年に一度の旦那様

五十嵐

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75 疑問と想像

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テーラーはラドルの質問に答える前に、今自分が得た結果から伝えると言った。それは、ラドルの首に触れた時の感覚のこと。

「記憶は定かではないが、感覚は以前と変わっていない気がする。この感覚を得ること自体滅多にないから、まあ、間違いないと思うが。おまえから得る感覚は強いものだ」

力がそろそろ無くなるであろうラドルから受ける感覚が強い、それはテーラーが何の力を持ち、その強弱も分かっていたということを示す。決して、力の寿命までを知ることは出来ないということでもある。伝えてくれた話は全て事実、離れた場所にいる執事に聞かれたところで問題ない内容だ。

「俺と同じ力を持つ者が他にいるとすれば、大抵仕立て屋になっていると思う。事実俺が知るもう一人も仕立て屋だ。そして俺もそいつも力を持つ者を触れると、不思議と頭に文字が浮かぶ」
そう言うとテーラーは古びた手帳のようなものをラドルに見せた。

「ここにある記号は恐らく俺達の国で使われていた文字だ。となりに大陸共通語で意味が書かれている。一つの記号にこんなに説明が書かれているのも不思議だがな。そしてここからは俺の想像だ、この記号は力の種類分存在していたんじゃないか」
「ここにある記号の数分、種類があるということか?」
「分からない。ここに書かれている記号で全てなのかは。それに、記号に説明が書かれていないものは、仮に俺が触れて頭にこれが浮かんでもどういう力か分からない」

テーラーは更に違う切り口で自分の想像を話してくれた。ラドルの力に直結する内容を。触れて力を知る者がいるのに、どうして視ることで力の存在を知る者がいるのかテーラーはずっと不思議に思っていたようだ。それに粛清された自分達一族の多くが持つ力は薬草作り、つまり製薬だった。どうして例外の少数派である自分達が途絶えること無く存在しているのかも不思議だったという。つまりテーラーの想像は不思議を解消する為に行き着いたものだった。
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