65 / 90
65 お見通し
しおりを挟む
レイチェルは驚いた。
この北の外れでのんびり暮らしを楽しんでいたのは自分だけだったという事実に。皆、レイチェルの毎日を守る為に様々なことをしてくれていたのだ。
コリンス伯爵家の状況はこの三年でかなり悪くなった。と言うより、悪化するようロイに謀られていた。
縁戚となったマクレナン侯爵家から借金をして、今はなんとか面目を保っているようだ。しかし、借金を抱え込んだ経緯に目を伏せているようでは、同じようなことをまた仕出かす可能性がある。
それに借金の抵当に入れたものが悪すぎる。
一つは共同事業の権利。もう一つは伯爵領の一部だ。
「侯爵は端から、得るつもりだった。だからレイチェルの実家はこれから大変なことになると思う。ややこしいのはアーミテージ子爵なんだ。大前提として、アーミテージ子爵はベテルリナ様に特別な血が流れているとは知らなかった。けれど、コリンス伯爵にその血が流れていることは知っている」
ロイはアリッサがコリンス伯爵と結婚するまでに何が行われていたか全て話してくれた。レイチェルも薄々そうだろうとは思っていたが、妹と弟はアリッサの連れ子ではなくやはり父との間の子だった。たとえ未婚でもアーミテージ子爵はアリッサを唆し子を作らせていたのだ。力を持つ子が生まれる確率を上げる為に。
「弟はシャツを仕立てていたと思うのだけれど、既に何か力を持っているか調べられたのかしら」
「それは…」
「お嬢様、ロイにそれは説明し辛いことでしょうからわたしから話しましょう」
レイチェルはフリカの説明に驚いた。リンデルもロイも力の有無は大人になると分かるようになるとは言ったが、まさかこの場合の大人がそういうことだとは。
「じゃあ、もしもわたしの額に印が現れたら、ラドルにはわたしがそういうことをしたって知られてしまうということ?」
「はい。ですが、ラドルはそれを逆手に取り結婚したお嬢様の額には印は見えなかったと前トラットリー侯爵に報告致しました。しかも真実を見抜く力を持つタスルという息子の前で。性交の有無など言うまでもなく、結婚後は大抵そうなると誰もが思いますから」
どういう話であれ、レイチェルには恥ずかしいだけだった。しかも、レイチェルは自ら自分は純潔を保っていると告白したようなものだ。
「お嬢様、そんなに赤くならなくても大丈夫ですよ。わたし達は皆、お嬢様がそうであると知っていますから。ロイを見ていれば分かります」
レイチェルはフリカのその言葉に助けを求めようとロイは見た。これではまだまだ子供だと言われているようでなんだか詰まらなかったのだ。
けれど目に映ったロイはいつものような涼しい顔ではなく、朝の睦み合っている時のよう。
これではロイは頼れない。
「ねえ、でも、わたしとロイは添い寝をしてるのよ。だから、そうでない可能性もあるじゃない」
「ええ、それも存じていますよ。でも、お嬢様、添い寝だけでは大人にはなれません。お嬢様が大人になるには、お相手の気持ちがまず大人にならないと。なので、可能性はなかったでしょうね、今まで」
フリカの最もな言葉にレイチェルはロイを見た。しかし、すぐさま青空色の瞳はレイチェルから目を逸らしたのだった。
この北の外れでのんびり暮らしを楽しんでいたのは自分だけだったという事実に。皆、レイチェルの毎日を守る為に様々なことをしてくれていたのだ。
コリンス伯爵家の状況はこの三年でかなり悪くなった。と言うより、悪化するようロイに謀られていた。
縁戚となったマクレナン侯爵家から借金をして、今はなんとか面目を保っているようだ。しかし、借金を抱え込んだ経緯に目を伏せているようでは、同じようなことをまた仕出かす可能性がある。
それに借金の抵当に入れたものが悪すぎる。
一つは共同事業の権利。もう一つは伯爵領の一部だ。
「侯爵は端から、得るつもりだった。だからレイチェルの実家はこれから大変なことになると思う。ややこしいのはアーミテージ子爵なんだ。大前提として、アーミテージ子爵はベテルリナ様に特別な血が流れているとは知らなかった。けれど、コリンス伯爵にその血が流れていることは知っている」
ロイはアリッサがコリンス伯爵と結婚するまでに何が行われていたか全て話してくれた。レイチェルも薄々そうだろうとは思っていたが、妹と弟はアリッサの連れ子ではなくやはり父との間の子だった。たとえ未婚でもアーミテージ子爵はアリッサを唆し子を作らせていたのだ。力を持つ子が生まれる確率を上げる為に。
「弟はシャツを仕立てていたと思うのだけれど、既に何か力を持っているか調べられたのかしら」
「それは…」
「お嬢様、ロイにそれは説明し辛いことでしょうからわたしから話しましょう」
レイチェルはフリカの説明に驚いた。リンデルもロイも力の有無は大人になると分かるようになるとは言ったが、まさかこの場合の大人がそういうことだとは。
「じゃあ、もしもわたしの額に印が現れたら、ラドルにはわたしがそういうことをしたって知られてしまうということ?」
「はい。ですが、ラドルはそれを逆手に取り結婚したお嬢様の額には印は見えなかったと前トラットリー侯爵に報告致しました。しかも真実を見抜く力を持つタスルという息子の前で。性交の有無など言うまでもなく、結婚後は大抵そうなると誰もが思いますから」
どういう話であれ、レイチェルには恥ずかしいだけだった。しかも、レイチェルは自ら自分は純潔を保っていると告白したようなものだ。
「お嬢様、そんなに赤くならなくても大丈夫ですよ。わたし達は皆、お嬢様がそうであると知っていますから。ロイを見ていれば分かります」
レイチェルはフリカのその言葉に助けを求めようとロイは見た。これではまだまだ子供だと言われているようでなんだか詰まらなかったのだ。
けれど目に映ったロイはいつものような涼しい顔ではなく、朝の睦み合っている時のよう。
これではロイは頼れない。
「ねえ、でも、わたしとロイは添い寝をしてるのよ。だから、そうでない可能性もあるじゃない」
「ええ、それも存じていますよ。でも、お嬢様、添い寝だけでは大人にはなれません。お嬢様が大人になるには、お相手の気持ちがまず大人にならないと。なので、可能性はなかったでしょうね、今まで」
フリカの最もな言葉にレイチェルはロイを見た。しかし、すぐさま青空色の瞳はレイチェルから目を逸らしたのだった。
22
*ご訪問ありがとうございました*
長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています

