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74 左手の男
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ラドルが、テーラーに擬態し力を持つ者を探す男に会う。簡単な話に思えるが、なかなかそうはいかない。前侯爵も隣国の貴族も大切な手駒を失いたくはないからだ。
特に一番最悪なケース、力を持つ者二人が結託し逃げることだけは避けなければならない。その為に、ラドル同様テーラーも大切な何かを貴族に押さえられているであろうことは想像に容易い。しかしラドルの力はあと少しで尽きようとしている。だからなのか、前回は付き添った前侯爵は書状を信頼のおける執事に持たせラドルの共に付けただけだった。失ったところで然程惜しくないと思っているのだろう。若しくは、本当にその時期が近づいているので、ラドルに賭けてみようと思ったのか。最も考えられないのは、前侯爵も年を重ね多少は力を持つ者への憐れみを感じたというところだろう。
テーラーに会うとラドルは自分の能力はそろそろ尽きることを伝えた。
「首に触れても?」
「ああ。触れれば何の能力を持つか以外にその力の強さが分かるのか?」
「違う。俺に分かるのは何の能力を持つのかだけ。ただ、気になっていたんだ。手への感覚の強弱の意味を。今まではおまえが言うように、力の強弱かと思っていたが、それが力のピークなのか終わりを意味するのかの可能性もあると。そして、今ならばそれが確かめられると思い」
テーラーもラドル同様自分の力がどういうものか正確には理解出来ていないということだ。
「俺はおまえに聞きたかった。力を持つ者が見つかる傾向があるのかどうか。例えば地域や特定の階級のように。それに、手で触れてどうしてその力を持つと分かるのか」
ラドルは視力で印を見る。では、テーラーはどうやって手で能力を知るのか。触覚に何か秘密があるのか知りたかった。ルーツは同じ国だというのに、互いを知らなさすぎるとラドルは思ったのだ。
この力に縛られてきた。時には繁殖目的の家畜のようにも扱われた。だからなのか、力のことを知ろうとしなかった。若しくは当人達よりも良く知る前侯爵が、敢えてそう誘導していた可能性も考えられる。でも、いつか美しい印を額に浮かべるであろうレイチェルの為に、ラドルは少しでも知らなければならない。執事が少し離れたところで監視をしていようと。
特に一番最悪なケース、力を持つ者二人が結託し逃げることだけは避けなければならない。その為に、ラドル同様テーラーも大切な何かを貴族に押さえられているであろうことは想像に容易い。しかしラドルの力はあと少しで尽きようとしている。だからなのか、前回は付き添った前侯爵は書状を信頼のおける執事に持たせラドルの共に付けただけだった。失ったところで然程惜しくないと思っているのだろう。若しくは、本当にその時期が近づいているので、ラドルに賭けてみようと思ったのか。最も考えられないのは、前侯爵も年を重ね多少は力を持つ者への憐れみを感じたというところだろう。
テーラーに会うとラドルは自分の能力はそろそろ尽きることを伝えた。
「首に触れても?」
「ああ。触れれば何の能力を持つか以外にその力の強さが分かるのか?」
「違う。俺に分かるのは何の能力を持つのかだけ。ただ、気になっていたんだ。手への感覚の強弱の意味を。今まではおまえが言うように、力の強弱かと思っていたが、それが力のピークなのか終わりを意味するのかの可能性もあると。そして、今ならばそれが確かめられると思い」
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「俺はおまえに聞きたかった。力を持つ者が見つかる傾向があるのかどうか。例えば地域や特定の階級のように。それに、手で触れてどうしてその力を持つと分かるのか」
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この力に縛られてきた。時には繁殖目的の家畜のようにも扱われた。だからなのか、力のことを知ろうとしなかった。若しくは当人達よりも良く知る前侯爵が、敢えてそう誘導していた可能性も考えられる。でも、いつか美しい印を額に浮かべるであろうレイチェルの為に、ラドルは少しでも知らなければならない。執事が少し離れたところで監視をしていようと。
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