どうかあなたが

五十嵐

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46 積み重なる楽しいこと

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かおるが家に着いて少しした頃、樹からメッセージが届いた。
『時間が出来たら連絡が欲しい』

画面の文字を見ながら、かおるは樹が今どこにいるのだろうかと考えた。そして直接電話するよりは、メッセージを送り返しワンクッションおくことにしたのだった。

『樹さんは今どちらにいますか?わたしは家ですので、ご都合を教えていただければ連絡します。』

メッセージを送り終わるとすぐに掛かってきた電話は樹からだった。
『お疲れ。』
「お疲れ様です。今、どちらですか?」
『ん、会社出たとこ。』
「もう少ししてから掛けましょうか?」
『いい、このままかおるの声を聞きながら歩くから。あのさ、明日、一緒に食事しよ。えっと、夕飯。明日は何があっても会社を7時に出るようにするから、7時半スタートくらいで。』
「分かりました。わたしも7時には出れるように、あの、ここは言わせて下さい。努力、します。」
『オレの為の努力は歓迎するよ。ところで今日はどうだった?』
「相変わらず、皆さん親切でした。先週同様お夕飯もご一緒させていただきました。」
『そっか。いいなぁ、オレもかおると一緒にメシしたかったな。』
「あの、わたし、…出張前の最後の夕食を、その、樹さんと一緒に食べれるの楽しみです。ううん、樹さんと一緒にいられる時間が楽しみです。」
『…ごめん、今、オレにとって凄く都合のいい返事が返ってきた気がしたんだけど、幻聴じゃないよな。』
「誰と一緒に食べるのか、…重要ですよね。樹さん、この間、そういうこと言ってました。だから、わたしの思っていることを全部伝えたくて。」
『ヤバいんだけど。ここ、公道なのに、嬉しくて叫びそう。』
「子供みたい。」
『なんとでも言ってくれ。嬉しいものは嬉しいんだから。』

こんなにも毎日は楽しくなるものなんだと思いながら、かおるは樹との会話を続けた。

恭祐の言動、感情を中心として回っていたかおるの毎日。それが、会社を辞めると恭祐に伝わったときから、本来の持ち主であるかおるに再び戻ってきたようだった。それをかおるが心の底から望んでいるかどうかは別として。
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