王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます

白い結婚がいたたまれないので離縁を申し出たのですが……。
蓮実 アラタ
恋愛
その日、ティアラは夫に告げた。
「旦那様、私と離縁してくださいませんか?」
王命により政略結婚をしたティアラとオルドフ。
形だけの夫婦となった二人は互いに交わることはなかった。
お飾りの妻でいることに疲れてしまったティアラは、この関係を終わらせることを決意し、夫に離縁を申し出た。
しかしオルドフは、それを絶対に了承しないと言い出して……。
純情拗らせ夫と比較的クール妻のすれ違い純愛物語……のはず。
※小説家になろう様にも掲載しています。

生まれ変わり令嬢は、初恋相手への心残りを晴らします(と意気込んだのはいいものの、何やら先行き不穏です!?)
夕香里
恋愛
無実の罪をあえて被り、処刑されたイザベル。目を開けると産まれたての赤子になっていた。
どうやら処刑された後、同じ国の伯爵家にテレーゼと名付けられて生まれたらしい。
(よく分からないけれど、こうなったら前世の心残りを解消しましょう!)
そう思い、想い人──ユリウスの情報を集め始めると、何やら耳を疑うような噂ばかり入ってくる。
(冷酷無慈悲、血に飢えた皇帝、皇位簒だ──父帝殺害!? えっ、あの優しかったユースが……?)
記憶と真反対の噂に戸惑いながら、17歳になったテレーゼは彼に会うため皇宮の侍女に志願した。
だが、そこにいた彼は17年前と変わらない美貌を除いて過去の面影が一切無くなっていて──?
「はっ戯言を述べるのはいい加減にしろ。……臣下は狂帝だと噂するのに」
「そんなことありません。誰が何を言おうと、わたしはユリウス陛下がお優しい方だと知っています」
徐々に何者なのか疑われているのを知らぬまま、テレーゼとなったイザベルは、過去に囚われ続け、止まってしまった針を動かしていく。
これは悲恋に終わったはずの恋がもう一度、結ばれるまでの話。

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!
夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。
挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。
だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……?
酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。
※小説家になろうでも投稿しています

貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?
蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」
ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。
リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。
「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」
結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。
愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。
これからは自分の幸せのために生きると決意した。
そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。
「迎えに来たよ、リディス」
交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。
裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。
※完結まで書いた短編集消化のための投稿。
小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる