62 / 90
62 二度目の春
しおりを挟む
「また春が来たのかしら?」
「さあ、どうでしょう。タウンハウスに急いで戻ってくるようにという催促でしょうか」
「ふふ、違うわ。その反対。準備があるから、それまではここに居るようにって。迎え入れることが出来るようになったら教えてくれるそうよ。ねえ、あなた、何をしたの?ラドルは何をしに行ったの?」
「このことに関して、わたしは何もしていません。そして、ラドルもまた何もしていないと思います」
ロイは表情を変えることなくレイチェルの質問に答えた。これ以上は何も言うことはないという意志と共に。
「じゃあ、リンデルね。いいわ、本人に聞くから」
「それは、ちょっと」
「あら、あなたでも言い淀むことがあるのね」
「少々、無垢なレイチェル様には聞かせづらい話なもので」
「無垢じゃないわ、特にあなたも知っているようにわたしの手はね。まあ、男性を受け入れたことはないけれど。あなたと違って」
「ですから、それは噂話です」
「ね、色々耳にしていることは分かったでしょ。あなたが言うように無垢ではないと思うの。だから、本当のことを話して。点と点ではなく、線で結んで話してちょうだい」
「分かりました。本日、午後、この邸の使用人全員とレイチェル様でお茶をいただきましょう。ただ、カルセナとフリカに関してはわたしも知らないことが多々ございます。だから、彼女達がレイチェル様のご希望通りの話をするかは分かりません。ですが、ここでの滞在がしばらく伸びることを含め理由を伝えておいたほうがいいのは確かです。計画の変更もありますから」
レイチェルの願いを叶えることが、ロイの役目。
ロイは心の中でそう呟き、腹を括った。全てを話すというリスクを負ってでも、カルセナとフリカの協力を仰ごうと。
「さあ、どうでしょう。タウンハウスに急いで戻ってくるようにという催促でしょうか」
「ふふ、違うわ。その反対。準備があるから、それまではここに居るようにって。迎え入れることが出来るようになったら教えてくれるそうよ。ねえ、あなた、何をしたの?ラドルは何をしに行ったの?」
「このことに関して、わたしは何もしていません。そして、ラドルもまた何もしていないと思います」
ロイは表情を変えることなくレイチェルの質問に答えた。これ以上は何も言うことはないという意志と共に。
「じゃあ、リンデルね。いいわ、本人に聞くから」
「それは、ちょっと」
「あら、あなたでも言い淀むことがあるのね」
「少々、無垢なレイチェル様には聞かせづらい話なもので」
「無垢じゃないわ、特にあなたも知っているようにわたしの手はね。まあ、男性を受け入れたことはないけれど。あなたと違って」
「ですから、それは噂話です」
「ね、色々耳にしていることは分かったでしょ。あなたが言うように無垢ではないと思うの。だから、本当のことを話して。点と点ではなく、線で結んで話してちょうだい」
「分かりました。本日、午後、この邸の使用人全員とレイチェル様でお茶をいただきましょう。ただ、カルセナとフリカに関してはわたしも知らないことが多々ございます。だから、彼女達がレイチェル様のご希望通りの話をするかは分かりません。ですが、ここでの滞在がしばらく伸びることを含め理由を伝えておいたほうがいいのは確かです。計画の変更もありますから」
レイチェルの願いを叶えることが、ロイの役目。
ロイは心の中でそう呟き、腹を括った。全てを話すというリスクを負ってでも、カルセナとフリカの協力を仰ごうと。
21
*ご訪問ありがとうございました*
長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
お気に入りに追加
203
あなたにおすすめの小説

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています

王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!
夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。
挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。
だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……?
酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。
※小説家になろうでも投稿しています

白い結婚がいたたまれないので離縁を申し出たのですが……。
蓮実 アラタ
恋愛
その日、ティアラは夫に告げた。
「旦那様、私と離縁してくださいませんか?」
王命により政略結婚をしたティアラとオルドフ。
形だけの夫婦となった二人は互いに交わることはなかった。
お飾りの妻でいることに疲れてしまったティアラは、この関係を終わらせることを決意し、夫に離縁を申し出た。
しかしオルドフは、それを絶対に了承しないと言い出して……。
純情拗らせ夫と比較的クール妻のすれ違い純愛物語……のはず。
※小説家になろう様にも掲載しています。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』

生まれ変わり令嬢は、初恋相手への心残りを晴らします(と意気込んだのはいいものの、何やら先行き不穏です!?)
夕香里
恋愛
無実の罪をあえて被り、処刑されたイザベル。目を開けると産まれたての赤子になっていた。
どうやら処刑された後、同じ国の伯爵家にテレーゼと名付けられて生まれたらしい。
(よく分からないけれど、こうなったら前世の心残りを解消しましょう!)
そう思い、想い人──ユリウスの情報を集め始めると、何やら耳を疑うような噂ばかり入ってくる。
(冷酷無慈悲、血に飢えた皇帝、皇位簒だ──父帝殺害!? えっ、あの優しかったユースが……?)
記憶と真反対の噂に戸惑いながら、17歳になったテレーゼは彼に会うため皇宮の侍女に志願した。
だが、そこにいた彼は17年前と変わらない美貌を除いて過去の面影が一切無くなっていて──?
「はっ戯言を述べるのはいい加減にしろ。……臣下は狂帝だと噂するのに」
「そんなことありません。誰が何を言おうと、わたしはユリウス陛下がお優しい方だと知っています」
徐々に何者なのか疑われているのを知らぬまま、テレーゼとなったイザベルは、過去に囚われ続け、止まってしまった針を動かしていく。
これは悲恋に終わったはずの恋がもう一度、結ばれるまでの話。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~
Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。
「俺はお前を愛することはない!」
初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。
(この家も長くはもたないわね)
貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。
ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。
6話と7話の間が抜けてしまいました…
7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる