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290 焦りからのノーマンの行動
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ノーマンから事実の報告は受けた。そして昨晩何があったのかを薫は理解した。更にはサブリナの気持ちや意見も聞くことは出来た。しかし、ノーマンは自分の気持ちを一言も告げず、ただ謝罪するのみ。今後どうしたいのかも話さない。
「ねえ、ノーマン。その状況は人妻だったサビィならば、許されると思ってしたことなの?」
ノーマンの答え如何によって、サブリナは体よりも心を大きく傷付けられることになる。それでも薫はノーマンに問い質さなければならないと思った。
「違います。焦ったんです」
「焦る?」
無かったことにしたいのか、手を付けても許されると思ったのか、どちらの質問にも答えは『はい』か『いいえ』しかないと思っていた薫に返ってきたのは『焦り』。それはどういうことなのか。
「愚かにも、わたしはサブリナ様の前向きな姿勢に恋焦がれてしまいました。特にキッチンで一生懸命新しいことに取り組む姿には、可愛らしくも愛おしいと思うようになったのです」
ノーマンのキャラクターからは考えられない、サブリナへの愛の告白。その対象がノーマンの隣に居る為、どうしてか真っ直ぐな言葉は薫を見ながら綴られてしまうのだが。
「わたしが思うように、他の者も同じ気持ちを持つでしょう。昨日の町では皆がサブリナ様に好意的でしたから。それにケレット辺境伯領へお出かけになっているトビアス様の様にサブリナ様の才能に惹かれる方もいるでしょう。わたしは不安だったのです、トビアス様がサブリナ様にその能力を発揮する為にセーレライド侯爵領へ来てはどうかと伝えるのではないかと。だから焦っていました。サブリナ様を誰にも取られたくないし、どこへも行かせたくないから。その焦りから想いを告げ愛し合ってしまったのです、後先を考えずに。サブリナ様が痛がった時も、わたしが貴族のように優しくなく荒々しいのかと思い反省しつつも、求められたことに喜びを感じ続けてしまいました。そしてシーツを見て驚いたのです」
薫はノーマンがこんな長文を話し、案外熱い想いを持つことに驚きながらも理解した。本当に好きだから、想いを告げるだけではなく、サブリナに受け入れられたことで愛し合ったのだと。
それにしても…。
「馬鹿ね、ノーマン。焦る必要は無かったのに。サビィは当分ファルコールにいるわ。昨日、わたしに今後ここで何をしたいのか話してくれたもの。ねぇ、サビィ、それはあなたもここにいたかったからでしょう?ううん、誰かの傍にいたかったからよね?」
薫の問いに恥ずかしそうにサブリナが頷いた。
「それで、焦ったのは分かったけど、これからは?あなたが言うように、サビィは前リッジウェイ子爵夫妻の大切な娘よ」
ノーマンとサブリナの話を聞く限り、二人は互いの気持ちを確かめ合い、そのことによって今度は確かめた気持ちが昂り愛し合うことに繋がったようだ。きっと愛へ一直線に向かっていたから、互いを取り巻く状況にいちいち立ち止まる暇が無かったのだろう。しかし、シーツにあり得ないことの痕を見てノーマンは現実に戻ってしまったのだ。
「わたしは…」
「ねえ、ノーマン。その状況は人妻だったサビィならば、許されると思ってしたことなの?」
ノーマンの答え如何によって、サブリナは体よりも心を大きく傷付けられることになる。それでも薫はノーマンに問い質さなければならないと思った。
「違います。焦ったんです」
「焦る?」
無かったことにしたいのか、手を付けても許されると思ったのか、どちらの質問にも答えは『はい』か『いいえ』しかないと思っていた薫に返ってきたのは『焦り』。それはどういうことなのか。
「愚かにも、わたしはサブリナ様の前向きな姿勢に恋焦がれてしまいました。特にキッチンで一生懸命新しいことに取り組む姿には、可愛らしくも愛おしいと思うようになったのです」
ノーマンのキャラクターからは考えられない、サブリナへの愛の告白。その対象がノーマンの隣に居る為、どうしてか真っ直ぐな言葉は薫を見ながら綴られてしまうのだが。
「わたしが思うように、他の者も同じ気持ちを持つでしょう。昨日の町では皆がサブリナ様に好意的でしたから。それにケレット辺境伯領へお出かけになっているトビアス様の様にサブリナ様の才能に惹かれる方もいるでしょう。わたしは不安だったのです、トビアス様がサブリナ様にその能力を発揮する為にセーレライド侯爵領へ来てはどうかと伝えるのではないかと。だから焦っていました。サブリナ様を誰にも取られたくないし、どこへも行かせたくないから。その焦りから想いを告げ愛し合ってしまったのです、後先を考えずに。サブリナ様が痛がった時も、わたしが貴族のように優しくなく荒々しいのかと思い反省しつつも、求められたことに喜びを感じ続けてしまいました。そしてシーツを見て驚いたのです」
薫はノーマンがこんな長文を話し、案外熱い想いを持つことに驚きながらも理解した。本当に好きだから、想いを告げるだけではなく、サブリナに受け入れられたことで愛し合ったのだと。
それにしても…。
「馬鹿ね、ノーマン。焦る必要は無かったのに。サビィは当分ファルコールにいるわ。昨日、わたしに今後ここで何をしたいのか話してくれたもの。ねぇ、サビィ、それはあなたもここにいたかったからでしょう?ううん、誰かの傍にいたかったからよね?」
薫の問いに恥ずかしそうにサブリナが頷いた。
「それで、焦ったのは分かったけど、これからは?あなたが言うように、サビィは前リッジウェイ子爵夫妻の大切な娘よ」
ノーマンとサブリナの話を聞く限り、二人は互いの気持ちを確かめ合い、そのことによって今度は確かめた気持ちが昂り愛し合うことに繋がったようだ。きっと愛へ一直線に向かっていたから、互いを取り巻く状況にいちいち立ち止まる暇が無かったのだろう。しかし、シーツにあり得ないことの痕を見てノーマンは現実に戻ってしまったのだ。
「わたしは…」
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