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43 ノアの醜聞を払拭する為に
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ノアとレイチェルが婚約してから、ロイは様々な企てを準備し効果的に行っていった。
まずは愛人二人。ロイの言葉巧みな報告により侯爵はレイチェルを結婚の半年前に侯爵邸に移り住まわせた。正妻となるレイチェルの登場で愛人二人は自分達の立場を危ぶむ。そこでロイは二人を効果的に励ましたのだった、『ノア様は子供のような体型のコリンス伯爵令嬢よりもあなたのような魅力的な方を好いています。」と。言われた二人は、確かにそうだとレイチェルに邸の中で遭遇するたびにその体を見下すように見つめるようになった。
ノアにも二人にどういう言葉を掛けたのか報告は怠らない。ロイからだけでなく、ノアにもまた『大人の女性の魅力』で二人を褒めて欲しかったからだ。ノアがそれを口にするたびに二人は『大人の女性の魅力』を使ってノアへの奉仕に励んだ、ロイの読み通りに。
ノアはロイの二人へのコントロールを評価した。面倒な存在だと思っていたレイチェルが来たというのに、それすら上手く利用し二人を気分良く過ごさせているのだから。
気分が良い二人は前にも増してノアへの奉仕に励む。本当に良いサイクルが生まれたとノアは思っていた。そこにノアには報告がなされないロイの助言が愛人にあることは知らず。
『ノア様のお心が誰に向いているかは言わずもがなです。邸内では難しいでしょうが、外では少し多めに甘えれば喜ばれるのではないでしょうか。ただ、羽目を外すのは良くありません。様子を窺いながら甘えてみては?』
『お二人はノア様に甘えたいのではないでしょうか。』
ロイの言葉に嘘はない。ただ、言う相手とタイミングを見計らっているだけだ。たまには多少脚色を加えるが、それも真実の上にのみ。
だから望む状況が訪れるまでには時間が掛かってしまった。しかし、結婚まで二ヶ月を切った頃には、ノアが最後に独身を楽しんでいるだけとは言えない状態に辿り着いた。
ロイは侯爵へ願い出た。『ノア様の体裁を守る為にコリンス伯爵令嬢には領地で静養していただいてはいかがでしょうか?』と。あのレイチェルが倒れた理由を報告した時に。
都合の良いことに、半年の侯爵邸での暮らしでもレイチェルの肉付きは画期的に良くはならなかった。これを利用し、『静養』という名目を大々的に周囲に知らしめようとしたのだ。アナベルとナタリアはレイチェルを気遣い気落ちしてしまったノアの心を慰める為に傍にいる、数多のプレゼントはそのお礼ということにしてしまえばいいと。多少無理があっても、レイチェルが領地から静養の為に戻らなければ上手く噂を撒くことで押し通せる。
最初は『考えておく』としか言わなかった侯爵だったが、レイチェルの体調が思わしくないという何度目かの報告がスカリーからあった時心を決めた。邸内の他の使用人達からの、愛人二人からレイチェルへの嫌味や当て擦りが酷くなっているとの報告も手伝って。
侯爵の最終決定は結婚式の二週間前。レイチェルの静養の準備をするにはもう十分な時間は残されていなかった。しかし、その負の要因こそがロイにとってのチャンスだった。結婚式が近づきばたばたしている侯爵邸で、更にレイチェルの静養の段取りを問題なく取り仕切れるのはロイしかいなかったのだ。
「出来るか?」
「はい。ノア様の為ならば、寝る間も惜しんで動きます。そして最善の結果を生むようの致します。そこで一つ許可が欲しいのですが。」
「何だ、言ってみろ。」
「はい。コリンス伯爵夫人に接触したいのですが。」
「理由は?」
ロイはコリンス伯爵夫人を金で釣りたいと侯爵に告げた。伯爵に隠れて借金をしている夫人ならば、ロイの依頼を金さえ積めば引き受けてくれるかもしれないと。
「ロイ、金だけでは不十分だ。足元を見て金をちらつかせるのは確かに良い策だ。でも、万全ではない。力を貸そう。」
伯爵夫人に対し、侯爵が一枚噛んでくるであろうというロイの読みは当たった。侯爵とてノアの為に計画を万全にしたいのは明白なのだから。
ノアの醜聞を正当化する為の計画準備が整ったのは結婚式の数日前。
そして、ロイは今、その結果を物陰から伺っていた。
顔色が悪いというのに、伯爵夫人は得意分野で活躍中だ。様々な夫人達へレイチェルへの過去における虐待の言葉を囁いている。いずれ親切な夫人がパーティの主催者である侯爵家の主人に小声で教えてくれることだろう。聞いたことに顔を顰めて口を噤む者も一定数はいるだろうが、貴族社会では噤まない者の方がマジョリティ。侯爵は教えられる内容を聞くたびに、『実家での仕打ちに心を痛めていたレイチェルを救う為に、侯爵家で暮らさせたがそれでも駄目だった。だから空気の良い領地で静養させるつもりだ。そうすれば、伯爵家からも当分離れられる。』とレイチェルを気遣う言葉を相手に伝えることになっている。
