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学園・出逢いは唐突に
第3話 獅子として
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スタンピード終結より半月後、レオンハルトは皇都へやってきていた。陛下の使者がやってきたのは、レオンハルトを皇都に呼び寄せるのが表の理由となっている。裏の理由は皇帝の代わりに、ライネル領を視察することである。
ちなみに、今回の同行者はシリアのみ。
レオンハルトは長い間ライネル領を留守にするため、行政ができる人間はできるだけ領内に残しておきたいということで、セバスチャンなどには残ってもらった。
さて、レオンハルトが皇都へやってきた理由だが、平たく言えば学校に通うためである。
なにを今更と思うかもしれないが、5年前に皇帝の名の下に一つの勅命が下された。
ーー貴族家当主となるものは、必ず皇立学院高等部を卒業しなければならないーー
おそらく、対帝国の戦争に向けての戦力強化を図ったのだろうとレオンハルトは推測する。
貴族は戦時に軍を率いなければならない。そうなったときに、学院で学んでいなければ、それだけ混乱することも増える。上に立つべき貴族がそれではまずいと思ったのだろう。
まあ、元々多くの貴族子弟たちは学院に通っているのだから大した勅命でもない。
しかし、レオンハルトにとっては大したことがあった。
レオンハルトは、皇立学院高等部の入学年齢である15歳より前に貴族家の当主となった。叙爵と同時発布されたのがこの勅令。つまり、レオンハルトは皇立学院を卒業することなく、貴族家の当主となってしまったわけだ。
勅令に反すると言われれば微妙であるが、勅令は勅令。微妙だろうと違反は許されない。そこでとったのが、15歳になったら皇立学院高等部に入学し、三年間学ぶという案である。
一度追い出された学園に再び戻るなど、レオンハルトからしたらいい気分ではないが、これも勅令だから仕方ない。
さて、皇都にきていたレオンハルトは今、なにをしているかというと、黒いローブを身に纏い、スラム街にやってきていた。
シリアをともに付ける事なく。バレたらシリアが拗ねてしまうこと間違いなし。
皇都といえどスラム街は存在する。というより、皇都だからこそ、スラム街が存在するというべきかもしれない。
スラム街というぐらいだから、柄の悪い連中は当然いる。そして、見知らぬ人間が歩いていたら当然絡まれる。
「おうおう! にいちゃんよ、見ねー顔だな。よそ者んだな。迷ってるならおれらが案内してあげようか」
「駄賃は有り金全部ってところでどうだ? ああ、悪いけどあんたに拒否権はねーよ」
「ヒッヒッヒ、御託はいいらやっちまおうぜ」
いかにもという感じのチンピラたちに絡まれる。が、レオンハルトは動かない。
動く必要がないと言ったほうが正しいかもしれない。
「おい、お前ら。そこを退け」
「あぁ? って兄貴じゃねーっすか、どうしたんすか?こんなことろに」
「客人の迎えに来たんだ。そこを退け」
「客人って、このクソガキがっぐっはぶら……」
突然やってきた兄貴と呼ばれた灰色の髪を長く伸ばしたガリガリの男が、そのガリガリの体では想像もできないほどの力でチンピラの1人を殴り飛ばす。
「「っひ」」
「口を慎め。この方はボスの客人だぞ。舐めた口をきくんじゃねー」
「「は、はい! すみませんでした!」」
レオンハルトに向かって思いっきり地面に頭を擦り付けながら土下座をする。
そんな彼らをレオンハルトは気にも留めずに、灰色髪の男の前に進む。ここで甘い顔を見せては、スラム街の統治に問題が生じるからだ。スラム街の問題はスラム街の人間に解決してもらおう。
「案内を頼む」
「ああ」
そうやって灰色髪の男に案内されてやってきたが、よくありそうなおんぼろ酒場であった。
酒場に入った瞬間レオンハルトたちに視線が集まるが、灰色髪の男を確認すると、その視線をすぐに散っていった。
「ボスは?」
