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第一章 過去世の記憶
第42話 地球侵略
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『でも、なぜファロスなのかしら?そのような重要な任務をファロスに命じるというのは、あまりにも不確実だと思うのだけれど。現にこうして、その思惑が露呈しようとしているでしょう?』
エランドラの意見に『恐らく』と言って、ソレーテは説明を始めた。
『黒いドラゴンの石を取ってくるということは、最初から不確実な任務なのです。
というのも、黒いドラゴンの石は、地表世界を除く世界5大都市のどこかにそれぞれ眠っているようなのですが、その所在については、誰一人知る者はいません。
私ども中央部の人間も当然存じ上げませんし、銀河連邦や、さらには宇宙連盟の人間でさえ知る者はいないのです。
それは、ある時期が来るとまるで導きがあったかのように次々に発見され、5つの石が自ずと引き合わされるのです。
そして、そのときに次元上昇を誘発する莫大なエネルギーが引き起こされる、というわけです。
そして先ほども申し上げましたように、もしそのエネルギーを悪用したならば、地球を消滅させてしまうことも可能になります。
イビージャを使ってファロスさんに命じた人間も、不確実だということは百も承知のはずです。
ただ私が思うに、いつその時がやってくるのか分からないからこそ、こうして行動を起こしその機会をうかがっているのではないかと。その人選において、ファロスさんはうってつけの存在だったと思われます』
『なんで、ファロスがうってつけの存在なの?』
頬杖をついたままクレアが尋ねた。
『なぜなら、ファロスさんはドラゴンと契りを結んでいる存在でありながらこちらの世界のことについて無知であり、尚且つ婚約者を救うため、という動機づけをしやすいこともあったからでしょう』
『ふーん・・・。でも、時期が来ないと黒いドラゴンの石は発見できないのでしょう?』
『ええ、左様でございます。つまり、黒いドラゴンを手に入れることのできる者は、まさに選ばれし者といえるでしょう』
『ということは、闇の勢力の人たちに命じられて黒いドラゴンの石を取りに来た人は、ファロス以外にもこれまでも何人かいたの?』
続けざまに疑問をぶつけるクレアに『いえ。これまでは恐らくなかったと思います』と言って首を振ると、ソレーテは、はっとしたような顔をした。
『つまり、行動を起こし始めたということは、ザルナバンの準備が整っているということかもしれない・・・』
ソレーテはそう呟き、ミデルを見た。
『一度局へ戻りますか?』
ミデルの問いに、ソレーテはうなずいた。
『そうだな。いち早く報告する必要がありそうだ』
それから、ソレーテはファロスたちの方へ向き直った。
『申し訳ございません。私どもは一度中央部へ戻ります。あなた方の証言は大変参考になりました』
二人は『ご協力いただき、誠にありがとうございました』といって、深々と頭を下げた。
『急にどうしたの?』
立ち上がろうとする二人に、クレアが尋ねた。
『いや、先ほどの仮説がもし正しいとしたならば、ザルナバンはファロスさん以外にも誰かを使って黒いドラゴンの石を取りに寄越している可能性があります。それに・・・』
言いかけて、ソレーテは首を振った。
『いえ。とにかく、お手間をおかけした上に勝手なことを申し上げて大変申し訳ございませんが、私どもは一度中央部へ戻ります』
『ちょっと待って。ここまで話したんだから、ちゃんと全部説明してよ』
クレアが引き留めると、ソレーテは思案するようにうつむいた。
やがて顔を上げると、ソレーテは言った。
『いえ。これも私の憶測でしかございませんので他言無用でお願いしたいのですが、ザルナバンが行動を開始したとなると闇の勢力による地球侵略がいよいよ本格的に始まる可能性があります。
しかし、ご心配は無用です。これまでもそういった闇の者たちの動きはございましたが、すべて私どもが阻止して参りましたので』
そう言って、ソレーテは作り笑いを浮かべた。
エランドラの意見に『恐らく』と言って、ソレーテは説明を始めた。
『黒いドラゴンの石を取ってくるということは、最初から不確実な任務なのです。
というのも、黒いドラゴンの石は、地表世界を除く世界5大都市のどこかにそれぞれ眠っているようなのですが、その所在については、誰一人知る者はいません。
私ども中央部の人間も当然存じ上げませんし、銀河連邦や、さらには宇宙連盟の人間でさえ知る者はいないのです。
それは、ある時期が来るとまるで導きがあったかのように次々に発見され、5つの石が自ずと引き合わされるのです。
そして、そのときに次元上昇を誘発する莫大なエネルギーが引き起こされる、というわけです。
そして先ほども申し上げましたように、もしそのエネルギーを悪用したならば、地球を消滅させてしまうことも可能になります。
イビージャを使ってファロスさんに命じた人間も、不確実だということは百も承知のはずです。
ただ私が思うに、いつその時がやってくるのか分からないからこそ、こうして行動を起こしその機会をうかがっているのではないかと。その人選において、ファロスさんはうってつけの存在だったと思われます』
『なんで、ファロスがうってつけの存在なの?』
頬杖をついたままクレアが尋ねた。
『なぜなら、ファロスさんはドラゴンと契りを結んでいる存在でありながらこちらの世界のことについて無知であり、尚且つ婚約者を救うため、という動機づけをしやすいこともあったからでしょう』
『ふーん・・・。でも、時期が来ないと黒いドラゴンの石は発見できないのでしょう?』
『ええ、左様でございます。つまり、黒いドラゴンを手に入れることのできる者は、まさに選ばれし者といえるでしょう』
『ということは、闇の勢力の人たちに命じられて黒いドラゴンの石を取りに来た人は、ファロス以外にもこれまでも何人かいたの?』
続けざまに疑問をぶつけるクレアに『いえ。これまでは恐らくなかったと思います』と言って首を振ると、ソレーテは、はっとしたような顔をした。
『つまり、行動を起こし始めたということは、ザルナバンの準備が整っているということかもしれない・・・』
ソレーテはそう呟き、ミデルを見た。
『一度局へ戻りますか?』
ミデルの問いに、ソレーテはうなずいた。
『そうだな。いち早く報告する必要がありそうだ』
それから、ソレーテはファロスたちの方へ向き直った。
『申し訳ございません。私どもは一度中央部へ戻ります。あなた方の証言は大変参考になりました』
二人は『ご協力いただき、誠にありがとうございました』といって、深々と頭を下げた。
『急にどうしたの?』
立ち上がろうとする二人に、クレアが尋ねた。
『いや、先ほどの仮説がもし正しいとしたならば、ザルナバンはファロスさん以外にも誰かを使って黒いドラゴンの石を取りに寄越している可能性があります。それに・・・』
言いかけて、ソレーテは首を振った。
『いえ。とにかく、お手間をおかけした上に勝手なことを申し上げて大変申し訳ございませんが、私どもは一度中央部へ戻ります』
『ちょっと待って。ここまで話したんだから、ちゃんと全部説明してよ』
クレアが引き留めると、ソレーテは思案するようにうつむいた。
やがて顔を上げると、ソレーテは言った。
『いえ。これも私の憶測でしかございませんので他言無用でお願いしたいのですが、ザルナバンが行動を開始したとなると闇の勢力による地球侵略がいよいよ本格的に始まる可能性があります。
しかし、ご心配は無用です。これまでもそういった闇の者たちの動きはございましたが、すべて私どもが阻止して参りましたので』
そう言って、ソレーテは作り笑いを浮かべた。
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