レイチェルが帰る家を無くすというロイの計画も動きだした。
まずは愛人二人。ロイの言葉巧みな報告により侯爵はレイチェルを結婚の半年前に侯爵邸に移り住まわせた。正妻となるレイチェルの登場で愛人二人は自分達の立場を危ぶむ。そこでロイは二人を効果的に励ましたのだった、『ノア様は子供のような体型のコリンス伯爵令嬢よりもあなたのような魅力的な方を好いています。」と。言われた二人は、確かにそうだとレイチェルに邸の中で遭遇するたびにその体を見下すように見つめるようになった。
ノアにも二人にどういう言葉を掛けたのか報告は怠らない。ロイからだけでなく、ノアにもまた『大人の女性の魅力』で二人を褒めて欲しかったからだ。ノアがそれを口にするたびに二人は『大人の女性の魅力』を使ってノアへの奉仕に励んだ、ロイの読み通りに。
ノアはロイの二人へのコントロールを評価した。面倒な存在だと思っていたレイチェルが来たというのに、それすら上手く利用し二人を気分良く過ごさせているのだから。
気分が良い二人は前にも増してノアへの奉仕に励む。本当に良いサイクルが生まれたとノアは思っていた。そこにノアには報告がなされないロイの助言が愛人にあることは知らず。
『ノア様のお心が誰に向いているかは言わずもがなです。邸内では難しいでしょうが、外では少し多めに甘えれば喜ばれるのではないでしょうか。ただ、羽目を外すのは良くありません。様子を窺いながら甘えてみては?』
『お二人はノア様に甘えたいのではないでしょうか。』
ロイの言葉に嘘はない。ただ、言う相手とタイミングを見計らっているだけだ。たまには多少脚色を加えるが、それも真実の上にのみ。
だから望む状況が訪れるまでには時間が掛かってしまった。しかし、結婚まで二ヶ月を切った頃には、ノアが最後に独身を楽しんでいるだけとは言えない状態に辿り着いた。
ロイは侯爵へ願い出た。『ノア様の体裁を守る為にコリンス伯爵令嬢には領地で静養していただいてはいかがでしょうか?』と。あのレイチェルが倒れた理由を報告した時に。
都合の良いことに、半年の侯爵邸での暮らしでもレイチェルの肉付きは画期的に良くはならなかった。これを利用し、『静養』という名目を大々的に周囲に知らしめようとしたのだ。アナベルとナタリアはレイチェルを気遣い気落ちしてしまったノアの心を慰める為に傍にいる、数多のプレゼントはそのお礼ということにしてしまえばいいと。多少無理があっても、レイチェルが領地から静養の為に戻らなければ上手く噂を撒くことで押し通せる。
最初は『考えておく』としか言わなかった侯爵だったが、レイチェルの体調が思わしくないという何度目かの報告がスカリーからあった時心を決めた。邸内の他の使用人達からの、愛人二人からレイチェルへの嫌味や当て擦りが酷くなっているとの報告も手伝って。
侯爵の最終決定は結婚式の二週間前。レイチェルの静養の準備をするにはもう十分な時間は残されていなかった。しかし、その負の要因こそがロイにとってのチャンスだった。結婚式が近づきばたばたしている侯爵邸で、更にレイチェルの静養の段取りを問題なく取り仕切れるのはロイしかいなかったのだ。
「出来るか?」
「はい。ノア様の為ならば、寝る間も惜しんで動きます。そして最善の結果を生むようの致します。そこで一つ許可が欲しいのですが。」
「何だ、言ってみろ。」
「はい。コリンス伯爵夫人に接触したいのですが。」
「理由は?」
ロイはコリンス伯爵夫人を金で釣りたいと侯爵に告げた。伯爵に隠れて借金をしている夫人ならば、ロイの依頼を金さえ積めば引き受けてくれるかもしれないと。
「ロイ、金だけでは不十分だ。足元を見て金をちらつかせるのは確かに良い策だ。でも、万全ではない。力を貸そう。」
伯爵夫人に対し、侯爵が一枚噛んでくるであろうというロイの読みは当たった。侯爵とてノアの為に計画を万全にしたいのは明白なのだから。
ノアの醜聞を正当化する為の計画準備が整ったのは結婚式の数日前。
そして、ロイは今、その結果を物陰から伺っていた。
顔色が悪いというのに、伯爵夫人は得意分野で活躍中だ。様々な夫人達へレイチェルへの過去における虐待の言葉を囁いている。いずれ親切な夫人がパーティの主催者である侯爵家の主人に小声で教えてくれることだろう。聞いたことに顔を顰めて口を噤む者も一定数はいるだろうが、貴族社会では噤まない者の方がマジョリティ。侯爵は教えられる内容を聞くたびに、『実家での仕打ちに心を痛めていたレイチェルを救う為に、侯爵家で暮らさせたがそれでも駄目だった。だから空気の良い領地で静養させるつもりだ。そうすれば、伯爵家からも当分離れられる。』とレイチェルを気遣う言葉を相手に伝えることになっている。
レイチェルが帰る家を無くすというロイの計画も動きだした。
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