年に一度の旦那様

五十嵐

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84 カルセナの報告

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ラドルとマクレナン侯爵の手紙が届いてから数日後、フリカに漸く待っていたものが届いた。それはカルセナからの手紙。しかも読み終わったフリカに笑みを与えるものだった。

「お嬢様、カルセナが最高の人物を見つけました」
「最高?」
「はい。大公家の人間です。いくらマクレナン侯爵でも、どうにも出来ない人物を」
「そう、ではロイがカルセナに応えなくてはならないわね」
「それと、侯爵家は特に変わりがないようです。ただ、コリンス伯爵家にはもう未来はないとカルセナは断言しています。そしてアーミテージ子爵がコリンス伯爵に口減らしを提案した節があると」
「未来がない家の為に、お父様は弟だけは手放さないでしょうね。そしてアーミテージ子爵はお父様の血が流れる女児が欲しい。口減らしの為にディアーナは子爵家の養女になるのかしら?」
「何も問題がなければ話はそれで落ち着いたはずです」
「ということは、そう出来なかったということね」

カルセナの手紙によるとコリンス伯爵家はマクレナン侯爵家に飼われているも同然らしい。首輪はきつめに締められ、リードは目立たないようにはなっているが侯爵が送った者に内部でしっかり握られている。

「侯爵はアーミテージ子爵家に養女に出すならば、ディアーナを早々に嫁がせるべきだとコリンス伯爵に言い渡したようです」
「でも、未来がない伯爵家の娘では、相手を見つけるのは…」
「勿論、相手はマクレナン侯爵が見繕うでしょう、都合の良い人物を。ですが、アーミテージ子爵もどうにかしてディアーナを手に入れたいはずです」
「違うわ、フリカ、ディアーナだけじゃない。アーミテージ子爵が欲しいのはコリンス伯爵家の娘よ。皮肉よね、この結婚がわたしを守ってくれているなんて」

ロイは二人の会話を傍で黙って聞いていた。聞くことでレイチェルの気持ちをより深く知る為に。けれどこれだけは伝えておかなければいけないと口を開いたのだった、友人として。

「レイチェル様、否、レイチェル。忘れないで、この結婚も含め全てを利用して僕は君を守る。勿論、離婚が成立した後も」

それはどうやって、そしてどれくらいの期間?レイチェルの知りたいことをロイは言葉にはしてくれなかった。本当はそれを教えて欲しい。けれど重要なことだけに、レイチェルは尋ねるのが怖かった。ロイの言葉を得てしまったら、レイチェルはそれすらまた失ってしまいそうで。そう思わずにはいられない程、会ったこともないアーミテージ子爵の存在がレイチェルには恐ろしく思えたのだった。
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