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69 減退
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二人に使ったのは男性としての機能を減退させる呪術が掛かったお茶。
ノアに使う前にグルーバー子爵で効能は確認済みだった。
「僕には男女のことは分からない。特に母さん達のことは。母さんは、グルーバー子爵が好きなんだって。マクレナン侯爵と体の関係を持った後でも、変わらずにね。子爵に迷惑を掛けない為に侯爵に囲われ、子爵の子だからこそ僕を守ろうと必死だった。そんなことを言われてしまうと好きってなんだろうかと悩んだこともあったよ。」
「それはロイだけじゃない。わたしもまた好きがよく分からなかったわ。結婚して子供がいても話をしない両親を見ていたから。だからなのね、わたし達が友人という言葉を好んだのは。」
「かもしれないね。でも、僕は君の傍にいることで好きにも種類があることを知った。僕の好きは君を守りたい好き。そして母さんの好きは子爵を独占したい好きだった。だからね、」
ロイは母であるアリエルの気持ちすら利用したのだった。レイチェルとアリエルを天秤に掛け、レイチェルを取った。そして、実の父に鉄槌を下したのだ。
暴力ではなく、女好きというこれまた困った『好き』を諌める方法で。ロイとレイチェルにはその権利があるだろうと。
「僕は母さんの耳元で囁いた、特別な茶葉をようやく手に入れたってね。」
ロイが渡したのは男性機能を減退させる茶葉。アリエルは戸惑いながらも受け取っただけだった、最初は。
しかし、誰にも渡したくないという独占欲から試してみた。すると、子爵は遊び歩かなくなったのだ。小さかった欲が大きくなるのに長い時間は必要ない。
ロイの狙い通りアリエルは、子爵が飲む茶の中に少しずつ薬草を常時混ぜるようになったのだった。
「母さんに追加の薬草を渡す時に聞いたんだ。その後子爵はどう?って。効果を確認しておきたかったからね。」
最初はあんなに躊躇していたアリエルだったのに、二度目に渡した時の態度からは喜びが見てとれた。そして言ったのだ『使えば使う程、クレア様が子爵との接点を持たなくなるの。』と。
アリエルにとってクレアは子爵を奪った女。どれだけの年月が経とうと、それは変わらない。ロイはその時、アリエルの愛という感情の根深さを知った。そして、いつまでも若い女の尻を追いかけていた子爵とそんなアリエルの血が自分に入っていることが恐ろしくなったのだった。
そして、クレアという女性もまた恐ろしい存在だった。
女児を二人しか産んでいないクレアにとって、子爵がうっかり落とした種が男児として芽吹くことが一番やっかいなこと。アーミテージ子爵家からいくらでも入手出来る堕胎薬で、子爵の種のコントロールをしていた。中には薬の影響を受けた者もいるが、そんなことはクレアにとってはどうでもいいことだった。仮にクレアに良心があったなら、ベテルリナは死んでいない。
そして、子爵の管理もクレアにとってどうてもいいことになった。男性として機能しないのだから。
「夫人は子爵が男として機能しないのであれば、誰が世話係でも良かったんだろうね。これは本当にたまたまだったんだけど、年齢の比較的近い母さんがパーラーメイドから子爵の話し相手兼世話係になったんだ。子爵は不能になった頃から、塞ぎ込んで篭りがち。話し相手を夫人は充てがったってことだね。」
アリエルが薬草を子爵に与え続けるようになったのは言うまでもない。
「あなたの存在をマクレナン侯爵が隠してくれて良かったというのが、本当に皮肉ね。子爵夫人が知っていたら大変だったでしょうね。」
「でもね、レイチェル、マクレナン侯爵が親切心だけでそんなことはしないよ。母さんは欲求の捌け口、僕は手札ってとこだね。」
ノアに使う前にグルーバー子爵で効能は確認済みだった。
「僕には男女のことは分からない。特に母さん達のことは。母さんは、グルーバー子爵が好きなんだって。マクレナン侯爵と体の関係を持った後でも、変わらずにね。子爵に迷惑を掛けない為に侯爵に囲われ、子爵の子だからこそ僕を守ろうと必死だった。そんなことを言われてしまうと好きってなんだろうかと悩んだこともあったよ。」
「それはロイだけじゃない。わたしもまた好きがよく分からなかったわ。結婚して子供がいても話をしない両親を見ていたから。だからなのね、わたし達が友人という言葉を好んだのは。」
「かもしれないね。でも、僕は君の傍にいることで好きにも種類があることを知った。僕の好きは君を守りたい好き。そして母さんの好きは子爵を独占したい好きだった。だからね、」
ロイは母であるアリエルの気持ちすら利用したのだった。レイチェルとアリエルを天秤に掛け、レイチェルを取った。そして、実の父に鉄槌を下したのだ。
暴力ではなく、女好きというこれまた困った『好き』を諌める方法で。ロイとレイチェルにはその権利があるだろうと。
「僕は母さんの耳元で囁いた、特別な茶葉をようやく手に入れたってね。」
ロイが渡したのは男性機能を減退させる茶葉。アリエルは戸惑いながらも受け取っただけだった、最初は。
しかし、誰にも渡したくないという独占欲から試してみた。すると、子爵は遊び歩かなくなったのだ。小さかった欲が大きくなるのに長い時間は必要ない。
ロイの狙い通りアリエルは、子爵が飲む茶の中に少しずつ薬草を常時混ぜるようになったのだった。
「母さんに追加の薬草を渡す時に聞いたんだ。その後子爵はどう?って。効果を確認しておきたかったからね。」
最初はあんなに躊躇していたアリエルだったのに、二度目に渡した時の態度からは喜びが見てとれた。そして言ったのだ『使えば使う程、クレア様が子爵との接点を持たなくなるの。』と。
アリエルにとってクレアは子爵を奪った女。どれだけの年月が経とうと、それは変わらない。ロイはその時、アリエルの愛という感情の根深さを知った。そして、いつまでも若い女の尻を追いかけていた子爵とそんなアリエルの血が自分に入っていることが恐ろしくなったのだった。
そして、クレアという女性もまた恐ろしい存在だった。
女児を二人しか産んでいないクレアにとって、子爵がうっかり落とした種が男児として芽吹くことが一番やっかいなこと。アーミテージ子爵家からいくらでも入手出来る堕胎薬で、子爵の種のコントロールをしていた。中には薬の影響を受けた者もいるが、そんなことはクレアにとってはどうでもいいことだった。仮にクレアに良心があったなら、ベテルリナは死んでいない。
そして、子爵の管理もクレアにとってどうてもいいことになった。男性として機能しないのだから。
「夫人は子爵が男として機能しないのであれば、誰が世話係でも良かったんだろうね。これは本当にたまたまだったんだけど、年齢の比較的近い母さんがパーラーメイドから子爵の話し相手兼世話係になったんだ。子爵は不能になった頃から、塞ぎ込んで篭りがち。話し相手を夫人は充てがったってことだね。」
アリエルが薬草を子爵に与え続けるようになったのは言うまでもない。
「あなたの存在をマクレナン侯爵が隠してくれて良かったというのが、本当に皮肉ね。子爵夫人が知っていたら大変だったでしょうね。」
「でもね、レイチェル、マクレナン侯爵が親切心だけでそんなことはしないよ。母さんは欲求の捌け口、僕は手札ってとこだね。」
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*ご訪問ありがとうございました*
長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
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