年に一度の旦那様

五十嵐

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「馬鹿ね、ロイ。ここにいるわたし達全員がお嬢様を大切に思っているのよ。報酬なんて考えなくいいの。ただあなたがみんなに協力をあおげばいいことだわ。ね、フリカもリンデルもそうでしょ?それにここにいないわたし達の夫もね。」

「そうよ、全て一人でやらなくてはいけないなんて思わないこと。まあ、お嬢様に関してはあなた一人かもしれないけど。まずは今何が出来るか考えないと。その為には、ロイ、あなたが今までに仕掛けたことを一つ残らず教えてちょうだい。勿論、わたし達の動きも共有するわ。」

「その前に、ロイ、男としてケジメをつけろよ。おまえの言葉如何で今後が変わる可能性があるんだから。いつも言ってるだろ、どうしてお嬢様を守りたいのかその根本を考えろって。」


ロイもまたレイチェル同様、この寄せ集めの家族が好きだと思った。父親とか母親とかの区別はない、集合体としての家族。
実の母であるアリエルよりも、この家族の方が家族らしいのかもしれない。だったら、本音をぶつけてもいいのだろうか。


「みんな、ありがとう。現状でこの言葉を言うべきではないことは分かっているけど、レイチェル、僕が君を守りたいのは、簡単だ、好きだからだよ。ただ好きなんだ。ノア様がレイチェルを大切にするなら、ずっと傍で見守る覚悟があったほどにね。」

家族の前での愛の告白。本来は恥ずかしいものだろうが、今のロイにとっては恥ずかしさよりも宣言したことで胸の痞えが下りるようだった。
問題は何も解決していない。でも、分かる。宣言したことでロイは今まで以上に強くなれると。レイチェルを守らなくてはならないのだから。
目の前で美しい瞳を潤わせているレイチェルを。

「ありがとう、ロイ。あなたは、わたしがノア様の婚約者になった時からずっと守ってくれていたわ。ううん、図書館で話していた時から気にかけてくれていた。わたし、すごく嬉しかったの、あなたといることは。だから、お願い、これからも傍にいて。誰もわたしからあなたを取り上げないようにして。」

身分、レイチェルの有夫という状態、そしてレイチェルの血。血が故のコリンス伯爵家、アーミテージ子爵家、トラットリー侯爵家。

微妙に全てが絡まりあい今がある。絡まっている糸を上手く切らないことには今は簡単に崩れるだろう。

「レイチェル、ありがとう。傍にいることを求めてくれて。でも、僕の話を聞いて嫌になったら遠慮せず言って欲しい。グルーバー子爵とノア様にした細工はあまり褒められたものじゃないから。」
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