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第四章 パラレルワールド
第30話 導かれし運命
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ランチを食べ終えたときには、午後2時を回っていた。
『さて、本題に入ろうか』
ダイニングテーブルからソファへ移って、デザートのシャーベットを食べながらハーディが言った。
ハーディは甘いもの好きだった。そのため、食後には必ずデザートが出された。
『車でも話したように、どこまで地下遺跡が続いているのか分からないけど、ホロロムルスの電磁波が広範囲にブロックされていることから考えても、闇の勢力は現在、地下遺跡に本拠地を構えていると考えて間違いないと思う。それに、ダニエーレが入っていた組織のボスは、間違いなく闇の勢力の人間だったしね』
ハーディの話に、なるほどと納得するようにマーティスはうなずいた。
『そうなると地下遺跡を捜索したいところですが、なにぶんホロロムルスの電磁波が遮断されていますから、状況を探ることができません。そもそも、ホロロムルスには地下遺跡のデータもないですしね』
そう言うと、マーティスは全員のホロロムルスにローマの地図を表示させた。
『ここが、先ほどのアパートですね』
地下遺跡に通じるアパートに、マーティスは赤く点滅する現在地のマークをセットした。
『おふたりの話ですと、そこから地下へ入って北の方角へトンネルを30mほど進むと通りに出て・・・その通りをさらに北上して4、50mほど進んだところで今度は西へ直進ですね』
そう言いながら、マーティスは赤く点滅する現在地のマークを移動させていった。ローマ市街の地図上では、ちょうど本屋があるところで現在地マークは点滅していた。
『となると、ダニエーレの属していた組織のアジトは大体この辺りになるでしょうか』
真四角の、ひときわ大きな建物に現在地マークが移動した。その建物には、大型のアパレルショップが入っていた。
マーティスは地図を見つめたまま黙り込んだ。
現在の市街地と地下遺跡の位置関係から、何か関連性が見出せるかもしれないと考えているようだ。
「そういえば」、とクリスが紗奈に話しかけた。
「地下遺跡の街並みがファロスの時代の街並みとそっくりだったんだ。でも真っ暗だったし、それにあの時代はどこも似たような街並みだったのかもしれないから、ただの思い違いかもしれないけど」
クリスがそんなことを言うと、『いや、待って』とハーディが反応した。
『もしかしたら、本当にそうかもしれないよ』
そう言って、ハーディはクリスに真剣な眼差しを向けた。
『だから、君たちがこの地へ呼ばれたのかもしれない』
『いや、でもその街では馬で行ける距離にピラミッドがあったんだ。だから、イタリアなんかじゃないはずだよ』
クリスが否定すると、ハーディは首を振った。
『知らないかもしれないけど、古代ローマ時代、イタリアにもピラミッドはいくつもあったんだよ。ほとんどが壊されて、現在はひとつしか残っていないけどね』
『本当?』とクリスが聞き返すと、ハーディはうんうんとうなずいた。
『ローマ帝国はエジプトを統治していた時代もあるけど、それ以前からエジプト文明に感銘を受けて多様な文化を真似ていたんだよ。ピラミッドもそのひとつさ』
組んでいた足を外すと、ハーディは身を乗り出した。
『だから、あの地下遺跡が前世でクリスが過ごした街だっていう可能性は十分あるよ』
クリスは紗奈と顔を見合わせた。前世の記憶を思い出したことからこの冒険が始まった。
そして今、こうしてその地へ戻ってきたということだろうか。あのときに救えなかったエメルアが今隣にいて、その原因となった闇の勢力を今こうして駆逐しようとしている。偶然ではないのかもしれない。
そんな風に考えるクリスの隣で「運命だったんだね。全部が、きっと」と、感慨深そうに紗奈が言った。
『さて、本題に入ろうか』
ダイニングテーブルからソファへ移って、デザートのシャーベットを食べながらハーディが言った。
ハーディは甘いもの好きだった。そのため、食後には必ずデザートが出された。
『車でも話したように、どこまで地下遺跡が続いているのか分からないけど、ホロロムルスの電磁波が広範囲にブロックされていることから考えても、闇の勢力は現在、地下遺跡に本拠地を構えていると考えて間違いないと思う。それに、ダニエーレが入っていた組織のボスは、間違いなく闇の勢力の人間だったしね』
ハーディの話に、なるほどと納得するようにマーティスはうなずいた。
『そうなると地下遺跡を捜索したいところですが、なにぶんホロロムルスの電磁波が遮断されていますから、状況を探ることができません。そもそも、ホロロムルスには地下遺跡のデータもないですしね』
そう言うと、マーティスは全員のホロロムルスにローマの地図を表示させた。
『ここが、先ほどのアパートですね』
地下遺跡に通じるアパートに、マーティスは赤く点滅する現在地のマークをセットした。
『おふたりの話ですと、そこから地下へ入って北の方角へトンネルを30mほど進むと通りに出て・・・その通りをさらに北上して4、50mほど進んだところで今度は西へ直進ですね』
そう言いながら、マーティスは赤く点滅する現在地のマークを移動させていった。ローマ市街の地図上では、ちょうど本屋があるところで現在地マークは点滅していた。
『となると、ダニエーレの属していた組織のアジトは大体この辺りになるでしょうか』
真四角の、ひときわ大きな建物に現在地マークが移動した。その建物には、大型のアパレルショップが入っていた。
マーティスは地図を見つめたまま黙り込んだ。
現在の市街地と地下遺跡の位置関係から、何か関連性が見出せるかもしれないと考えているようだ。
「そういえば」、とクリスが紗奈に話しかけた。
「地下遺跡の街並みがファロスの時代の街並みとそっくりだったんだ。でも真っ暗だったし、それにあの時代はどこも似たような街並みだったのかもしれないから、ただの思い違いかもしれないけど」
クリスがそんなことを言うと、『いや、待って』とハーディが反応した。
『もしかしたら、本当にそうかもしれないよ』
そう言って、ハーディはクリスに真剣な眼差しを向けた。
『だから、君たちがこの地へ呼ばれたのかもしれない』
『いや、でもその街では馬で行ける距離にピラミッドがあったんだ。だから、イタリアなんかじゃないはずだよ』
クリスが否定すると、ハーディは首を振った。
『知らないかもしれないけど、古代ローマ時代、イタリアにもピラミッドはいくつもあったんだよ。ほとんどが壊されて、現在はひとつしか残っていないけどね』
『本当?』とクリスが聞き返すと、ハーディはうんうんとうなずいた。
『ローマ帝国はエジプトを統治していた時代もあるけど、それ以前からエジプト文明に感銘を受けて多様な文化を真似ていたんだよ。ピラミッドもそのひとつさ』
組んでいた足を外すと、ハーディは身を乗り出した。
『だから、あの地下遺跡が前世でクリスが過ごした街だっていう可能性は十分あるよ』
クリスは紗奈と顔を見合わせた。前世の記憶を思い出したことからこの冒険が始まった。
そして今、こうしてその地へ戻ってきたということだろうか。あのときに救えなかったエメルアが今隣にいて、その原因となった闇の勢力を今こうして駆逐しようとしている。偶然ではないのかもしれない。
そんな風に考えるクリスの隣で「運命だったんだね。全部が、きっと」と、感慨深そうに紗奈が言った。
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