年に一度の旦那様

五十嵐

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結婚式まで残すところ一ヶ月。全ての準備が整い始めた。
婚礼衣装や当日の披露パーティの準備が侯爵家の威信にかけて進められて行く。

そして、ロイの立てた計画も着々と。

アナベルとナタリアは邸の中で以前よりもノアとベタベタし、外で取るべき距離感までもが麻痺し始めていた。滑稽な程、ロイの狙い通り動いてくれる。
勿論邸内のことも、外での様子も侯爵が知らないはずがない。しかし、ロイ、スカリー、アレクから上がる報告は皆ノアの夫人教育を褒めるもの。内容はまちまちだったが。

ロイの報告では、ノアはレイチェルの立場を分からせながらも心遣いの贈り物を送りることでしっかり懐柔出来ている。
スカリーからは、既にノアはレイチェルの心をしっかり掴んでいる。だからレイチェルはノアの言うことを信じ、与えられた教育に励むことで振り向いてもらえるよう努力を怠らない。
そして、アレクは違う視点からノアは愛人二人とは遊んでいるだけ、本心ではレイチェルを一番に気に入っていると伝えていた。ただ、付き合いが長い二人をどうすることも出来ず、結婚までは優先しているだけだとも。

侯爵の耳に入ってくる限り、愛人二人とレイチェルが言い争うような揉め事は起きていない。三人の接触を目にした使用人達は皆、レイチェルは愛人二人が言う内容を淡々と聞いているだけのようだと口にしていた。
様々な報告から、侯爵は見えていない点と点を結ぶ線を自分の頭の中で引き、ノアが上手く取り計らっているのだろうと結論付けた。

「ロイ、その後のレイチェルはどうだ?」
「はい。侯爵領の勉強は全て終わり、最近では実務も手伝うようになりました。」
「聞きたいのはそのことではなく、ノア、そしてあの二人とのことだ。おまえは後ろに控えて全て聞いているのだろう。」
「コリンス伯爵令嬢の様子から察するに、ノア様の言葉だけを頼りに、そして信じているようです。」
「そうか。」
「ですが、アナベル様とナタリア様は近頃随分と行動に問題があるようです。外でのご様子は侯爵様のお耳にも入っていることと思いますが。」
「困ったものだ。ノアも一時の熱に浮かされているだけだろうが。下手に禁止して、女が増えても困るし、子が出来ても困る。」

全てはノアに甘い侯爵が悪いと思いながらも、ロイは神妙な面持ちで頷いた。
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*ご訪問ありがとうございました*

長い間更新しませんで…申し訳ございませんでした。感想をいただいていたのに、漸く気付き心を入れ替えようと思ったところです。
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