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転生・蘇る大帝
SIDE 学園
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5月は過ぎ、6月がやってくる。
つい1ヶ月ほど前の出来事を誰もが忘れたかのように、学校生活を楽しんでいた。
1ヶ月前の5月では、大きな事件があった。
俗にいう「豚公子決闘事件」。あの事件でレオンハルトがオスカーに敗れ、そのまま学園に姿を現さなかった。
一部では決闘に負けた恥ずかしさで逃げたのではないかと言われている。そして、その事件の当事者でもあるオスカーとレスティナは、友人と呑気に食堂で食事をしていた。
「平和だな~、1ヶ月前までは考えられなかったほど平和だ」
「ちょっと、オスカー! そんなだらしない顔しないの!」
「だって平和なんだもん」
オスカーの緩みきっていた顔を指摘したのは、オスカーとレスティナの共通の友人であるカーティアである。
カーティアはオスカーと似た真紅の髪を伸ばした、目つきが鋭い美少女である。その目つきの鋭さ故に、一部では絶大な人気を誇っていた。
そして、オスカーの横に座っている銀髪の美少女であるレスティナもまた、オスカーを嗜める。
「オスカーくん、ダメだよ。そんな顔しちゃ。女の子にモテないよ」
「いいよ、モテなくて。オレにはレスティナがいるんだから」
「もう! オスカーくんったら……」
「ちょっと、わたしの前でいちゃつかないでもらえる? いいわよね、あんた達は婚約が成立して。わたしのところはまだパパが許してくれなくて……はぁ~」
カーティアもオスカーに思いを寄せていた。しかし、その思いは未だかなわない。当人同士というよりかは、家同士に問題があった。
「仕方ないよ、ティアちゃん。ティアちゃんの実家侯爵家だもの。オスカーくんはかっこいいけど、実家は子爵家だし。それに、同時に2人と婚約は流石にまずいよ」
「それはわたしもわかってるけど~……オスカー! あんたは早く偉くなってわたしを迎えに来なさい!」
「無茶言うなよ! ティルミス侯爵と言えば親バカで有名だろ! それこそ公爵ぐらいにならないと結婚を許してくれないだろうが」
「じゃー公爵ぐらいになりなさい!」
「無茶だっつーの!」
やいやい騒いでいる2人の横で、レスティナは何か思い浮かんだかのように、
「公爵家って言えば、レオンハルトくんどうなったのかなー」
「そう言えば全然姿を見ないな。まあ、いない方がオレは清清するがな」
「なあに~? レスティナはそんなに元婚約者のことが心配?」
「そんなんじゃないよ! ただちょっと気になって」
「レスティナが気にするようなことじゃないだろう。あれはあいつの自業自得だしな」
「うん……でも、やっぱりレオンハルトくんがあーなったのは私のせいかなあって、思っちゃって」
「そんなわけねーだろ!」
「そうよ! あれは昔からあーだったんだからレスティナが気にすることじゃないわ」
「そうか。ティアは昔のあいつを知ってるのか」
「そうよ。侯爵家と公爵家の付き合いは深いのよ」
オスカーとカーティアに慰められても、やはりレスティナの気が晴れない。それを見かねたカーティアは、
「あー、もう仕方ないわね! わたしが知ってるとっておきの情報を教えてあげるわよ! あいつはね、廃嫡されて、そのまま辺境に追い出されたのよ。だからもう会うことはないし、レスティナが気にする必要もないから」
「マジか! いい気味だぜ! 今までして来たことのバチが当たったんじゃないのか」
その発言にさらにレスティナの気持ちは沈んでいくが、オスカーとカーティアの慰めもあって、すぐに元気を取り戻す。
案外そんなに落ち込んでなかったのではないかとカーティアは思うが、その考えも一瞬のうちに消え去った。
しかし、彼らは知らない。
彼らは5年後に、再び出会うこととなる。
◆
「完全に想定外だ……まさか、あの豚公子が力を隠していたとは……いや、隠していたわけではないか」
暗い室内で、わずかな蝋燭の光が揺らめく。
「しばらく動くな、かぁ……慎重だな……心配せずともバレるような失敗はしない……そもそも、バレるはずがないのだから」
手元に書かれた指示書を右手の人差し指と中指で挟み、蝋燭に近づかせる。
指示書に火が移り、あっという間に燃え尽きてしまう。この世の儚さその物のように。
「レオンハルト・シュヴァルツァー、いや、レオンハルト・ライネルか」
ーーーーー
あとがき
明日から二章が始まります!
