年に一度の旦那様

五十嵐

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83 能力を計る

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マクレナン侯爵はクリスタル、そしてクリスタルが後にも先にもこの世に一人しか生むことが出来なかった息子ノアに弱い。実の弟、グルーバー子爵に対しては、上手いことを言い最終的にはアリエルに手を付けたというのに。それどころか、血の繋がる甥のロイすら都合良く使っている。

そう、侯爵は血の繋がりがあろうと自分の手の内と外を明確に区別する人間だった。
では、血の繋がりがない人間には?簡単なことだ、使えるか否かが判断基準。しかも両者にも明確な物差しがあり、使い捨てる順番が決められていた。

それはノアも同じ。
ノアにとりアレクは便利に使うだけの男。ロイと比べるまでもなく、仕事は出来ない。言われたことは出来るが、ロイとは明らかに遣り方が違った。ただ、ずっと傍においていたのは、ノアが羽目を外す為に必要だったから。唯一ロイよりもアレクはその分野にだけは秀でていた。

「ノア様、それは…」
「二人との関係を清算するにも、二人を再教育するにも良い機会ということだ。そしてその役目を担うのは、アレク、おまえだ。俺はおまえに出来る出来ないは問わない。しかし結果は注視する。先に言うと、これは父上、いや、マクレナン侯爵からの命だ。結果如何でおまえの今後が変わるということだ」

タウンハウスへ戻ってから、アレクは何度となく花街へ行こうと誘ってきた。以前のノアならば、レイチェルが暮らす向かうだけで面倒な北の邸から戻ったならば直ぐに遊びに行ったことだろう。しかし、今は行ったところで遊べない。それどころかみっともない思いをするだけに思える。相手は玄人、もしかしたら可能性があるかもしれないが、それでも駄目だったらノアは大きな何かを失うだけだ。

父からの愛人二人に対する話はノアにとり耳が痛いものだった。しかし、二人をノアに紹介したアレクに全てを押し付ければいい。そうすれば遊びに行こうなどと言う暇もなくなるし、どういう結果に行き着くのか能力を計ることが出来る。

ナタリアとアナベルをこの邸から追い出すことなどノアには難しい。しかし父からの命だと知ったアレクならば、我が身可愛さに何らかの行動は起こすはず。それがロイのように二人を上手く手懐けて、誰にとっても最も良い状況にすることが出来たならアレクはまだ傍に置く価値はある。けれどそれ以外ならば、たいして使えないアレクはそろそろ切るタイミングなのだろうとノアは思ったのだった。
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