年に一度の旦那様

五十嵐

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34 進む計画

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ノアのあの宣言以来、それまでが嘘のようにアナベルとナタリアがレイチェルの前に現れるようになった。
目は口ほどに物を言う。二人の目は共通して、レイチェルの順位が三人の中で一番下だと言っていた。この邸の中で、ノアからの寵愛をお零れ程度も貰えないレイチェルには女の価値など全くないと。

それは次第に視線から言葉へ。時には故意の接触すらしてくるようになった。

レイチェルの後ろに控えているロイはただその様子を見るだけ。
アナベルもナタリアもロイは自分達の味方だと認識しているので、嫌味にしろ態度にしろ増長していく一方だった。

「レイチェル様はいつも同じようなドレスね。」
「だって、ほら、お胸の成長もしなさそうだから新しいものは必要ないでしょう。」
「ふふ、そうね。ノアもがっかりでしょうね、中身を見る気も失せそう。」
「本当に、ねぇ、あれじゃあね。ノアが可哀想。でも、触れて貰えないから成長しないのかしら?」
「まあ、ナタリア、それじゃあ絶望的じゃない!伯爵令嬢で身分だけはあるのにねぇ。」

二人は兎に角レイチェルに嫌味をぶつけなければいられないようになっていった。


「困ったものだ、二人にも。それで、レイチェルは?」
ロイは見ているだけではなかった。日々、愛人二人とレイチェルのやり取りを報告していた。少しずつ情報操作を加えながら。
だからノアは愛人二人の嫌味はレイチェルにノアを取られまいとの現れだと思っている。決してそれだけではないというのに。

「レイチェルに絹の靴下とか髪飾りとか適当に贈っておいてくれ。メッセージカードには『君の対応に心からの感謝を』、かな。」
「畏まりました。渡す際には、いつものようにノア様が褒めていたと伝えておきます。愛人二人と衝突しないよう、時には態度を偽ることも必要なのを理解している姿を褒めていたと。」
「ああ、そうしてくれ。しかし面白いよな。アナベルもナタリアも最近妙に胸を強調してくるんだ。レイチェルにもそんな嫌味を言ってるなんて。二人には柔らかくて揉みごたえのある最高の胸だと褒めておくか。」
「お二人とも、お喜びになるかと。それと、そろそろお二人を競わせたらどうでしょうか。初夜の権利を賭けて。」
「面白いことになるだろうが、実はもっと良いことを考えている。どうせなら三人で過ごそうかと。」
「それでは、お二人は結局競うことになりますね。」
「ああ。最初は面倒な存在だと思っていたレイチェルだが、こうなってくると本当に良い夜のエッセンスだな。」

同調するかのように頷きながら、ロイはレイチェルに何を贈ろうか考えた。
ノアから委譲されているレイチェルに適当な物を購入し贈る権利。ロイはそれを大切に使っている。決して適当に選ぶことなどなく。
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