69 / 90
69 減退
しおりを挟む
二人に使ったのは男性としての機能を減退させる呪術が掛かったお茶。
ノアに使う前にグルーバー子爵で効能は確認済みだった。
「僕には男女のことは分からない。特に母さん達のことは。母さんは、グルーバー子爵が好きなんだって。マクレナン侯爵と体の関係を持った後でも、変わらずにね。子爵に迷惑を掛けない為に侯爵に囲われ、子爵の子だからこそ僕を守ろうと必死だった。そんなことを言われてしまうと好きってなんだろうかと悩んだこともあったよ。」
「それはロイだけじゃない。わたしもまた好きがよく分からなかったわ。結婚して子供がいても話をしない両親を見ていたから。だからなのね、わたし達が友人という言葉を好んだのは。」
「かもしれないね。でも、僕は君の傍にいることで好きにも種類があることを知った。僕の好きは君を守りたい好き。そして母さんの好きは子爵を独占したい好きだった。だからね、」
ロイは母であるアリエルの気持ちすら利用したのだった。レイチェルとアリエルを天秤に掛け、レイチェルを取った。そして、実の父に鉄槌を下したのだ。
暴力ではなく、女好きというこれまた困った『好き』を諌める方法で。ロイとレイチェルにはその権利があるだろうと。
「僕は母さんの耳元で囁いた、特別な茶葉をようやく手に入れたってね。」
ロイが渡したのは男性機能を減退させる茶葉。アリエルは戸惑いながらも受け取っただけだった、最初は。
しかし、誰にも渡したくないという独占欲から試してみた。すると、子爵は遊び歩かなくなったのだ。小さかった欲が大きくなるのに長い時間は必要ない。
ロイの狙い通りアリエルは、子爵が飲む茶の中に少しずつ薬草を常時混ぜるようになったのだった。
「母さんに追加の薬草を渡す時に聞いたんだ。その後子爵はどう?って。効果を確認しておきたかったからね。」
最初はあんなに躊躇していたアリエルだったのに、二度目に渡した時の態度からは喜びが見てとれた。そして言ったのだ『使えば使う程、クレア様が子爵との接点を持たなくなるの。』と。
アリエルにとってクレアは子爵を奪った女。どれだけの年月が経とうと、それは変わらない。ロイはその時、アリエルの愛という感情の根深さを知った。そして、いつまでも若い女の尻を追いかけていた子爵とそんなアリエルの血が自分に入っていることが恐ろしくなったのだった。
そして、クレアという女性もまた恐ろしい存在だった。
女児を二人しか産んでいないクレアにとって、子爵がうっかり落とした種が男児として芽吹くことが一番やっかいなこと。アーミテージ子爵家からいくらでも入手出来る堕胎薬で、子爵の種のコントロールをしていた。中には薬の影響を受けた者もいるが、そんなことはクレアにとってはどうでもいいことだった。仮にクレアに良心があったなら、ベテルリナは死んでいない。
そして、子爵の管理もクレアにとってどうてもいいことになった。男性として機能しないのだから。
「夫人は子爵が男として機能しないのであれば、誰が世話係でも良かったんだろうね。これは本当にたまたまだったんだけど、年齢の比較的近い母さんがパーラーメイドから子爵の話し相手兼世話係になったんだ。子爵は不能になった頃から、塞ぎ込んで篭りがち。話し相手を夫人は充てがったってことだね。」
アリエルが薬草を子爵に与え続けるようになったのは言うまでもない。
「あなたの存在をマクレナン侯爵が隠してくれて良かったというのが、本当に皮肉ね。子爵夫人が知っていたら大変だったでしょうね。」
「でもね、レイチェル、マクレナン侯爵が親切心だけでそんなことはしないよ。母さんは欲求の捌け口、僕は手札ってとこだね。」
ノアに使う前にグルーバー子爵で効能は確認済みだった。
「僕には男女のことは分からない。特に母さん達のことは。母さんは、グルーバー子爵が好きなんだって。マクレナン侯爵と体の関係を持った後でも、変わらずにね。子爵に迷惑を掛けない為に侯爵に囲われ、子爵の子だからこそ僕を守ろうと必死だった。そんなことを言われてしまうと好きってなんだろうかと悩んだこともあったよ。」
「それはロイだけじゃない。わたしもまた好きがよく分からなかったわ。結婚して子供がいても話をしない両親を見ていたから。だからなのね、わたし達が友人という言葉を好んだのは。」
「かもしれないね。でも、僕は君の傍にいることで好きにも種類があることを知った。僕の好きは君を守りたい好き。そして母さんの好きは子爵を独占したい好きだった。だからね、」
ロイは母であるアリエルの気持ちすら利用したのだった。レイチェルとアリエルを天秤に掛け、レイチェルを取った。そして、実の父に鉄槌を下したのだ。
暴力ではなく、女好きというこれまた困った『好き』を諌める方法で。ロイとレイチェルにはその権利があるだろうと。
「僕は母さんの耳元で囁いた、特別な茶葉をようやく手に入れたってね。」
ロイが渡したのは男性機能を減退させる茶葉。アリエルは戸惑いながらも受け取っただけだった、最初は。
しかし、誰にも渡したくないという独占欲から試してみた。すると、子爵は遊び歩かなくなったのだ。小さかった欲が大きくなるのに長い時間は必要ない。
ロイの狙い通りアリエルは、子爵が飲む茶の中に少しずつ薬草を常時混ぜるようになったのだった。
「母さんに追加の薬草を渡す時に聞いたんだ。その後子爵はどう?って。効果を確認しておきたかったからね。」
最初はあんなに躊躇していたアリエルだったのに、二度目に渡した時の態度からは喜びが見てとれた。そして言ったのだ『使えば使う程、クレア様が子爵との接点を持たなくなるの。』と。
アリエルにとってクレアは子爵を奪った女。どれだけの年月が経とうと、それは変わらない。ロイはその時、アリエルの愛という感情の根深さを知った。そして、いつまでも若い女の尻を追いかけていた子爵とそんなアリエルの血が自分に入っていることが恐ろしくなったのだった。
そして、クレアという女性もまた恐ろしい存在だった。
女児を二人しか産んでいないクレアにとって、子爵がうっかり落とした種が男児として芽吹くことが一番やっかいなこと。アーミテージ子爵家からいくらでも入手出来る堕胎薬で、子爵の種のコントロールをしていた。中には薬の影響を受けた者もいるが、そんなことはクレアにとってはどうでもいいことだった。仮にクレアに良心があったなら、ベテルリナは死んでいない。
そして、子爵の管理もクレアにとってどうてもいいことになった。男性として機能しないのだから。
「夫人は子爵が男として機能しないのであれば、誰が世話係でも良かったんだろうね。これは本当にたまたまだったんだけど、年齢の比較的近い母さんがパーラーメイドから子爵の話し相手兼世話係になったんだ。子爵は不能になった頃から、塞ぎ込んで篭りがち。話し相手を夫人は充てがったってことだね。」
アリエルが薬草を子爵に与え続けるようになったのは言うまでもない。
「あなたの存在をマクレナン侯爵が隠してくれて良かったというのが、本当に皮肉ね。子爵夫人が知っていたら大変だったでしょうね。」
「でもね、レイチェル、マクレナン侯爵が親切心だけでそんなことはしないよ。母さんは欲求の捌け口、僕は手札ってとこだね。」
19
お気に入りに追加
203
あなたにおすすめの小説

