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王都オランデール伯爵家30 セーレライド侯爵とその息子リーサルトの訪問
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隣国からの大切な客人として迎えたセーレライド侯爵とその息子リーサルト。確かに最初は挨拶を交わし、良い雰囲気だったはず。そして両家の共通の話題として、今までの取引について話したところまでは良かった。しかし、その後の自然な流れとしてこれからのことは避けられない。いくらオランデール伯爵が意図的に避けようとしていることを知られないよう流れを逸らそうにも、無理なものは無理だった。
「今後の契約を見直したい」
いつの間にか緊張感が漂う空気の中、セーレライド侯爵はとうとうその一言を放った。しかも侯爵にとって外国語であるこの国の言葉で。それは取引量や契約内容を見直したいと言っているのではない。契約そのもの、即ち契約を白紙に戻したいというセーレライド侯爵の意思表示だった。
外国人だからとオランデール伯爵が正確な意味をセーレライド侯爵に確認することなど、もはや時間稼ぎどころか更に状況を悪くするだけ。それでも今となっては最高の着地点であろう現状維持の七掛け程度にどうにか持ち込みたいとオランデール伯爵は考えた。
「閣下、せめて契約内容の再考だけでも」
「それには前回の手紙に対する考えをお聞かせ願いたいと伝えたばかりだ。あなたのご子息は家族と検討する為に少し時間が欲しいと返事をしてきた。確かに、重要な事柄、考える時間は必要でしょう。ですので、途中経過だけでも知らせて欲しい」
オランデール伯爵はそんな話は一言も聞いていなかった。セーレライド侯爵との取引はジャスティンが己の成果として概要や売り上げを報告してきていたが、細かいことは知らされていなかったのだ。否、言い方を変えるなら聞こえのいい話ばかりでそれ以外は全てサブリナにどうにかさせていたのだろう。
都合が悪いことに侯爵達はこの国の言葉を問題なく話し、理解してしまう。わざわざ雇った通訳など必要ない程に。ここで執事にジャスティンの元へ向かいどういう質問を受けていたか確認するよう言うことは簡単だ。しかし、執事がどういう返事を得てくるか想像出来るが故にオランデール伯爵はそのことを避けたいと思った。侯爵達に全てを聞き取られてしまったら、こちらに契約内容を詳しく知る者、そして隣国の言葉を正しく理解する者がいないことを悟られてしまう。
「伯爵、わたし達はこちらの国へやって来てからご子息が最近体調を崩したと耳にしました。随分お悪いのですか?」
まるでタイミングを見計らっていたような質問をリーサルトがしてきた。同じ後継者として、体調管理は重要なことだと言わんばかりに。領地経営や家の事業を進める上で、その中心となる人物が臥せってばかりでは困るというような口調で。
セーレライド侯爵家のこの二人は事情を知らず、ただジャスティンが体調を崩していると聞いただけ。しかし、この二人とジャスティンが挨拶すら出来なかったと知った国内の貴族は、離縁の影響で起き上がれなくなる程ジャスティンは脆いと噂するかもしれない。
手詰まり感がオランデール伯爵を取り巻いた。次期伯爵のジャスティンも伯爵家の事業も守らなくてはならないというのに、為す術がないとは。
「息子は既に起き上がれるのですが、閣下達に失礼があってはと本日は控えさせた次第です」
「そうでしたか、ではいつものように手紙で構いません。途中経過を簡単で構いませんので知らせていただくようお伝え願いますか。出来ればこの国に滞在中にいただきたく思います」
「…はい」
リーサルトが要求したことの真意は、とても簡単だ。ジャスティンが書く文字、内容を確認したいのだろう。どんなに簡単で良いと言われても、それすらジャスティンが書けるかはまた別の問題だが。そして、最後の一言は内容によってはこの国の他の貴族を取引相手に選ぶと言っていたのだ。
その後伯爵は予定通り、夫人とクリスタルを加えサロンでの茶会をセーレライド侯爵達と行った。勿論、執事に侯爵家との取引がなくなった場合の収益がどうなるのか再計算の指示を与えてから。
「今後の契約を見直したい」
いつの間にか緊張感が漂う空気の中、セーレライド侯爵はとうとうその一言を放った。しかも侯爵にとって外国語であるこの国の言葉で。それは取引量や契約内容を見直したいと言っているのではない。契約そのもの、即ち契約を白紙に戻したいというセーレライド侯爵の意思表示だった。
外国人だからとオランデール伯爵が正確な意味をセーレライド侯爵に確認することなど、もはや時間稼ぎどころか更に状況を悪くするだけ。それでも今となっては最高の着地点であろう現状維持の七掛け程度にどうにか持ち込みたいとオランデール伯爵は考えた。
「閣下、せめて契約内容の再考だけでも」
「それには前回の手紙に対する考えをお聞かせ願いたいと伝えたばかりだ。あなたのご子息は家族と検討する為に少し時間が欲しいと返事をしてきた。確かに、重要な事柄、考える時間は必要でしょう。ですので、途中経過だけでも知らせて欲しい」
オランデール伯爵はそんな話は一言も聞いていなかった。セーレライド侯爵との取引はジャスティンが己の成果として概要や売り上げを報告してきていたが、細かいことは知らされていなかったのだ。否、言い方を変えるなら聞こえのいい話ばかりでそれ以外は全てサブリナにどうにかさせていたのだろう。
都合が悪いことに侯爵達はこの国の言葉を問題なく話し、理解してしまう。わざわざ雇った通訳など必要ない程に。ここで執事にジャスティンの元へ向かいどういう質問を受けていたか確認するよう言うことは簡単だ。しかし、執事がどういう返事を得てくるか想像出来るが故にオランデール伯爵はそのことを避けたいと思った。侯爵達に全てを聞き取られてしまったら、こちらに契約内容を詳しく知る者、そして隣国の言葉を正しく理解する者がいないことを悟られてしまう。
「伯爵、わたし達はこちらの国へやって来てからご子息が最近体調を崩したと耳にしました。随分お悪いのですか?」
まるでタイミングを見計らっていたような質問をリーサルトがしてきた。同じ後継者として、体調管理は重要なことだと言わんばかりに。領地経営や家の事業を進める上で、その中心となる人物が臥せってばかりでは困るというような口調で。
セーレライド侯爵家のこの二人は事情を知らず、ただジャスティンが体調を崩していると聞いただけ。しかし、この二人とジャスティンが挨拶すら出来なかったと知った国内の貴族は、離縁の影響で起き上がれなくなる程ジャスティンは脆いと噂するかもしれない。
手詰まり感がオランデール伯爵を取り巻いた。次期伯爵のジャスティンも伯爵家の事業も守らなくてはならないというのに、為す術がないとは。
「息子は既に起き上がれるのですが、閣下達に失礼があってはと本日は控えさせた次第です」
「そうでしたか、ではいつものように手紙で構いません。途中経過を簡単で構いませんので知らせていただくようお伝え願いますか。出来ればこの国に滞在中にいただきたく思います」
「…はい」
リーサルトが要求したことの真意は、とても簡単だ。ジャスティンが書く文字、内容を確認したいのだろう。どんなに簡単で良いと言われても、それすらジャスティンが書けるかはまた別の問題だが。そして、最後の一言は内容によってはこの国の他の貴族を取引相手に選ぶと言っていたのだ。
その後伯爵は予定通り、夫人とクリスタルを加えサロンでの茶会をセーレライド侯爵達と行った。勿論、執事に侯爵家との取引がなくなった場合の収益がどうなるのか再計算の指示を与えてから。
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