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82 邸内の品位
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アナベルとナタリアは焦っていた。強いて言うならば二人の仕事は愛人業。月々のお勤め代を与えてくれるノアに尽くすという仕事内容だ。
ところが本妻訪問後タウンハウスに戻って来たノアは、どちらも避けている。アナベルもナタリアもこれでは仕事を失いかねないと焦っていたのだ。それに…、ノアより年上の二人にはこんな条件の良い次のお勤め先を手に入れることは難しい。
「あんた、最近ノアに相手にされてないんでしょ。いい加減出て行ったら?」
「あんたこそ。体の線が崩れて無様な姿を晒す前に出て行った方が賢明だって分からない?」
離れた場所に位置する部屋を与えられているとはいえ、同じ邸に住む二人。どうしたって時折顔を合わせてしまうことはある。レイチェルが去ってからというもの、二人の罵り合いは酷くなる一方だった。特にここ最近は。
二人のそれぞれの侍女はあまりの酷さに出来ることならば耳を塞ぎたいと思い、偶々近くにいてしまったメイドは怒りの矛先が向けられないよう音も立てずに仕事に集中した。
邸内での下品な言葉遣いに二人の態度。それは、侍女やメイド達から上の者に伝わり、当然侯爵の耳に入る。そして入ったものは、然るべき人物に対して出ていく。
「侯爵家の品位を落とすだけだ、あの二人は。分かるな、ノア。それに今のおまえの状況を知られるわけにはいかない」
どこかで勝手に胎が膨れてはいけないと二人を邸に置かせた侯爵。しかし予想に反してノアは二人をこんなにも長く囲い続けた。ノアの体のことは非常にまずいが、今はそれを絶好の機会に変える時。ノアとて沽券に関わるのだ、侯爵の言葉の意味を理解するだろう。二人を追い出すその時が来たのだと。
「少し時間を下さい。二人と話します」
「ノア、教えてくれ。その時間は話す為のものか、それともこの邸内の品位を戻す為か」
「今は未だ…。ですが、そんなに時間を掛けずに答えます」
ノアの甘さを矯正しなければならないと侯爵は思った。マクレナン侯爵家を継ぐ者として。
もしそこにロイが居たのなら、侯爵こそノアへの甘さが捨てられなかったその人、そしてそのことがいつか徒になると思ったことだろう。
ところが本妻訪問後タウンハウスに戻って来たノアは、どちらも避けている。アナベルもナタリアもこれでは仕事を失いかねないと焦っていたのだ。それに…、ノアより年上の二人にはこんな条件の良い次のお勤め先を手に入れることは難しい。
「あんた、最近ノアに相手にされてないんでしょ。いい加減出て行ったら?」
「あんたこそ。体の線が崩れて無様な姿を晒す前に出て行った方が賢明だって分からない?」
離れた場所に位置する部屋を与えられているとはいえ、同じ邸に住む二人。どうしたって時折顔を合わせてしまうことはある。レイチェルが去ってからというもの、二人の罵り合いは酷くなる一方だった。特にここ最近は。
二人のそれぞれの侍女はあまりの酷さに出来ることならば耳を塞ぎたいと思い、偶々近くにいてしまったメイドは怒りの矛先が向けられないよう音も立てずに仕事に集中した。
邸内での下品な言葉遣いに二人の態度。それは、侍女やメイド達から上の者に伝わり、当然侯爵の耳に入る。そして入ったものは、然るべき人物に対して出ていく。
「侯爵家の品位を落とすだけだ、あの二人は。分かるな、ノア。それに今のおまえの状況を知られるわけにはいかない」
どこかで勝手に胎が膨れてはいけないと二人を邸に置かせた侯爵。しかし予想に反してノアは二人をこんなにも長く囲い続けた。ノアの体のことは非常にまずいが、今はそれを絶好の機会に変える時。ノアとて沽券に関わるのだ、侯爵の言葉の意味を理解するだろう。二人を追い出すその時が来たのだと。
「少し時間を下さい。二人と話します」
「ノア、教えてくれ。その時間は話す為のものか、それともこの邸内の品位を戻す為か」
「今は未だ…。ですが、そんなに時間を掛けずに答えます」
ノアの甘さを矯正しなければならないと侯爵は思った。マクレナン侯爵家を継ぐ者として。
もしそこにロイが居たのなら、侯爵こそノアへの甘さが捨てられなかったその人、そしてそのことがいつか徒になると思ったことだろう。
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*ご訪問ありがとうございました*
長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
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