年に一度の旦那様

五十嵐

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54 ラドルに流れる血

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ラドルはスクラスタン王国の王都を目指していた。郊外で暮らすレイチェルの祖父であり、ベテルリナの父、前トラットリー侯爵に会う為に。前侯爵が暮らす邸にはフリカとの間に生まれた長男と、他の女との間に生まれた三男がいる。次男と四男は現トラットリー侯爵邸で使用人として働いているが、生まれた子供を均等にそれぞれの邸に振り分けているのではない。たまたまそうなってしまっただけだ。

四人の子供は長男と次男がフリカとの子。後の二人はそれぞれ違う女が産んだ。
スクラスタン王国は別に一夫多妻制の国ではない。ラドルが前侯爵に命じられ、半ば強制的に関係を持たされたのだ。前侯爵の子供欲しさに。と言っても、前侯爵は子供好きでも、実はラドルが前侯爵の落胤という訳でもない。
ラドルの血を受け継ぐ子が欲しかっただけだ。特別な、ラドルの子を。


ラドルの祖父は元々スクラスタン王国の国民ではない。今はなき小さな国の民だった。その国は他国とあまり交流がなかったが、とある国と交易を結んだことで破滅へと向かってしまった。元々は親切心でとある国を助けたというのに。

小国の国民には何故か一定の割合で不思議な力を持つ者がいた。その力の多くは呪術。薬草を薬に加工する段階で力を使うと、特別な薬を作ることが出来た。本来ならば人を助ける為の力。しかし助けられた好戦的な国にとっては邪魔な力だった。人を救う力など。だから、多くの国民は力の有無に関わらず殺害されてしまったのだ。逃げ出せたのはほんの僅か。

しかし、王族と貴族に至ってはその血を絶対に受け継がせない為に、全員を粛清することとなっていた。ところが血の気の多い、若い将校達は美しい貴族の娘を戦利品として連れ帰ってしまったのだった。規範に反して。

その中に王家の姫が二人含まれていたことなど知らずに。
最も力が出やすく、中でも特別な力を持つという王家の姫を。
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