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王都リプセット公爵家別邸3
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「なんだかもどかしいわ。ジェストの妻であるあなたにこう言うのもなんだけど、あの子は見た目だけならわたくしと旦那様の最高傑作なのに…。普通のご令嬢なら、ジョイスに求められれば直ぐに頷くはず。でも、スカーレットではそう簡単な話ではないのよね」
「ジェスト様から伺いましたが、隣国のセーレライド侯爵家のご子息もファルコールへお忍びで向かったとか」
「そうなのよ。キャストール侯爵も何を考えているのかしら。訪問を許可するだなんて」
リプセット公爵家別邸の日当たりの良いテラスでは、この日もエラルリーナとイシュタルが午後のお茶の時間を持っていた。イシュタルの妊娠発覚後は貴族達の新たな情報のアップデートを目的にしたものだったが、この日は違った。話題は全て少し前にファルコールへ向け出発したばかりのジョイスのことだった。
「本当に欲しかったら、見栄も外聞もかなぐり捨てて旦那様に泣きつけば良かったのよ」
義弟のそんな姿は想像出来ないだけに、見てみたかったと思いながらもイシュタルは心の中とは全く違う言葉をエラルリーナに伝えた。お腹の中の子は、こうして貴族としての姿を生まれる前から母親に学ぶのだろうと思いながら。
「本当に欲しいから、ジョイス様はこの方法を選んだのかもしれませんよ。小説の内容にありそうな使用人とその家のご令嬢という関係を。ご令嬢に強く願われない限り、二人は恋に落ちることはできませんもの」
「スカーレットがジョイスを求めない限り未来はないのよ。リスクの高い選択だわ」
「リスクすらご自身に課したのかもしれませんわ」
ジェストと結婚してから知ったエラルリーナの感情を滲ませる物言い。それとは対照的な家族にも感情を露わにしないジョイス。不思議なことに、嫁であるイシュタルから見ると実はこの二人が一番似ているように思える。片や嫁、片や伴侶として、目的は異なれどスカーレットを二人が求めてしまうのはだからだろうか。そして二人のこの欲求を義父であるリプセット公爵が気付いていないということは有り得ない。エラルリーナに限っては公爵と二人の時には口に出しているだろうし。それでもリプセット公爵が静観の姿勢を見せているのは、ジョイスの為なのだろう。自分の手で掴めという。
しかし公爵もまたエラルリーナ同様気になっているに違いない。だから秋にファルコールの館を何とか予約したようにイシュタルには思える。出産さえなければイシュタルも同行し、ファルコールでの義両親とその末息子の様子を少し離れたところからこっそり見てみたかった。まあ、同行してしまった時点でこっそりは無理だったろうが。
「ジェスト様から伺いましたが、隣国のセーレライド侯爵家のご子息もファルコールへお忍びで向かったとか」
「そうなのよ。キャストール侯爵も何を考えているのかしら。訪問を許可するだなんて」
リプセット公爵家別邸の日当たりの良いテラスでは、この日もエラルリーナとイシュタルが午後のお茶の時間を持っていた。イシュタルの妊娠発覚後は貴族達の新たな情報のアップデートを目的にしたものだったが、この日は違った。話題は全て少し前にファルコールへ向け出発したばかりのジョイスのことだった。
「本当に欲しかったら、見栄も外聞もかなぐり捨てて旦那様に泣きつけば良かったのよ」
義弟のそんな姿は想像出来ないだけに、見てみたかったと思いながらもイシュタルは心の中とは全く違う言葉をエラルリーナに伝えた。お腹の中の子は、こうして貴族としての姿を生まれる前から母親に学ぶのだろうと思いながら。
「本当に欲しいから、ジョイス様はこの方法を選んだのかもしれませんよ。小説の内容にありそうな使用人とその家のご令嬢という関係を。ご令嬢に強く願われない限り、二人は恋に落ちることはできませんもの」
「スカーレットがジョイスを求めない限り未来はないのよ。リスクの高い選択だわ」
「リスクすらご自身に課したのかもしれませんわ」
ジェストと結婚してから知ったエラルリーナの感情を滲ませる物言い。それとは対照的な家族にも感情を露わにしないジョイス。不思議なことに、嫁であるイシュタルから見ると実はこの二人が一番似ているように思える。片や嫁、片や伴侶として、目的は異なれどスカーレットを二人が求めてしまうのはだからだろうか。そして二人のこの欲求を義父であるリプセット公爵が気付いていないということは有り得ない。エラルリーナに限っては公爵と二人の時には口に出しているだろうし。それでもリプセット公爵が静観の姿勢を見せているのは、ジョイスの為なのだろう。自分の手で掴めという。
しかし公爵もまたエラルリーナ同様気になっているに違いない。だから秋にファルコールの館を何とか予約したようにイシュタルには思える。出産さえなければイシュタルも同行し、ファルコールでの義両親とその末息子の様子を少し離れたところからこっそり見てみたかった。まあ、同行してしまった時点でこっそりは無理だったろうが。
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