年に一度の旦那様

五十嵐

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60 異変

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ノアは北の外れの邸を出た二日後、予定通りマクレナン侯爵領にあるカントリーハウスに到着した。いつものように、到着したところで直ぐにクリスタルには会えなない。結局、会えたのは到着してから二日後。その間、領内の視察や有力者と会うなどして時間を潰した。

長い移動距離に、無駄に過ぎていく時間。ノアがレイチェルをタウンハウスに呼び寄せたのは正しい判断だろう。問題があったとしても。
そう考えながら、ノアはアレクを見遣った。身分はロイよりも上だが、能力は下。侯爵の従者に仕え、厳しい再教育を受けたが画期的に能力は上がらなかった。どう考えても、アレクにはレイチェルを呼び寄せることで発生する問題を事前に最小限に留める策など練れないだろう。それが出来るくらいならば、今現在タウンハウスの中で起きているアナベルとナタリアの揉め事は起きてない。

レイチェルと共にロイが戻ったのならば、ノアはアレクに見切りをつけようと思った。学生時代からの付き合いで楽しい思い出は多々ある。しかし、思い出だけで侯爵業を遂行していくことは出来ない。必要なのは能力。それがなければ切り捨てるだけだ。

アレクを見切ることで、周囲はノアが情で判断する人間ではないと知るだろう。能力で人を判断すると。それは他の使用人達にとって重要なメッセージとなる。
その前に、アレクには今ある問題を少しでも片付けてもらわなくてはならない。残念ながら、先手ではなく全て後手に回るだろうが。

カントリーハウスからタウンハウスへ向かう馬車の中で、ノアは再びアナベルとナタリアのことを考えた。レイチェルが体調を回復させ馬車での移動が可能になるのは、ロイの言葉からするとおよそ一ヶ月後。
その時、二人はレイチェルにどんな態度を取るだろう。最近の醜い言い争いをする二人を思い出し、ノアは頭痛を覚えた。

そしてその頭痛は、途中の宿泊地に到着すると更に酷くなったのだった。
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*ご訪問ありがとうございました*

長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
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