年に一度の旦那様

五十嵐

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65 お見通し

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レイチェルは驚いた。
この北の外れでのんびり暮らしを楽しんでいたのは自分だけだったという事実に。皆、レイチェルの毎日を守る為に様々なことをしてくれていたのだ。

コリンス伯爵家の状況はこの三年でかなり悪くなった。と言うより、悪化するようロイに謀られていた。

縁戚となったマクレナン侯爵家から借金をして、今はなんとか面目を保っているようだ。しかし、借金を抱え込んだ経緯に目を伏せているようでは、同じようなことをまた仕出かす可能性がある。

それに借金の抵当に入れたものが悪すぎる。
一つは共同事業の権利。もう一つは伯爵領の一部だ。

「侯爵は端から、得るつもりだった。だからレイチェルの実家はこれから大変なことになると思う。ややこしいのはアーミテージ子爵なんだ。大前提として、アーミテージ子爵はベテルリナ様に特別な血が流れているとは知らなかった。けれど、コリンス伯爵にその血が流れていることは知っている」

ロイはアリッサがコリンス伯爵と結婚するまでに何が行われていたか全て話してくれた。レイチェルも薄々そうだろうとは思っていたが、妹と弟はアリッサの連れ子ではなくやはり父との間の子だった。たとえ未婚でもアーミテージ子爵はアリッサを唆し子を作らせていたのだ。力を持つ子が生まれる確率を上げる為に。

「弟はシャツを仕立てていたと思うのだけれど、既に何か力を持っているか調べられたのかしら」
「それは…」
「お嬢様、ロイにそれは説明し辛いことでしょうからわたしから話しましょう」

レイチェルはフリカの説明に驚いた。リンデルもロイも力の有無は大人になると分かるようになるとは言ったが、まさかこの場合の大人がそういうことだとは。

「じゃあ、もしもわたしの額に印が現れたら、ラドルにはわたしがそういうことをしたって知られてしまうということ?」
「はい。ですが、ラドルはそれを逆手に取り結婚したお嬢様の額には印は見えなかったと前トラットリー侯爵に報告致しました。しかも真実を見抜く力を持つタスルという息子の前で。性交の有無など言うまでもなく、結婚後は大抵そうなると誰もが思いますから」

どういう話であれ、レイチェルには恥ずかしいだけだった。しかも、レイチェルは自ら自分は純潔を保っていると告白したようなものだ。

「お嬢様、そんなに赤くならなくても大丈夫ですよ。わたし達は皆、お嬢様がそうであると知っていますから。ロイを見ていれば分かります」

レイチェルはフリカのその言葉に助けを求めようとロイは見た。これではまだまだ子供だと言われているようでなんだか詰まらなかったのだ。
けれど目に映ったロイはいつものような涼しい顔ではなく、朝の睦み合っている時のよう。
これではロイは頼れない。

「ねえ、でも、わたしとロイは添い寝をしてるのよ。だから、そうでない可能性もあるじゃない」
「ええ、それも存じていますよ。でも、お嬢様、添い寝だけでは大人にはなれません。お嬢様が大人になるには、お相手の気持ちがまず大人にならないと。なので、可能性はなかったでしょうね、今まで」

フリカの最もな言葉にレイチェルはロイを見た。しかし、すぐさま青空色の瞳はレイチェルから目を逸らしたのだった。
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