「奥にいる」
カウンターにいるマスターと短い会話を交わし、灰色髪の男はレオンハルトを先導する。酒場の奥のまた奥、最奥の扉の前に、1人の男が座っていた。
その男は、レオンハルトを同じ黒髪をしており、片目に大きな切り傷がついている。腰には東洋でよく使われる刀を差していた。
傷がついていない方の目を僅かに開きながら、
「『隼』か」
「ああ、『梟』。客人を連れてきた。通せ」
「いやダメだ。コードネームを言え。それが規則だ」
「……」
他人のコードネームを無闇に言いふらすわけにもいかず、灰色髪の男、隼は黙り込む。
やむなくレオンハルトが口を開く。
「『獅子』だ」
「っ!?」
僅かに開いた目が、また僅かながら大きく開く。そして、なにも言わずその場を退けた。
「失礼します、ボス。客人をお連れしました」
開かれた扉の奥にいたのは、スキンヘッドの大男だった。
これでもかというぐらいの傷跡がそこら中に付けられており、凶悪この上ない顔面となっている。その男に、女性が2人腕を組み絡みついていた。酒を煽りながら、ボスと呼ばれた男は、
「客だと? そんなもん呼んだ覚えはねーんだがなあ」
そこで、隼の後ろに隠れていたレオンハルトが一歩前に出て、フードを取った。
「俺の気配も読めないとは、酔いすぎではないか? 『虎』よ」
「……おいおいおい、一気に酔いが覚めたじゃねーか、クソが」
「客に対する態度とは思えんな」
「招かれざる客は客とは呼ばねーよ。そういうのは押しかけ強盗って言うんだよ」
「人聞きが悪い。それに……スラム街の頭の言うこととは思えんな。お前は押しかけ強盗にやられるたまか?」
「こーりゃ俺が悪かった。あんたを強盗なんかと一緒にしちまって。タチの悪さが段違いだ。悪いのがどっちかは言うまでもねーがな」
「ああ、強盗に決まってるからな」
「……で、何のようだよ」
「なに、情報収集のついでに挨拶にな」
「……逆だろう普通」
この虎と呼ばれた男は、皇都のスラム街の元締めをやっている。
今じゃースラム街以外にも勢力を伸ばし、皇都の裏側では相当の影響力を持つ。
元々このスラム街にはいくつかの勢力が存在していた。それぞれが牽制しあって、特に大きな勢力は存在しなかった。この男も、昔はそのうちの一つの勢力を取りまとめていたにすぎなかった。
このバランスは五年前に、崩れる。
レオンハルトが辺境以外でも情報源を得ようと動いていた。その手足と選ばれたのが、この男だった。虎は、その剛面からは想像できないかもしれないが、極悪非道をしてきたわけではなかった。
無論、スラム街で生きているのだがら善人であるはずはない。殺人や人身売買、薬物の取引など、いくらでも悪事に手を染めてきた。
だが、レオンハルトが目につけたのは、虎は女子供には手を出したことがないということだ。殺したのはスラム街の住民のみ。人身売買は借金を返せなかった者たちだけ。
奴隷制度が存在する世界では、どのみち借金奴隷になるしかない。薬物も、限りなく黒に近いグレーを歩き続けてきた。だからこそ生き残れたのかもしれないが。
そして、レオンハルトは虎の本拠地に殴り込みを仕掛けた。その時にいた幹部連中は皆半殺し。その時言った言葉がーー
『俺に従え。そうすれば、このスラム街はお前たちのものだ。だだし裏切りは許さない。いいな?』
シンプルイズベスト。この時点で虎たちの戦意は削がれた。
だが、それだけでは終わらない。スラム街を統一すべくレオンハルトは動く。
時に闇討ち、時に騙し討ち、時に仲間割れを起こし、時に騎士団も利用する。虎たちを制圧した時には見せなかった強さを見せつける。
その時の虎はと言えばーー
『あれ? オレらって、もしかして善良な市民?』
と思っていた。
血の雨が降り、雨後の晴わたるスラム街を虎たちがいち早く行動し、制圧した。そして現在に至る。
「で? 情報収集ってなにを?」
虎は隼以外の人間を部屋から追い出すと、そう切り出した。
「裏切り者であろう将軍クラスの情報だ」
「ちっ、それか。それなら何もねーよ。情報どころか噂の一つもたっちゃいねー」
