オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではございますが~

五十嵐

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王都とある修道院17 ジョイスからの情報

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『当時、貴族学院でスカーレットに攻撃的だった者は』
ジョイスは手紙の中で、どこの家の令嬢がスカーレットに対し特に攻撃的だったかをアルフレッドに知らせてくれた。皆、伯爵家以上の家格の令嬢。理由は簡単。スカーレットが婚約者から外れれば、自分にもチャンスが訪れると思ったからだ。それはシシリアという切っ掛けなどさておき、先ずはスカーレットを蹴落としたい者達ばかりだった。そう、彼女達は端からシシリアなど相手にしていないなかった。小石は蹴とばせばいいだけ、しかし大きく重い石はそうはいかない。だから結託したのだ。ある者は石にひびが入るよう、ある者は石が誰にとっても邪魔だと感じるよう力を合わせた。

それまでは近い存在だったアルフレッド達、本来は学院生達を導くべき学院長に教師、それに加え令嬢達、更には姉妹がいる令息までもがそれぞれの目的の為にスカーレットを攻撃していたということだ。アルフレッドが認識していた『貴族だから王族の意向に沿ってそういう行動をとってしまっていた』よりも、スカーレットを取り巻く状況は知れば知る程酷かった。
残念なのは十あるモノをそれぞれが分けて、スカーレットを攻撃していたのではないこと。それぞれが上限なく言葉や態度でスカーレットを追い詰めようとしたことだ。
知ろうとしないことは本当に罪だとジョイスの手紙はアルフレッドに教えてくれた。その時に知っていれば、少なくてもスカーレットを取り巻く噂の信憑性くらいは…、否、あの頃のアルフレッドでは無理だっただろう。今だからこそ、この考えに辿り着けたのだ。

そして小声で自分の血筋を囁いたクリスタル。彼女はジョイスが知ることを放棄し、都合が良いからと放置した罪だったはず。スカーレットを蹴落としたい令嬢達とは毛色の違う存在だった、攻撃的という部分は同じでも。それが、今はアルフレッドが想像する欲望を抱いている。

ここでアルフレッドがクリスタルの言葉を聞いた上で適当に流し放置してしまえば、勝手な解釈をされかねない。ジョイスの手紙を読んだ今はそれが良く分かる。それにしてもスカーレットへの反省の為にいる修道院で、アルフレッドの婚約者になるよう画策するとはクリスタルは随分強かだ。王子妃という立場には強かさが確かに必要、しかしアルフレッドが求めるのは他者を追い込み支配することや、弱みを利用して命令することではない。もっと正々堂々とした強かを持つことだ。

「侯爵家と言えば、オランデール伯爵令嬢はその後キャストール侯爵令嬢との交流は?」
この質問にどう答えるかで、アルフレッドはクリスタルを試そうと思った。交流以前の問題があることを百も承知で。ところがその時、クリスタルに考える時間を与えるように、目と鼻の先で小さな子供が転んで泣きだしたのだった。
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