年に一度の旦那様

五十嵐

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64 ロイの告白

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「お母様はね、食が細くなってしまったの。最後は何も食べられなくなったわ。」
「それが、オレの力が加わった薬草が仕出かしたこと。オレが直接でないにしろ姫様をやっちまった。」
「リンデル、違うわ。あなたの持つ力を間違った使い方をした人がいけないの。」

カルセナとフリカは何も言うことが出来なかった。リンデルの身の上を聞いた後では。特に、フリカは自分の夫であるラドルのことを考えると尚更。とそこで、フリカは疑問に思った。どうしてリンデルが亡くなった後でベテルリナが一族の者、しかも王族の血を引くと分かったのだろうかと。

「リンデルはどうしてベテルリナ様に特別な血が流れていることを知ったのかしら。」
「それは…」
「ここからはリンデルに代わって僕が全てを話すよ。その前に、やっぱりベテルリナ様には特別な血が流れていたんですね。」
「ええ、だからわたし達の雇用主、前トラットリー侯爵は喜んでベテルリナ様を娘として迎えたのです。侯爵が知る限り、初めての女児でしたから、その血を受け継ぐ。そして、ベテルリナ様には何らかの力がありました。それは確かです。何故なら、ラドルが確認しましたから。」
「いいんですか、そこまで話して。」
「ラドルが動きました。それはきっとベテルリナ様のお血筋を守る為でしょう。とすれば、わたし達の進む道は決まっています。」
「…そういうことですね。じゃあ、まずは僕の全てを話さないといけないな。ごめんね、レイチェル、きっと楽しくないことを沢山耳にしなければならない。嫌になったら、立ち去っていいからね。例えば、僕とノア様が実は従兄弟だとかね。僕の父はリンデルを縛り付けていたアーミテージ子爵の娘、クレアの夫だよ。マクレナン侯爵の弟であるグルーバー子爵だ。」

ロイは自分の生い立ち、どうしてマクレナン侯爵家で働くことになったのか、そして母が受けた仕打ちを包み隠さず話した。
更には諜報活動を行なっていたことも。そして、その中でたまたまリンデルの存在を知ってしまったことも話したのだった。
マクレナン侯爵の命を受けアーミテージ子爵を調べてはいたが、リンデルに行き合ったのは偶然だったのだ。しかし、根も葉もない話を侯爵が信じるはずがない。そこでロイは報告出来ることだけを侯爵に伝え、不思議な亡国の一族に関して独自に調べ始めたのだった。

資料もなければ、リンデルともう一人の囚われている男以外どこにいるのか分からない一族。それだったらばと思い、ロイはある日二人を逃したのだった。
「あの時のオレ達には足が鉛のように重いという感覚があったんだ。でも、ロイが差し入れてくれた食いもんと飲み物で、それは簡単に解けた。オレの相方の呪術でそうなってたってことだ。相方は加法だから。」

逃しても、すぐに捕らえられることがないようロイは二人を匿い続けた。その時に二人から一族に関して知っていることを全て教えてもらい、更にはロイの言うことを信じるという薬草とロイの言ったことを忘れやすくなるという薬草を御礼にもらったのだった。
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