「なるほど……」
「……それでなんかわかんのかよ」
「ん? ああ、わかるぞ」
「なにがわかんだよ」
「まず、噂が立たないと言うことは可能性としては二つ。一つ目、皇国側は全く裏切り者の尻尾を掴めてない可能性。シンプルだ。全くヒントがなければ噂も出ないからな。二つ目は、皇国側はすでに裏切り者が誰なのか分かっている可能性だ。この場合も、噂は流れない。噂が流れることで相手に警戒されてしまうからな。噂が立つときは、目処が立っているが確証がない時にわざと流している場合の方が多い。所詮噂でも、それだけで相手が動きにくくなるもの。本人ではなく別の人物の噂を流しても、相手を油断させられるしな」
「……」
「全く噂がないと言うことは、わからないか、わかっているかのどちらかだ。まあ、この情勢下ではわからない可能性の方が大きいがな。わかっているなら速やかに処分するはずだ。泳がせるにしても、あまり時間がない。帝国との戦争が近いのに、わざわざ上層部に爆弾を抱えるわけにはいかないからな」
「……」
「にしても、五年経ってもまだわからんとは……一体なにをしているのだ。可能性としては、裏切り者の技量が高いこと、最初から当てが外れて将軍クラスに裏切り者がいないこと、あとは調べてる側自体が裏切り者であることか……今の情報ではわからんな。いや、おそらく全部ではないか? 2番目と3番目の可能性自体は矛盾しないし。ならばーーー」
「わかった、わかったから! 頼むからオレの前でこれ以上やばい話はしないでくれ!」
「ああ、悪い。忘れてた」
「ったく……で? あんたは何でまた皇都にきたんだ?」
「なに、ちょっと学校に通いに」
「はあ?」
これには虎だけじゃなく、隼も目を見開いて驚いた。
「だから、学校だよ。皇立学院に入学するんだ」
「おい、隼。どうやらオレはもうダメらしい」
「しっかりしてくださいボス。おれもダメっぽいんで」
「おい、それどう言う意味だ」
レオンハルトの波乱万丈の皇都生活は、これより始まる。
ちなみに、このあと黙って外出したことがシリアにバレ、シリアはヘソを曲げてしまった。宥めるのに一苦労。
どうやら女性関係に関しては、この五年間全く成長していないらしい。
ちなみに、今回の同行者はシリアのみ。
レオンハルトは長い間ライネル領を留守にするため、行政ができる人間はできるだけ領内に残しておきたいということで、セバスチャンなどには残ってもらった。
さて、レオンハルトが皇都へやってきた理由だが、平たく言えば学校に通うためである。
なにを今更と思うかもしれないが、5年前に皇帝の名の下に一つの勅命が下された。
ーー貴族家当主となるものは、必ず皇立学院高等部を卒業しなければならないーー
おそらく、対帝国の戦争に向けての戦力強化を図ったのだろうとレオンハルトは推測する。
貴族は戦時に軍を率いなければならない。そうなったときに、学院で学んでいなければ、それだけ混乱することも増える。上に立つべき貴族がそれではまずいと思ったのだろう。
まあ、元々多くの貴族子弟たちは学院に通っているのだから大した勅命でもない。
しかし、レオンハルトにとっては大したことがあった。
レオンハルトは、皇立学院高等部の入学年齢である15歳より前に貴族家の当主となった。叙爵と同時発布されたのがこの勅令。つまり、レオンハルトは皇立学院を卒業することなく、貴族家の当主となってしまったわけだ。
勅令に反すると言われれば微妙であるが、勅令は勅令。微妙だろうと違反は許されない。そこでとったのが、15歳になったら皇立学院高等部に入学し、三年間学ぶという案である。
一度追い出された学園に再び戻るなど、レオンハルトからしたらいい気分ではないが、これも勅令だから仕方ない。
さて、皇都にきていたレオンハルトは今、なにをしているかというと、黒いローブを身に纏い、スラム街にやってきていた。
シリアをともに付ける事なく。バレたらシリアが拗ねてしまうこと間違いなし。
皇都といえどスラム街は存在する。というより、皇都だからこそ、スラム街が存在するというべきかもしれない。
