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31 気遣い
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「折角車で来ているから、家まで送るよ。駅から先の道は教えてもらえる?」
「はい。」
全ての事象には大なり小なり理由が伴う。恭祐と働きだした頃に何度も言われた言葉。
かおるは樹からの申し出に頷きながら、既にメッセージを送られた時から全てが始まっていたと理解した。
最初は都心のマンションに住む樹に、かおるが近くまで出ることを申し出た。けれど誘ったのは自分だから迎えに行くと樹に言われてしまえば、かおるは了承するしかない。経験が乏しい故に、樹の流れるような話術に頷くのが当然に思えたのだ。最寄り駅を伝えたのも、流れに従ったまで。
しかし、樹は電車移動よりは楽だからと最寄り駅を伝えたにもかかわらず車で来ることになった。楽だと言われているのに、苦を取って下さいなどとは人は言えない。そしてあの待ち合わせにつながった。
レストランでは、樹はアルコールを注文しなかった。車で来ていることを理由に、アルコールが得意ではないかおるにわざわざ合わせているのではないと言えるからだろう。
そして車だからと送ることをさらっと申し出る。
かおるは改めて樹が女子社員に人気があることを理解した。
彼は本当に紳士なのだ。しかも物事が自然に進むよう考えた上での振る舞い。そこには様々な計算があることが分かる。結局車だって、かおるにとっての楽で運転していた樹はどうだろうか。
樹が紳士ならば、恭祐は…。
再びかおるの頭に恭祐のことが思い出された。どうしても樹を通して、恭祐を思い出してしまう。かおるにとって、絶対的存在の王である恭祐を。
かおるは恭祐にとっては召使い、もしかしたら、奴隷程度の存在なのかもしれない。だから、何もかも命令通り行うことが当然。今の世の中、間違えを犯し首を刎ねられることがないだけ幸運だと思え、なのかもしれない。
樹が『楽』なら恭祐は『苦』、本当に対極だとかおるは思った。
「はい。」
全ての事象には大なり小なり理由が伴う。恭祐と働きだした頃に何度も言われた言葉。
かおるは樹からの申し出に頷きながら、既にメッセージを送られた時から全てが始まっていたと理解した。
最初は都心のマンションに住む樹に、かおるが近くまで出ることを申し出た。けれど誘ったのは自分だから迎えに行くと樹に言われてしまえば、かおるは了承するしかない。経験が乏しい故に、樹の流れるような話術に頷くのが当然に思えたのだ。最寄り駅を伝えたのも、流れに従ったまで。
しかし、樹は電車移動よりは楽だからと最寄り駅を伝えたにもかかわらず車で来ることになった。楽だと言われているのに、苦を取って下さいなどとは人は言えない。そしてあの待ち合わせにつながった。
レストランでは、樹はアルコールを注文しなかった。車で来ていることを理由に、アルコールが得意ではないかおるにわざわざ合わせているのではないと言えるからだろう。
そして車だからと送ることをさらっと申し出る。
かおるは改めて樹が女子社員に人気があることを理解した。
彼は本当に紳士なのだ。しかも物事が自然に進むよう考えた上での振る舞い。そこには様々な計算があることが分かる。結局車だって、かおるにとっての楽で運転していた樹はどうだろうか。
樹が紳士ならば、恭祐は…。
再びかおるの頭に恭祐のことが思い出された。どうしても樹を通して、恭祐を思い出してしまう。かおるにとって、絶対的存在の王である恭祐を。
かおるは恭祐にとっては召使い、もしかしたら、奴隷程度の存在なのかもしれない。だから、何もかも命令通り行うことが当然。今の世の中、間違えを犯し首を刎ねられることがないだけ幸運だと思え、なのかもしれない。
樹が『楽』なら恭祐は『苦』、本当に対極だとかおるは思った。
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