年に一度の旦那様

五十嵐

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「生きるって難しいもの。特に権力者が蛇のように絡みついていたあなたやリンデルは大変だったでしょうね。わたしこそ尋ねたいわ。貴族の娘としてあなた達よりものうのうと生きてきたわたしの傍にいてもらえるのかと」
「お嬢様もロイも分かりきっていることを質問するもんじゃありませんよ。今のこの現状が答えなんですから。わたし達はこれからを考えなくてはいけません。だから、わたしはロイが何をしてきたのか聞いたんですよ」

惹かれ合うのに、お互いの境遇のせいで肝心なところで躊躇ってしまう二人。言葉を掛けたフリカ、そしてカルセナもリンデルも自分達の子供のように接してきた二人が不憫でならないのは当然のことだった。

「ところで、ロイ、とっても言い辛いと思うけれど、マクレナン侯爵家のメイドであなたと関係を持った女性はいる?」
「はぁ?、何をいきなり」
「いいから、教えて。あなただっていい年齢なんだから、何かあっても咎めやしないわ」
「…一人もいない。面倒だから誘われても女性に興味がないって言い続けた。だから、侯爵家の人は僕を男色だと思っている」
「誰か寝台に潜り込まれたことは?」
「あるけど、反応しないようにした。面倒にはなりたくなかったから」
「いいわ、使えるわね。ありがとう、全てを包み隠さず話してくれて」
「どういうこと、カルセナ?」

ロイの質問にカルセナは直ぐには答えなかった。下を向いて真っ赤な頬をしているレイチェルに『良かったですね』と先に囁くのを優先したからだ。
そして、言った、『面白いシナリオが書けそうだわ』と。
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