スラム街というぐらいだから、柄の悪い連中は当然いる。そして、見知らぬ人間が歩いていたら当然絡まれる。
「おうおう! にいちゃんよ、見ねー顔だな。よそ者んだな。迷ってるならおれらが案内してあげようか」
「駄賃は有り金全部ってところでどうだ? ああ、悪いけどあんたに拒否権はねーよ」
「ヒッヒッヒ、御託はいいらやっちまおうぜ」
いかにもという感じのチンピラたちに絡まれる。が、レオンハルトは動かない。
動く必要がないと言ったほうが正しいかもしれない。
「おい、お前ら。そこを退け」
「あぁ? って兄貴じゃねーっすか、どうしたんすか?こんなことろに」
「客人の迎えに来たんだ。そこを退け」
「客人って、このクソガキがっぐっはぶら……」
突然やってきた兄貴と呼ばれた灰色の髪を長く伸ばしたガリガリの男が、そのガリガリの体では想像もできないほどの力でチンピラの1人を殴り飛ばす。
「「っひ」」
「口を慎め。この方はボスの客人だぞ。舐めた口をきくんじゃねー」
「「は、はい! すみませんでした!」」
レオンハルトに向かって思いっきり地面に頭を擦り付けながら土下座をする。
そんな彼らをレオンハルトは気にも留めずに、灰色髪の男の前に進む。ここで甘い顔を見せては、スラム街の統治に問題が生じるからだ。スラム街の問題はスラム街の人間に解決してもらおう。
「案内を頼む」
「ああ」
そうやって灰色髪の男に案内されてやってきたが、よくありそうなおんぼろ酒場であった。
酒場に入った瞬間レオンハルトたちに視線が集まるが、灰色髪の男を確認すると、その視線をすぐに散っていった。
「ボスは?」
「奥にいる」
カウンターにいるマスターと短い会話を交わし、灰色髪の男はレオンハルトを先導する。酒場の奥のまた奥、最奥の扉の前に、1人の男が座っていた。
その男は、レオンハルトを同じ黒髪をしており、片目に大きな切り傷がついている。腰には東洋でよく使われる刀を差していた。
傷がついていない方の目を僅かに開きながら、
「『隼』か」
「ああ、『梟』。客人を連れてきた。通せ」
「いやダメだ。コードネームを言え。それが規則だ」
「……」
他人のコードネームを無闇に言いふらすわけにもいかず、灰色髪の男、隼は黙り込む。
やむなくレオンハルトが口を開く。
「『獅子』だ」
「っ!?」
僅かに開いた目が、また僅かながら大きく開く。そして、なにも言わずその場を退けた。
「失礼します、ボス。客人をお連れしました」
開かれた扉の奥にいたのは、スキンヘッドの大男だった。
これでもかというぐらいの傷跡がそこら中に付けられており、凶悪この上ない顔面となっている。その男に、女性が2人腕を組み絡みついていた。酒を煽りながら、ボスと呼ばれた男は、
「客だと? そんなもん呼んだ覚えはねーんだがなあ」
そこで、隼の後ろに隠れていたレオンハルトが一歩前に出て、フードを取った。
「俺の気配も読めないとは、酔いすぎではないか? 『虎』よ」
「……おいおいおい、一気に酔いが覚めたじゃねーか、クソが」
「客に対する態度とは思えんな」
「招かれざる客は客とは呼ばねーよ。そういうのは押しかけ強盗って言うんだよ」
「人聞きが悪い。それに……スラム街の頭の言うこととは思えんな。お前は押しかけ強盗にやられるたまか?」
「こーりゃ俺が悪かった。あんたを強盗なんかと一緒にしちまって。タチの悪さが段違いだ。悪いのがどっちかは言うまでもねーがな」
「ああ、強盗に決まってるからな」
「……で、何のようだよ」
「なに、情報収集のついでに挨拶にな」
「……逆だろう普通」
この虎と呼ばれた男は、皇都のスラム街の元締めをやっている。
今じゃースラム街以外にも勢力を伸ばし、皇都の裏側では相当の影響力を持つ。
元々このスラム街にはいくつかの勢力が存在していた。それぞれが牽制しあって、特に大きな勢力は存在しなかった。この男も、昔はそのうちの一つの勢力を取りまとめていたにすぎなかった。
このバランスは五年前に、崩れる。
