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夕食のテーブルはとても豪華なものとなった。貴族らしくないメニューだけれども、これならばトビアスに歓迎の意が伝わるはずだと薫が満足を感じるほど。
何より焼きたてのピザがいい。チーズが焼ける匂いもさることながら、その見た目が余計な話などせずにとっとと食べろと催促しているようで。だから、トビアスが隣国からやって来た客人とだけ伝え、食事は始まったのだった。
しかしひと段落すると、そうもいかない。会話の時間がやって来たのだった。問題はトビアスをみんなと打ち解けるよう上手く紹介したくても、薫には限られた情報しかないこと。それにファルコールへやって来たばかりのトビアスがどういう人物かも計り知れない。だから薫は先ずは確実な情報から伝えることにしたのだった。
「繰り返すわね、こちらは隣国からいらっしゃったトビアス・セーレライド侯爵ご子息。本人たっての要望で、気軽に接してちょうだい。だからトビーでもトビアスでも呼びやすい方でどうぞ。それでファルコールにやって来た理由は、ここの馬を見る為。それには今後の馬用施設計画をわたしとハーヴァンから聞くことも含まれているわ。トビー、何か補足はある?」
「補足…、かどうかは分かりません。わたしは最初、キャストール侯爵を訪ねました。新たな事業を侯爵と進めたいと思ったからです。その繋がりの為に、キャストール侯爵令嬢との婚姻を打診するつもりでした」
「えっ?」
トビアスの発言に驚いたのは薫だけ。他のみんなはまあそういうことだろうなという表情、もしくは何の反応も示さなかった。
「ですが、打診する前に見事に侯爵に躱されてしまいました。キャロル、お父上は君に政略結婚を望んでいない。ただ、わたしと君が交流することに異議はないようで、こちらに来ることを許可して下さった」
薫にしてみればその『交流』とはどこまでを指すのか確認したいところ。しかし言語の違うトビアスがどこまでを含めて『交流』と言ったのか質問するのは悪手に繋がりかねない。ここはサラっと聞き流し会話を続けるのが最善策に思えた薫は、トビアスの話から大きく逸れることのない質問で切り返した。
「新たな事業内容をわたしが聞いてもいいかしら。それとトビー、みんながあなたに気軽に接する為にも、砕けた話し方でね。ちょっとくらいおかしくても誰も気にしないわ。むしろ、わたし達の言葉を学んでくれてありがとう」
トビアスがどこまでの交流をしようとしているのかは分からない。しかし政略結婚を打診しようとしたことまで話したくらいだ、上辺だけの交流でないのは確かだろう。だから質問に対しても、この場で話せる内容ならば教えてくれるという自信が薫にはあった。仮に話せないのであれば、それすら正直に言ってくれると。
薫がそう思う傍ら、デズモンドは上手いやり方だとトビアスの出方を眺めていた。キャストール侯爵が政略結婚を望んでいないと先に言ったことでキャロルの意識を和らげるとは。それにトビアスは次男。こんなに魅力的なキャロルを知ってしまえば、ファルコールに移り住むことも厭わないだろう。現にハーヴァン、そしてもう少しすると厄介なジョイスまで来てしまうくらいなのだ。
さてどうしたものかと、デズモンドは魅力的な笑みを浮かべながら会話の様子を窺い続けた。
何より焼きたてのピザがいい。チーズが焼ける匂いもさることながら、その見た目が余計な話などせずにとっとと食べろと催促しているようで。だから、トビアスが隣国からやって来た客人とだけ伝え、食事は始まったのだった。
しかしひと段落すると、そうもいかない。会話の時間がやって来たのだった。問題はトビアスをみんなと打ち解けるよう上手く紹介したくても、薫には限られた情報しかないこと。それにファルコールへやって来たばかりのトビアスがどういう人物かも計り知れない。だから薫は先ずは確実な情報から伝えることにしたのだった。
「繰り返すわね、こちらは隣国からいらっしゃったトビアス・セーレライド侯爵ご子息。本人たっての要望で、気軽に接してちょうだい。だからトビーでもトビアスでも呼びやすい方でどうぞ。それでファルコールにやって来た理由は、ここの馬を見る為。それには今後の馬用施設計画をわたしとハーヴァンから聞くことも含まれているわ。トビー、何か補足はある?」
「補足…、かどうかは分かりません。わたしは最初、キャストール侯爵を訪ねました。新たな事業を侯爵と進めたいと思ったからです。その繋がりの為に、キャストール侯爵令嬢との婚姻を打診するつもりでした」
「えっ?」
トビアスの発言に驚いたのは薫だけ。他のみんなはまあそういうことだろうなという表情、もしくは何の反応も示さなかった。
「ですが、打診する前に見事に侯爵に躱されてしまいました。キャロル、お父上は君に政略結婚を望んでいない。ただ、わたしと君が交流することに異議はないようで、こちらに来ることを許可して下さった」
薫にしてみればその『交流』とはどこまでを指すのか確認したいところ。しかし言語の違うトビアスがどこまでを含めて『交流』と言ったのか質問するのは悪手に繋がりかねない。ここはサラっと聞き流し会話を続けるのが最善策に思えた薫は、トビアスの話から大きく逸れることのない質問で切り返した。
「新たな事業内容をわたしが聞いてもいいかしら。それとトビー、みんながあなたに気軽に接する為にも、砕けた話し方でね。ちょっとくらいおかしくても誰も気にしないわ。むしろ、わたし達の言葉を学んでくれてありがとう」
トビアスがどこまでの交流をしようとしているのかは分からない。しかし政略結婚を打診しようとしたことまで話したくらいだ、上辺だけの交流でないのは確かだろう。だから質問に対しても、この場で話せる内容ならば教えてくれるという自信が薫にはあった。仮に話せないのであれば、それすら正直に言ってくれると。
薫がそう思う傍ら、デズモンドは上手いやり方だとトビアスの出方を眺めていた。キャストール侯爵が政略結婚を望んでいないと先に言ったことでキャロルの意識を和らげるとは。それにトビアスは次男。こんなに魅力的なキャロルを知ってしまえば、ファルコールに移り住むことも厭わないだろう。現にハーヴァン、そしてもう少しすると厄介なジョイスまで来てしまうくらいなのだ。
さてどうしたものかと、デズモンドは魅力的な笑みを浮かべながら会話の様子を窺い続けた。
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※1ページの文字数は少な目です。
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2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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