年に一度の旦那様

五十嵐

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11 もう一人の従者、アレク

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どこにでも計算できない因子は溢れている。侯爵にとっての一つが、ノアのもう一人の従者であるアレクだったのかもしれない。

アレクは男爵家の三男で、実家はマクレナン侯爵領の一部の管理を生業としている。理由は違うが、ロイ同様マクレナン侯爵家の為に働くのは当然の立場だ。ところが、ロイとは違う仕え方をノアにしてしまった。

同じ主人に仕えてはいるが、平民のロイと貴族のアレクでは手当も待遇も違う。その最たる例が、仕事内容選び。所謂美味しい仕事ばかりをアレクは選んだ。夜会等の只管待ち時間が長いものや、立ちっぱなしの仕事をアレクは嫌った。当然、その手の仕事は全てロイ。しかし、実はその手の仕事がロイにとって情報収集し易いとはアレクは知らないで貢献しているに過ぎなかった。

アレクのノアに対する世話は専ら色事が中心だった。令嬢達への手紙の代筆に、プレゼントや花選びと。ロイはアレクが購入費用の伝票を一枚にして誤魔化しているが、自分の分も買っていることなどお見通しで敢えて見て見ぬふりをしていた。

アレクが絶対にロイに譲らない仕事がいくつかある。その一つが花街への同行。ノアは貴族令嬢との恋の駆け引きだけで満足出来なくなった頃から花街で遊ぶことを覚えた。教えたのはアレクだとロイは知っている。しかもただ待つのではなく、アレクも待ち時間を利用し手頃な女で楽しんでいた。

いつしか高級娼婦ではない女と遊んでみたいと言ったノアに、アナベルとナタリアを引き合わせたのもアレクだった。
本来ならば、侯爵へ知らせる案件だろう。しかし、ここでもロイは無言を決め込んだ。ノアが馬鹿な女達に入れ込んだところでロイには痛くも痒くもない。アレクが股の緩い貴族令嬢と何故知り合いなのか、どうしてその二人を紹介したのか裏を探ることが出来ない侯爵次期当主が間抜けなだけだ。
それでも、いつかの為にアナベルとナタリアがアレクにどんな便宜を図ったのかロイはしっかりと調べはしたのだった。
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