レオンハルトが辺境以外でも情報源を得ようと動いていた。その手足と選ばれたのが、この男だった。虎は、その剛面からは想像できないかもしれないが、極悪非道をしてきたわけではなかった。
無論、スラム街で生きているのだがら善人であるはずはない。殺人や人身売買、薬物の取引など、いくらでも悪事に手を染めてきた。
だが、レオンハルトが目につけたのは、虎は女子供には手を出したことがないということだ。殺したのはスラム街の住民のみ。人身売買は借金を返せなかった者たちだけ。
奴隷制度が存在する世界では、どのみち借金奴隷になるしかない。薬物も、限りなく黒に近いグレーを歩き続けてきた。だからこそ生き残れたのかもしれないが。
そして、レオンハルトは虎の本拠地に殴り込みを仕掛けた。その時にいた幹部連中は皆半殺し。その時言った言葉がーー
『俺に従え。そうすれば、このスラム街はお前たちのものだ。だだし裏切りは許さない。いいな?』
シンプルイズベスト。この時点で虎たちの戦意は削がれた。
だが、それだけでは終わらない。スラム街を統一すべくレオンハルトは動く。
時に闇討ち、時に騙し討ち、時に仲間割れを起こし、時に騎士団も利用する。虎たちを制圧した時には見せなかった強さを見せつける。
その時の虎はと言えばーー
『あれ? オレらって、もしかして善良な市民?』
と思っていた。
血の雨が降り、雨後の晴わたるスラム街を虎たちがいち早く行動し、制圧した。そして現在に至る。
「で? 情報収集ってなにを?」
虎は隼以外の人間を部屋から追い出すと、そう切り出した。
「裏切り者であろう将軍クラスの情報だ」
「ちっ、それか。それなら何もねーよ。情報どころか噂の一つもたっちゃいねー」
「なるほど……」
「……それでなんかわかんのかよ」
「ん? ああ、わかるぞ」
「なにがわかんだよ」
「まず、噂が立たないと言うことは可能性としては二つ。一つ目、皇国側は全く裏切り者の尻尾を掴めてない可能性。シンプルだ。全くヒントがなければ噂も出ないからな。二つ目は、皇国側はすでに裏切り者が誰なのか分かっている可能性だ。この場合も、噂は流れない。噂が流れることで相手に警戒されてしまうからな。噂が立つときは、目処が立っているが確証がない時にわざと流している場合の方が多い。所詮噂でも、それだけで相手が動きにくくなるもの。本人ではなく別の人物の噂を流しても、相手を油断させられるしな」
「……」
「全く噂がないと言うことは、わからないか、わかっているかのどちらかだ。まあ、この情勢下ではわからない可能性の方が大きいがな。わかっているなら速やかに処分するはずだ。泳がせるにしても、あまり時間がない。帝国との戦争が近いのに、わざわざ上層部に爆弾を抱えるわけにはいかないからな」
「……」
「にしても、五年経ってもまだわからんとは……一体なにをしているのだ。可能性としては、裏切り者の技量が高いこと、最初から当てが外れて将軍クラスに裏切り者がいないこと、あとは調べてる側自体が裏切り者であることか……今の情報ではわからんな。いや、おそらく全部ではないか? 2番目と3番目の可能性自体は矛盾しないし。ならばーーー」
「わかった、わかったから! 頼むからオレの前でこれ以上やばい話はしないでくれ!」
「ああ、悪い。忘れてた」
「ったく……で? あんたは何でまた皇都にきたんだ?」
「なに、ちょっと学校に通いに」
「はあ?」
これには虎だけじゃなく、隼も目を見開いて驚いた。
「だから、学校だよ。皇立学院に入学するんだ」
「おい、隼。どうやらオレはもうダメらしい」
「しっかりしてくださいボス。おれもダメっぽいんで」
「おい、それどう言う意味だ」
レオンハルトの波乱万丈の皇都生活は、これより始まる。
ちなみに、このあと黙って外出したことがシリアにバレ、シリアはヘソを曲げてしまった。宥めるのに一苦労。
どうやら女性関係に関しては、この五年間全く成長していないらしい。
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