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています

王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!
夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。
挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。
だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……?
酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。
※小説家になろうでも投稿しています

白い結婚がいたたまれないので離縁を申し出たのですが……。
蓮実 アラタ
恋愛
その日、ティアラは夫に告げた。
「旦那様、私と離縁してくださいませんか?」
王命により政略結婚をしたティアラとオルドフ。
形だけの夫婦となった二人は互いに交わることはなかった。
お飾りの妻でいることに疲れてしまったティアラは、この関係を終わらせることを決意し、夫に離縁を申し出た。
しかしオルドフは、それを絶対に了承しないと言い出して……。
純情拗らせ夫と比較的クール妻のすれ違い純愛物語……のはず。
※小説家になろう様にも掲載しています。

生まれ変わり令嬢は、初恋相手への心残りを晴らします(と意気込んだのはいいものの、何やら先行き不穏です!?)
夕香里
恋愛
無実の罪をあえて被り、処刑されたイザベル。目を開けると産まれたての赤子になっていた。
どうやら処刑された後、同じ国の伯爵家にテレーゼと名付けられて生まれたらしい。
(よく分からないけれど、こうなったら前世の心残りを解消しましょう!)
そう思い、想い人──ユリウスの情報を集め始めると、何やら耳を疑うような噂ばかり入ってくる。
(冷酷無慈悲、血に飢えた皇帝、皇位簒だ──父帝殺害!? えっ、あの優しかったユースが……?)
記憶と真反対の噂に戸惑いながら、17歳になったテレーゼは彼に会うため皇宮の侍女に志願した。
だが、そこにいた彼は17年前と変わらない美貌を除いて過去の面影が一切無くなっていて──?
「はっ戯言を述べるのはいい加減にしろ。……臣下は狂帝だと噂するのに」
「そんなことありません。誰が何を言おうと、わたしはユリウス陛下がお優しい方だと知っています」
徐々に何者なのか疑われているのを知らぬまま、テレーゼとなったイザベルは、過去に囚われ続け、止まってしまった針を動かしていく。
これは悲恋に終わったはずの恋がもう一度、結ばれるまでの話。

どんなに私が愛しても
豆狸
恋愛
どんなに遠く離れていても、この想いがけして届かないとわかっていても、私はずっと殿下を愛しています。
これからもずっと貴方の幸せを祈り続けています。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。

影の王宮
朱里 麗華(reika2854)
恋愛
王立学園の卒業式で公爵令嬢のシェリルは、王太子であり婚約者であるギデオンに婚約破棄を言い渡される。
ギデオンには学園で知り合った恋人の男爵令嬢ミーシャがいるのだ。
幼い頃からギデオンを想っていたシェリルだったが、ギデオンの覚悟を知って身を引こうと考える。
両親の愛情を受けられずに育ったギデオンは、人一倍愛情を求めているのだ。
だけどミーシャはシェリルが思っていたような人物ではないようで……。
タグにも入れましたが、主人公カップル(本当に主人公かも怪しい)は元サヤです。
すっごく暗い話になりそうなので、プロローグに救いを入れました。
一章からの話でなぜそうなったのか過程を書いていきます。
メインになるのは親世代かと。
※子どもに関するセンシティブな内容が含まれます。
苦手な方はご自衛ください。
※タイトルが途中で変わる可能性があります<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる