ぎが大きくなってきた。レオンハルト好みではない展開だ。
何を言われようと特に気にしないが、このままでは人が集まりすぎて帰れなくなってしまう。そしたらまたシリアに怒られてしまう。
それでは困ると思ったレオンハルトは、
「いい加減にしろ。証拠もなしに人を疑うな。程度が知れるぞ」
「何ですって!?」
(あっ、これダメなやつだ。周りが見えなくなっている。正論を言われてキレるのはその典型だ)
何言っても無駄という雰囲気を感じ取ったレオンハルトは、仕方ないとばかりに最終手段に出る。
三十六計逃げるに如かず、だ。
(まさかここで使うとは……)
陸跡魔闘術ーー歩跡・凩
スムーズに全身を流れていた魔力を足に集める。脚力強化と共に、レオンハルトの足と地面の間に、薄い魔力の層ができあがる。
音立てずに、しかし目で追うもの困難はほど素早く、地面を滑るように滑らかに動き出す。
「あ! ちょっと! どこいったのよ!?」
カーティアがレオンハルトを認識する前に、レオンハルトはすでにその場にはいなかった。
ーーーーー
陸跡魔闘術ーー歩跡・凩
魔力を足に集めることで、脚力を強化。そして、足と地面の間に魔力の層を作ることで、動きが信じられないほど滑らかになる。
まるで氷の上を滑るかのように。しかし、その氷を自在に操ることができるため氷上を歩くときの特有の不安定さはない。
歩跡・凩はかつて、アレクサンダリア1世がとある刀の達人と対峙した時に生まれたもの。
その達人は、縮地という技法を使いアレクサンダリア1世を追い詰めていた。東洋の古武術に対応しきれないアレクサンダリア1世だが、命の危機が迫る中でもしっかり戦いを楽しんでいた。
敵の攻撃を間一髪でかわしながら、相手を観察する。なぜ、こうも速いのか、と。なぜ、そこでアレクサンダリア1世は気づく。達人の足は、まるで地面を滑るかのように進んでいるのだと。俗にいう摺り足である。
ならば、こちらもということでアレクサンダリア1世が行ったのが歩跡・凩。
通常ではありえない動きでも、魔力でカバーすれば可能となる。
その後も、その達人の動きが脳内にこべり付いたアレクサンダリア1世は縮地をも再現する。
縮地は、実際それほど速く動いているのではない。走るための予備動作を殆ど無にすることで、相手に速いと感じさせているだけ。
歩跡・凩に加えて、縮地もマスターしたアレクサンダリア1世の初動を見抜けるものは存在しない、そう言われている。
ーーーーー
人混みの中を駆けるレオンハルト。前に人がいれば一回転し、それを避ける。その動きを認識できるものは存在せず、目の前に通り過ぎる一陣の風のごとくである。
やっと人だかりを抜けきったところで、レオンハルトは一息つく。が、すぐに気を引き締める。構えこそ取らなかったものの、警戒心をあらわにしていた。
そして、レオンハルトの後ろからいかにも軽薄そうな声が響く。
「お見事。君ぃ、すごいねぇ。速い速い、アッハッハ。とても学生とは思えないよぉ。僕の気配にも気付いたみたいだし」
「どちら様?」
「僕? 誰だっていいじゃん? それより君、名前は?」
「……」
今し方自分の名乗りを拒んだのに、よくそんな質問ができるものだと感心するレオンハルト。
「うーん? 黙っちゃった。僕が誰かそんなに気になる? どうしようかなぁ? 教えちゃおっかなぁ」
「……別に気になりませんよ。用がないなら失礼します」
「まあまあまあ、ちょっと待ってって。僕も名乗るから君も名乗ってよ。そんなに急ぐこともないでしょ? それとも女の子とデート? デートかな? それじゃー引き留めても悪いし、僕はこのままついて行くよ」
調子が狂う、なんて思っていると、
「僕はシュナイダー。一応ここで名誉教員をやってるよ。よろしくぅ」
「……レオンハルトです」
(シュナイダーか。なるほど、護国の三騎士ならこの強さも納得か)
シュナイダーと名乗る色男の正体をレオンハルトはすぐに見破った。
護国の三騎士の1人ーー麗剣・シュナイダーである。
「なーんだ。あんまり驚いてくれないんだね」
「それだけ強者の気配を放っていたら大体のあたりはつきます」
「なるほど。あはは、これは失敗かなぁ……でも君、僕の強さがはかれたってことは、それだけ強いって事だよね」
「……腕にはそこそこ自信がありますから」
「そこそこ、ねー。あっ、あと敬語いらないからね。僕、こう見えて礼儀に拘らないナイスガイだから」
「元々礼儀を拘るタイプには見えませんよ。あとナイスガイは余計です……でもまあ、お言葉に甘えてタメ口でいかせてもらうよ」
「あはは、いいねいいね。そういうの嫌いじゃないよ。さてっと、挨拶も済ませたし、僕はこれで帰るよ。君の授業を受け持つからよろしくぅ」
「はぁ~」
嵐のようにやってきて、嵐のようにさって行く。
さすがのレオンハルトもこれにはついていけず、呆然としてしまう。
(ってかあいつ、俺の名前を聞いても驚かなかったな。最初から分かってて声を掛けたってことか……何が目的だ。品定めか?)
一方シュナイダーの方もーー
(強いねぇ。アークが褒めるだけのことはある。僕でも底が見えなかった……これは~楽しくなってきたぁ)
悪戯っぽい笑みを浮かべ、シュナイダーは天を仰ぐ。そのまま背伸び一つして、立ち去っていく。
こうして、レオンハルトとシュナイダーが邂逅を果たしたのだった。
一方その頃、カーティアはというと、
「もう! どこ行ったのよ!」
「どうしたティア? 何だこの騒ぎは?」
「オスカー……あのね、レオンハルトがいたのよ」
「レオンハルトって……あのレオンハルトか!?」
「そう。しかも入試上位」
「……あいつ、まさかまた!?」
「間違いないわ」
その後、レオンハルトの悪口大会が開催されたのは言うまでもない。
ーーーーーーー
章の途中失礼します。
恐らく疑問に思う方もいるので、説明しておきます。
なぜ、見た目が変わったレオンハルトをカーティアや他の生徒を初見で分かったのか?
その原因は、レオンハルトの髪色にあります。
この世界では、黒髪黒目の人間は極端に少ない。貴族階級ともなると、レオンハルトだけではないだろうか。
そのため、カーティアは一瞬でレオンハルトのことを認識できたわけです。
わかりにくい書き方をしてしまい、申し訳ありません。
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