年に一度の旦那様

五十嵐

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67 二転三転

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レイチェルの言葉にロイは首を小さく左右に振った。最初に立てた計画には、危険があり過ぎると今なら分かるからだ。

この邸の馬が三頭なのは、三人で逃げるのが最初の計画だったから。その三人は、レイチェル、リンデル、そしてロイ。カルセナ達にはぎりぎりで計画を告げ、この邸に火を放ち上手く姿を眩ましてもらおうと思っていたのだった。

ロイは三人で逃げるとレイチェルには伝えていたが、本当は違う。途中からは、リンデルとロイのみになる予定だった。貴族の娘として育ったレイチェルに逃亡生活などさせたくなかったし、そんな苦労も味合わせたくなかったからだ。

だから、ロイはレイチェルのゴールをトラットリー侯爵としていた。姪であるレイチェルを救ってくれるのではないかと考えていたのだ。ベテルリナを娘に迎えたトラットリー侯爵家ならば、その血を受け継ぐレイチェルも大切にしてくれるのではないかと考えていたから。
後は影からレイチェルを見守ればいい、本当はそういう計画だった。

しかし、フリカの話はそれを簡単に打ち砕いた。

本当の計画を知らないレイチェルが言う元に戻そうとは、終わりのない逃亡生活。しかも、トラットリー侯爵家かアーミテージ子爵家に絶対に見つからなければいいというものではない。フリカの話を聞く限り、どこにラドルのような力を持つ者が潜んでいるかわからないのだ。

こんな光り輝くように美しいレイチェルを、ずっと闇の中に隠すように生きさせるなんてロイには出来ない。

しかし、次に考えたレイチェルの希望を叶える計画も今となっては難しい。計画を実行することは出来ても、先はないだろう。

ノアが今後どう動くのか。それも考慮すると、新たな計画を考えなくてはいけないが、時間がないのも事実だった。
だから、今、ロイが言うべき言葉は決まっている。

「僕は大切なレイチェルを守りたい。だから、みんなの力を貸して欲しい。大した報酬も出せないけど。」
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