テーマは『学園・出逢いは唐突に』です。
しばらく、舞台が学園に逆戻りしてしまいますが、三章『動乱・生きる理由』やその後へと繋がる大事な章になりますので、どうかお付き合いください。
メインヒロイン登場章でもありますので……(ボソ)
つい1ヶ月ほど前の出来事を誰もが忘れたかのように、学校生活を楽しんでいた。
1ヶ月前の5月では、大きな事件があった。
俗にいう「豚公子決闘事件」。あの事件でレオンハルトがオスカーに敗れ、そのまま学園に姿を現さなかった。
一部では決闘に負けた恥ずかしさで逃げたのではないかと言われている。そして、その事件の当事者でもあるオスカーとレスティナは、友人と呑気に食堂で食事をしていた。
「平和だな~、1ヶ月前までは考えられなかったほど平和だ」
「ちょっと、オスカー! そんなだらしない顔しないの!」
「だって平和なんだもん」
オスカーの緩みきっていた顔を指摘したのは、オスカーとレスティナの共通の友人であるカーティアである。
カーティアはオスカーと似た真紅の髪を伸ばした、目つきが鋭い美少女である。その目つきの鋭さ故に、一部では絶大な人気を誇っていた。
そして、オスカーの横に座っている銀髪の美少女であるレスティナもまた、オスカーを嗜める。
「オスカーくん、ダメだよ。そんな顔しちゃ。女の子にモテないよ」
「いいよ、モテなくて。オレにはレスティナがいるんだから」
「もう! オスカーくんったら……」
「ちょっと、わたしの前でいちゃつかないでもらえる? いいわよね、あんた達は婚約が成立して。わたしのところはまだパパが許してくれなくて……はぁ~」
カーティアもオスカーに思いを寄せていた。しかし、その思いは未だかなわない。当人同士というよりかは、家同士に問題があった。
「仕方ないよ、ティアちゃん。ティアちゃんの実家侯爵家だもの。オスカーくんはかっこいいけど、実家は子爵家だし。それに、同時に2人と婚約は流石にまずいよ」
「それはわたしもわかってるけど~……オスカー! あんたは早く偉くなってわたしを迎えに来なさい!」
「無茶言うなよ! ティルミス侯爵と言えば親バカで有名だろ! それこそ公爵ぐらいにならないと結婚を許してくれないだろうが」
「じゃー公爵ぐらいになりなさい!」
「無茶だっつーの!」
やいやい騒いでいる2人の横で、レスティナは何か思い浮かんだかのように、
「公爵家って言えば、レオンハルトくんどうなったのかなー」
「そう言えば全然姿を見ないな。まあ、いない方がオレは清清するがな」
「なあに~? レスティナはそんなに元婚約者のことが心配?」
「そんなんじゃないよ! ただちょっと気になって」
「レスティナが気にするようなことじゃないだろう。あれはあいつの自業自得だしな」
「うん……でも、やっぱりレオンハルトくんがあーなったのは私のせいかなあって、思っちゃって」
「そんなわけねーだろ!」
「そうよ! あれは昔からあーだったんだからレスティナが気にすることじゃないわ」
「そうか。ティアは昔のあいつを知ってるのか」
「そうよ。侯爵家と公爵家の付き合いは深いのよ」
オスカーとカーティアに慰められても、やはりレスティナの気が晴れない。それを見かねたカーティアは、
「あー、もう仕方ないわね! わたしが知ってるとっておきの情報を教えてあげるわよ! あいつはね、廃嫡されて、そのまま辺境に追い出されたのよ。だからもう会うことはないし、レスティナが気にする必要もないから」
「マジか! いい気味だぜ! 今までして来たことのバチが当たったんじゃないのか」
その発言にさらにレスティナの気持ちは沈んでいくが、オスカーとカーティアの慰めもあって、すぐに元気を取り戻す。
案外そんなに落ち込んでなかったのではないかとカーティアは思うが、その考えも一瞬のうちに消え去った。
しかし、彼らは知らない。
彼らは5年後に、再び出会うこととなる。
◆
「完全に想定外だ……まさか、あの豚公子が力を隠していたとは……いや、隠していたわけではないか」
暗い室内で、わずかな蝋燭の光が揺らめく。
「しばらく動くな、かぁ……慎重だな……心配せずともバレるような失敗はしない……そもそも、バレるはずがないのだから」
手元に書かれた指示書を右手の人差し指と中指で挟み、蝋燭に近づかせる。
指示書に火が移り、あっという間に燃え尽きてしまう。この世の儚さその物のように。
「レオンハルト・シュヴァルツァー、いや、レオンハルト・ライネルか」
ーーーーー
あとがき
明日から二章が始まります!
テーマは『学園・出逢いは唐突に』です。
しばらく、舞台が学園に逆戻りしてしまいますが、三章『動乱・生きる理由』やその後へと繋がる大事な章になりますので、どうかお付き合いください。
メインヒロイン登場章でもありますので……(ボソ)
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