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王都とある修道院18 お姫様がしていたこと
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素早く駆け寄って子供を起き上がらせ宥めたのはアルフレッド一行の中にいた修道女の一人。彼女は子供に大きな怪我がないかを確かめるのと、アルフレッドの前で子供が大泣きすることを避けたいという気持ちが入り混じり素早い行動を取ったのだろう。
ここは王家管轄修道院。そこでアルフレッドが取るべき行動は決まっている。自分自身にすら計算してその動きや感情を植え付けなくてはならないとは。自ら走って行って子供を起き上がらせ、怪我をしていないか直接本人に尋ねることが出来たのなら。でも、その行動は感情から。感情で行動すれば、誰かの思惑を育てかねない。例えば、隣にいるクリスタルなら眩暈を装いアルフレッドに抱き起こしてもらうことくらい考えるだろう。
「修道院長、あの子供は大丈夫だろうか。もしも怪我をしたようなら、わたしの護衛に医務室まで連れて行かせるが」
「殿下、ご配慮ありがとうございます。あの様子でしたら大丈夫かと」
「そうか、それは良かった。しかし、何かあったら遠慮せず言ってくれ」
「ありがとうございます」
起き上がらせてもらった子供は修道院長と目が合うと、『痛いけど僕は我慢出来るから泣かないよ』と言って走ってきた。走ったから転んだのに、また走りだすとは…。アルフレッドは心の中で自分も失敗して躓いても、再び直ぐに起き上がれたならば、スカーレットにどういう行動を取ったのだろうと考えながら子供の様子を見守った。
ところがその子供は修道院長の前まで来ると、不意にアルフレッドの方を向いて話し掛けてきた。
「王子様、ありがとう」
何故感謝の言葉を子供が口にしたのかは分からないが、アルフレッドは一先ず頷いた。
「殿下、子供達にとってこのバザーがお祭りのように楽しい行事でして、皆、感謝しているのです」
「うん。前にお姫様みたいに綺麗なお姉ちゃんが教えてくれたんだ。王様や王子様が修道院と孤児院を守ってくれるだけじゃなく、良いお祭りが出来るようにもしてくれてるって」
お姫様みたいに綺麗なお姉ちゃん、それはスカーレットのことだろうとアルフレッドは直ぐに気付いた。子供は大人の事情を知らないから口にしたが、大人達はそこに触れないようにしているのは明らかだ。
子供の話からスカーレットはお忍びでバザー当日にやって来て、子供達に毎年お揃いの刺繍が入った新しいハンカチと菓子をプレゼントしていたらしい。それも王子様からのお遣いだと言って。
「明日のバザーにそのお姉ちゃんは来れなくなってしまったんだ。でもみんなのことは思っているから」
「そっかぁ」
アルフレッドは修道院の視察が終わったら、直ぐにスカーレットの名で菓子の差し入れを手配しなければならないと考えた。それも王都で流行りの菓子ではなく、スカーレットが差し入れていたものに近いものを。スカーレットがアルフレッドの為にしてくれていたことを返さなければ。知る方法はいくらでもある。
「お姉ちゃんも王子様のお遣いなの?」
修道服ではないクリスタルの存在が気になったその子供は思ったことを尋ねた。そしてクリスタルからの返事を貰おうと『ねえ、教えて』とワンピースの裾に手を伸ばそうとした。
「汚らしい手で触れないで」
しかし、聞こえてきたのは返事ではなくクリスタルの心無い拒絶の言葉だった。
ここは王家管轄修道院。そこでアルフレッドが取るべき行動は決まっている。自分自身にすら計算してその動きや感情を植え付けなくてはならないとは。自ら走って行って子供を起き上がらせ、怪我をしていないか直接本人に尋ねることが出来たのなら。でも、その行動は感情から。感情で行動すれば、誰かの思惑を育てかねない。例えば、隣にいるクリスタルなら眩暈を装いアルフレッドに抱き起こしてもらうことくらい考えるだろう。
「修道院長、あの子供は大丈夫だろうか。もしも怪我をしたようなら、わたしの護衛に医務室まで連れて行かせるが」
「殿下、ご配慮ありがとうございます。あの様子でしたら大丈夫かと」
「そうか、それは良かった。しかし、何かあったら遠慮せず言ってくれ」
「ありがとうございます」
起き上がらせてもらった子供は修道院長と目が合うと、『痛いけど僕は我慢出来るから泣かないよ』と言って走ってきた。走ったから転んだのに、また走りだすとは…。アルフレッドは心の中で自分も失敗して躓いても、再び直ぐに起き上がれたならば、スカーレットにどういう行動を取ったのだろうと考えながら子供の様子を見守った。
ところがその子供は修道院長の前まで来ると、不意にアルフレッドの方を向いて話し掛けてきた。
「王子様、ありがとう」
何故感謝の言葉を子供が口にしたのかは分からないが、アルフレッドは一先ず頷いた。
「殿下、子供達にとってこのバザーがお祭りのように楽しい行事でして、皆、感謝しているのです」
「うん。前にお姫様みたいに綺麗なお姉ちゃんが教えてくれたんだ。王様や王子様が修道院と孤児院を守ってくれるだけじゃなく、良いお祭りが出来るようにもしてくれてるって」
お姫様みたいに綺麗なお姉ちゃん、それはスカーレットのことだろうとアルフレッドは直ぐに気付いた。子供は大人の事情を知らないから口にしたが、大人達はそこに触れないようにしているのは明らかだ。
子供の話からスカーレットはお忍びでバザー当日にやって来て、子供達に毎年お揃いの刺繍が入った新しいハンカチと菓子をプレゼントしていたらしい。それも王子様からのお遣いだと言って。
「明日のバザーにそのお姉ちゃんは来れなくなってしまったんだ。でもみんなのことは思っているから」
「そっかぁ」
アルフレッドは修道院の視察が終わったら、直ぐにスカーレットの名で菓子の差し入れを手配しなければならないと考えた。それも王都で流行りの菓子ではなく、スカーレットが差し入れていたものに近いものを。スカーレットがアルフレッドの為にしてくれていたことを返さなければ。知る方法はいくらでもある。
「お姉ちゃんも王子様のお遣いなの?」
修道服ではないクリスタルの存在が気になったその子供は思ったことを尋ねた。そしてクリスタルからの返事を貰おうと『ねえ、教えて』とワンピースの裾に手を伸ばそうとした。
「汚らしい手で触れないで」
しかし、聞こえてきたのは返事ではなくクリスタルの心無い拒絶の言葉だった。
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